2012年 8月28日
女子の活躍に沸く

ロンドン五輪をめぐる社説
背景に国の強化支援策

ロンドン五輪は12日幕を閉じた。204の国・地域から約1万人の選手が集まり、26競技で熱戦を展開した。日本は13種目で38個(金7、銀14、銅17)のメダルを獲得。金15個という当初の目標には及ばなかったが、総数ではアテネ大会の37個を上回り史上最多だった。60本を超える社・論説が選手の健闘をたたえた。

13競技でメダル38個獲得

《女子の活躍》中日・東京「女子競技の存在感がいっそう増してきたことも、オリンピックの幅を広げた観がある。今回は出場国・地域のすべてから女子選手が参加し、全競技で女子種目が行われた。女性スポーツの発展を加速させた大会とも言えそうだ。その流れは日本代表でも顕著だった。金メダル七個のうち四個までが女子。銀にはとどまったが、サッカーのなでしこジャパンや卓球団体の戦いぶりも鮮烈だった」、琉球「近代五輪116年の歴史で初めて女子を派遣したことのない国・地域がなくなったことも特筆すべきだ。サウジアラビアから女性初参加の柔道選手はイスラム教の慣習に従い、髪を隠すために帽子をかぶって試合に臨んだ。初戦で敗退したが、観客が満場の拍手でたたえた光景は忘れられない」。

《県民の誇り》東奥「女子レスリングで八戸市出身の2人がそろって金メダルを獲得した。63キロ級の伊調馨選手は、日本女子では全競技を通じ初の五輪3連覇。スポーツ史に新たな足跡を刻んだ。48キロ級の小原日登美選手は引退、復帰、階級変更を乗り越え、夢にまで見た『最初で最後の五輪』で栄冠を勝ち取った。(略)苦境にめげず、目標に向かいひたむきに精進した先に喜びがある。そんな努力の大切さも教えてくれた。2人の活躍は県民の誇りだ。心から祝福し、拍手を送ろう」、長崎「体操の男子個人総合決勝で、諫早市出身の内村航平選手(コナミ)が初めての金メダルを獲得した。五輪で県勢が金メダルを獲得したのは全競技を通じ初めて。本県が生んだ世界王者がついに五輪の舞台でも頂点を極めた。その美しい演技と最高の結果に県民は大いにわいた」。

《振興策》毎日「メダルラッシュの背景には国の後押しがある。今年度、文部科学省はナショナル競技力向上プロジェクトに過去最多の32億円をつけた。強化の軸となったのはメダル獲得有望競技を重点支援するマルチサポート事業。今回メダルを獲得した13競技のうち重量挙げとボクシングを除くすべての競技がサポートを受けた」、読売「文部科学省は、女子選手の体調管理やトレーニングを専門的にサポートする女性スタッフの整備を今年度から始めた。各競技の選手層は、世界的にみて、男子より女子の方が薄く、女子の強化がメダル増に結び付きやすいという戦略からだ。選手側の要望を採り入れながら、効果的な支援体制を築き、4年後のリオデジャネイロ五輪では、今回以上の女子選手の活躍につなげてもらいたい」、山梨「最終日、日本のメダル数更新を金で飾った米満選手は、富士吉田市出身。かいじ国体(1986年)の選手強化を機にレスリング強豪校になった韮崎工高で練習に打ち込み、力を付けた。アジア大会金メダルや世界選手権銀メダルを経て、ついに世界の頂点に。国体がまいた種が大輪の花を咲かせた代表例だろう」、日経「五輪で採用された26競技のうち、半数の13競技でメダルをとったことは見逃せない。金メダル争いのためには、いくつかの得意競技に人材や資金を集中的に投入するのが効果的かもしれない。しかし、幅広い競技での選手の活躍は、国威発揚とは距離を置く国の五輪へのかかわり方を示していないだろうか」。

2020年、東京招致へ

《教訓》産経「沢穂希選手の後を継いで主将となった宮間あや選手は言葉と行動で全選手に向き合い、時に感動の涙を流させ、時に笑いでリラックスさせて勝負に集中させた。見事なリーダーシップぶりだった。(略)チームワークこそ、世界に誇ることのできる日本の特長ではないか。そしてそこには必ず、優秀なリーダーの存在がある。この教訓を、スポーツ以外の世界にも広げていきたい」、朝日「五輪公園に今後、学校や駅が造られ、20年をかけて約1万戸の住宅が整備される。祭典で使ったものを次の世代に生かすとりくみが、今後も続く。(略)平和の中でしかまっとうできない五輪は、その時代の精神性を示す。巨費と熱狂だけでない共感をどう形作るか。これからの開催都市の力が試される」、西日本「全体的に見れば国威発揚の影が薄くスポーツを純粋に楽しめたロンドン五輪は、大きな成功を収めたといっていい。成熟した大都市での五輪という点では、2020年夏季五輪を目指す東京にも大いに参考となったはずだ」。(審査室)

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