2012年 12月11日
課題克服の処方箋を

衆院選で問われる諸政策をめぐる社説
痛みの議論から逃げるな

第46回衆院選が4日公示された。歴史的な政権交代で誕生した3年余の民主党政治に対する有権者の審判が下り、どのような政権に日本の将来を託すかの選択が16日に示される。景気、雇用、社会保障、エネルギー、外交・安保と、山積する問題に政権を手にした政党がどう取り組むのか。160本を超す社・論説から政治に問われる政策課題を見た。

原発政策、世界が注目

《原発》毎日「原発・エネルギー政策は電力の安定供給、料金負担、エネルギー安全保障などの問題に直結し、国民に大きな影響を与える。各党が目指すのは低エネルギー社会への転換か、原発事故前への回帰か。各党は国民が自ら選択するための材料として、それぞれが描く未来とそこに至る道筋を具体的に示してもらいたい」、日経「これから原発への依存度は下がるだろうが、それに代わって太陽光などの自然エネルギーは主役になれるのか。天然ガスなど化石燃料の輸入を増やすにしても、どうすれば経済や生活、環境への悪影響を最小限に抑えられるか。各党はこれらをきちんと説明し、現実を見据えたエネルギー政策を競ってほしい」、高知「『脱原発』『脱原発依存』などを提示する一方、そこに至る道筋は、現在の各党の主張からは明確には分からない。仮に、多くの国民が関心があるとの理由で『脱原発』を掲げたとすれば、選択肢の提示にはならない」、中日・東京「各党はそれぞれ原発政策を掲げている。だが、スローガン的な公約が多く、今後の原発政策の進め方について、国民には違いが見えにくいのが実態だ。(略)原発事故後の日本は、一体どんな選択をするのか。どんな未来を築くのか。世界も注視する選挙なのである」。

《経済・財政》京都「選挙後に誕生する新政権には、経済を活性化する成長戦略とともに、歳出削減に耐えられる社会を構築する両にらみの政策が要る。緊縮策一辺倒では経済が疲弊し赤字削減につながらない。成長戦略と歳出削減のバランスをどう取るかは、先進国共通の課題だ」、茨城・日本海など「デフレに陥って十数年になる。物価は安いが企業業績も落ち、給料は下がり、雇用も削らざるを得ない。生活防衛に消費を抑え、商品が売れずに物価がまた下がる。この悪循環を断ち切り、持続可能な景気回復を実現させるのは政治の責任であり、成否は政権の経済政策運営にかかっている」、河北「歴史的円高が常態化し、極度の輸出不振につながっている。一方で若者の雇用が確保されていない現状や、ワーキングプアの問題に、どう対処するか。(略)『デフレを脱却する』とのお題目ではなく、『こうしてデフレを抜け出す』という処方箋が求められている」。

《社会保障》南日本「社会保障費は毎年1兆円ずつ増え続けている。制度を維持するためには、少子高齢化時代を見据えた負担増だけでなく、給付削減という痛みの検討も始めなければならない」、産経「いま問われているのは、急速な高齢化によって膨れあがる年金や医療・介護費用をどのように抑制してゆくかだ。各党は、高齢者を含めたすべての世代に理解を得て、痛みを求めることから逃げてはならない」、神戸「子育て支援や労働環境をもっと改善し、女性が働きやすくすることも欠かせない。高齢者の仲間入りをしても、働く意欲を持つ人はたくさんいる。マンパワーを生かして社会保障制度の支え手を増やせば、社会の活力を高めるはずだ」、北海道「社会保障の財源は、法人税や所得税、相続税も含め税全体の中で見直す必要がある。負担能力のある人が社会を支える所得再分配機能を高めるべきだ」。

憲法改正、安保も争点に

《外交・安保・憲法》読売「自民党が政権公約で、『国防軍』を保持するとした憲法改正を掲げたことが衆院選の争点の一つに浮上してきた。(略)憲法に、自衛のための組織を明確に記すことは当然だ。自衛隊の法的な位置づけを巡る混乱に終止符を打つべきである」、西日本「外交には強さが必要だが、それはしなやかさやしたたかさ、そして思慮深さを兼ね備えた重層的な強さである。単調に『進軍ラッパ』を吹き鳴らすような勇ましさとは全くの別物だ」、朝日「憲法改正や国防軍構想といった威勢のいい安保論が飛び交う。だが、そんな議論の前にやるべきことがある。地域の平和と安定を保つための大きな構想を示し、沖縄の基地問題解決のために米政府と向き合う。それこそ、本来の政治の責務ではないか」、琉球「総じて在沖米軍基地問題は、今選挙の争点としては後景に退いた印象を受ける。首相辞任という国を揺るがす事態にまで発展したにもかかわらず、だ。しかし安全保障が国の専管事項というなら、国政選挙でこそ論争すべきではないか」。(審査室)

ページの先頭へ