2013年 1月1日
"敵失"で消極的選択

衆院選の自民圧勝をめぐる社説
3党協調路線を維持せよ

第46回衆院選は12月16日の投開票で自民党が294議席と過半数を大きく上回る絶対安定多数を獲得して圧勝。公明党も31議席へ大幅に伸ばし、自公で325議席と衆院再可決が可能な定数の3分の2以上を確保した。一方、民主党は57議席と選挙前の4分の1以下に激減して大敗。第三極の日本維新の会は54議席で第3党となった。ただ、投票率は小選挙区で59.32%と戦後最低を記録。26日召集の特別国会で安倍晋三自民党総裁が首相に指名される。約50本の社・論説が選挙結果を分析し、課題を論じた。

有権者は冷めていた

《勝因》静岡「重要政策でことごとく行き詰まった民主党政権の失政に、大同団結に失敗した第三極の混迷が加わって、行き場のなくなった票が政権運営の経験を持つ自民党に集まったのではないか。"敵失"による消極的な選択だといえる。自民党はよく考えてもらいたい」、西日本「自民党の勝因を理路整然と列挙するのは難しい。(略)民主党政権の継続には断固として『ノー』を突きつける一方で、第三極の選択にも逡巡(しゅんじゅん)しながら、熟考の末に自民党へ行き着く―。誤解を恐れずに言えば、そんな有権者の審判が雪崩を打って大勢を決したのではないか」、愛媛「既成政党への不信を背景に生まれた第三極も、結果的に自民党を利した。選挙互助会的な色彩が強く、離合集散によって反既成政党票の一元的受け皿となる結集軸を打ち出せなかった。選択に迷う有権者に結局、昔なじみの党を選ばせたと言えよう」、河北「自民党の勝利はその圧倒的な獲得議席数にもかかわらず、消去法による結果、言い換えるなら相対的なものだ。それが証拠に、投票率は前回を10ポイント程度下回る59%台。戦後最低だった1996年選挙とほぼ並んだ。有権者は冷めていたのだ」。

《争点》産経「注目したいのは、憲法改正草案を既にまとめている自民党に加え、自主憲法制定を掲げた維新、さらに改憲の方向性を示しているみんなの党と、新憲法を志向する勢力が大量の議席を占めたことである。(略)国のありようを根本的に変える憲法をめぐる政界再編の潮流が拡大する可能性を秘めている」、北海道「自民党の『右傾化』は気になる。憲法9条を変えて国防軍を創設するとしたり、集団的自衛権の行使を認めようとする自民党と、現行憲法の柱を守ろうとする公明党の違いは鮮明だ。公明党には自民党の行き過ぎを抑える役割が求められる」、中日・東京「『脱原発』勢力は半数に達しなかったが、自民党も原発稼働継続を堂々と掲げて勝利したわけではない。党内にも原発ゼロを目指すべきだとの意見もある。そもそも、時期はともかく原発稼働ゼロは各種世論調査で常に半数前後を占める『国民の声』だ」、福井「原発の行方も集中立地県として大きな課題だ。事故以来『脱原発』の世論が広がり、衆院選でも自民党を除く各政党が公約に掲げた。(略)各政党はスローガンに終始、自民党は課題先延ばし。確固とした原子力、エネルギー戦略を構築できるか甚だ心もとない」。

選挙制度見直しも課題

《協力》読売「自民党は、公明党と連立政権を組む方針だが、参院では自公両党合わせても過半数に届かない。少なくとも来年夏の参院選までは衆参ねじれ国会が継続する公算が大きい。一体改革を実現した民自公3党の協調路線を維持し、丁寧に合意形成を図ることが不可欠だ」、朝日「まず民自公で合意した一体改革、さらに衆院の選挙制度改革をしっかり実行することだ。民自公3党の間では、赤字国債発行法案を政争の具にしない合意もできた。この流れを逆もどりさせず、政党の枠を超え、協力すべきは協力する。そんな政治文化をつくりたい」、毎日「政策ごとの部分連合を探るべきだ。税と社会保障の一体改革に関する自公民3党合意の堅持は選挙結果からも当然である。税制改革をぶれずに実行し、社会保障制度改革国民会議による議論を深め、年金、医療、低所得者対策などの道筋を描くことが政権党の責任だ」。

《選挙制度》日経「制度上の問題として、わずかの得票差が大きな獲得議席差につながる小選挙区選挙の特徴がある。05年の郵政選挙、09年の政権交代選挙と同じ結果で、選挙制度の見直し論議に火がつくのは必至だ」、岩手日報「それにしても、この選挙制度は振り幅が大きすぎる。ここ3回は、自民、民主両党が交代で300議席前後を獲得したが、決して健全な民主政治の姿とはいえない」、中国「私たちは小選挙区比例代表並立制での衆院選をこれで6回経験し、ともすれば極端な結果に振れがちなことも身にしみて分かった。(略)1票の格差是正も含め、民意をより正確に反映させる選挙制度の抜本的な見直しも課題だろう」。(審査室)

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