2013年 2月19日
全柔連の古い体質露呈

女子柔道暴力問題をめぐる社説
五輪招致にダメージも

ロンドン五輪代表を含む柔道女子選手15人が、園田隆二・全日本女子監督らから暴力を受けたと日本オリンピック委員会(JOC)に告発。1日に園田監督、5日には全日本柔道連盟(全柔連)の吉村和郞・強化担当理事とコーチが相次いで辞任した。日本の「お家芸」で、指導に名を借りた暴力が組織の古い体質を国内外にさらけ出し、2020年の東京五輪招致にも影を落とす異常事態を、40を超す社・論説が取り上げた。

「武道と程遠い無道ぶり」

《告発》河北「たたく、蹴るに加え『死ね』の暴言。柔道女子日本代表の園田隆二監督らが、強化合宿などで選手に暴力を振るっていたことが分かった。(略)武道とは程遠い無道ぶりである」、朝日「日本のお家芸だった柔道は、五輪でつねに金メダルを期待されてきた。監督にかかる期待は大きい。だからといって、熱血指導の名を借りた暴力やパワハラは許されない。この世界の上下関係は、ただでさえ厳しい。五輪での活躍を夢見る選手たちは、代表を選ぶ権限が監督にあるから、嫌な思いをしても、泣き寝入りしがちな弱い立場にある」、茨城・岐阜など「わずかに救われる思いがするのは、女子選手たちが口を閉ざすことなく、立ち上がったことだ。厳しい指導イコール暴力ではないと、彼女たちは声を上げた。(略)日本が五輪とパラリンピックの招致に乗り出して五輪運動への貢献を誓っているさなかに起きたこの問題は、世界に対してとても恥ずかしい」、岩手日報「告発した選手らの覚悟は悲壮だろう。今後の選手強化に重大な影響を与えるのは確実だが、失いつつあるものはメダルどころの騒ぎではない。今、しっかりと改革しなければ、再び日本柔道が世界から尊敬される日は来るまい」。

《隠蔽》産経「全柔連は昨年9月に事態の一部を把握し、11月には園田監督が始末書を提出していた。JOCにも12月には告発文が届いていた。だが、両団体とも、大阪市立桜宮高校の体罰が社会問題化するなか、報道があるまで問題を公表してこなかった。この隠蔽(いんぺい)体質も深く反省すべきだ」、読売「全柔連は当初、園田監督をリオデジャネイロ五輪まで続投させる方針だったが、告発にまで至った選手との間に、信頼関係を築けるはずもなかった。15人の告発まで事態を把握できなかった全柔連の危機管理能力の欠如は深刻だ。15人が全柔連でなくJOCに告発したのは、全柔連への不信感からと言えよう」、西日本「選手らの『必死の訴え』を受けたJOCの動きも鈍かった。事態解明に積極的に取り組んだ形跡はなく、東京五輪招致を控え『とにかく全柔連と問題の火消しに躍起だった』と言うJOC関係者までいる。事実なら本末転倒も甚だしい」。

《五輪》山陽「国際柔道連盟が『そのような行為は断固非難する』と声明を発表するなど、選手への暴力は海外でも関心を呼んでいる。自浄能力が疑われれば、柔道界のみならず日本のスポーツ全体のダメージは必至だ。JOCは主体性を発揮し、古い体質を変える努力をしなければならない」、日経「ことし9月には東京が立候補している2020年夏季五輪の開催地が決まる。お家芸の柔道での不祥事は招致レースにも影響しかねない。その意味でも、誰もが納得できる厳しい対応が必要だ」、毎日「超党派のスポーツ議員連盟は第三者機関の新設を盛り込んだ日本スポーツ振興センター法の改正案をまとめ、今月中の国会提出を目指す方針だ。3月上旬に国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員会が視察に来るため『スピード感をもって取り組みたい』という。(略)『選手第一』の実現のために歓迎すべきことながら、作業を焦るあまり、形を取り繕うだけの組織にしてはならない」。

根絶へ組織改革が不可欠

《改革》佐賀「重要なのは全柔連自体の意識改革である。告発への一連の対応では隠蔽(いんぺい)体質と批判されている。セクハラを防ぐには、女子指導者の登用に積極的に取り組まなければならない」、信毎「監督を続投させようとした背景に暴力を軽く捉えたり容認したりする発想はなかったか、派閥や人脈など連盟内部の事情が優先されなかったか、組織の在り方や体質を問い直すことも欠かせない」、高知「JOCは告発した15人から聞き取り調査をするほか、柔道以外の競技についても暴力行為の有無などを調べる。(略)下村文部科学相の言う通り『日本のスポーツ史上最大の危機』ととらえ、暴力根絶への取り組みを強めたい」、中日・東京「スポーツがかつてなく注目を集め、もてはやされる時代。しかしその裏のゆがみもこうして表に出てきている。五輪代表選手まで巻き込んだ告発問題は、そのことを真摯(しんし)に、かつ根本的に見直す機会としなければならない」。(審査室)

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