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2013年 3月19日
「1票の格差」是正急げ

衆院選違憲判決をめぐる社説
国会の怠慢に強い警告

最高裁が「違憲状態」とした選挙区割りのまま行われた昨年12月の衆院選の「1票の格差」をめぐる訴訟で、東京高裁は6日、「違憲」の判決を言い渡した。選挙無効の請求は退けたものの、国会の怠慢を厳しく指弾した。弁護士グループが全国14の高裁・支部に起こした一連の訴訟の初判決で、7日の札幌高裁判決も「違憲」。今月中に全判決が出そろう。40を超す社・論説から。

迅速審理も司法の意思

《再度警告》読売「『1票の格差』を一向に是正しない国会に対する厳しい司法判断が、再び示された。格差が最大で2.43倍だった昨年12月の衆院選について、東京高裁は、法の下の平等を定めた憲法に違反していたと断じる『違憲判決』を言い渡した。(略)国会は判決を重く受け止め、格差是正を急がねばならない」、北國「現行の衆院選小選挙区の区割りを違憲状態と認めた最高裁大法廷判決は、2011年3月に出された。昨年11月の衆院解散の1年半以上も前のことである。周知期間を含めて、違憲状態を解消した新区割りでの総選挙を行うに十分な期間があり、東京高裁が『合理的期間内に是正されなかった』と批判したのは当然といえる」、神戸「審理の迅速さも目を引く。09年選挙の格差訴訟は各高裁の判決がそろうのに8カ月近くかかった。今回はどの裁判所も、公選法が努力義務とする『100日以内の判決』の規定に沿った早期決着を目指している。ここにも、違憲状態の国会を放置できないという司法の強い意思が見てとれる」。

《事情判決》朝日「衆院の解散直前に格差を縮めるための『0増5減』の法改正が行われた事情などをふまえ、選挙を無効とすることまではしないという、いわゆる事情判決となっている。(略)判決を知って、ほっとした議員もいるだろう。だが、喜んではいられない。衆院にいるのは、『違憲の選挙』で選ばれた『違憲の議員』ということになる」、中日・東京「『違憲』はサッカーならレッドカードだ。退場、すなわち『選挙無効』―。(略)だが、無効となった場合、どうするかという方策が何も決まっていない。国会の怠慢と、司法の消極姿勢が、レッドカードを受けた選手たちを芝生の上で走り回らせる―、そんな滑稽な光景を招いているのではないか」、日経「東京高裁は『判決確定から一定期間が経過した後に議員を失職させる判決も検討の対象になる』などと言及している。無効判決の出し方をわざわざ説明したかたちだ。司法からの強い警告ととらえるべきである」。

《正当性》沖縄「国権の最高機関である衆議院は、司法によって『違憲衆議院』の烙印(らくいん)を押されてしまった。国会で選出された安倍晋三首相の正当性さえ疑われかねない事態である。ましてや『違憲衆議院』で憲法改正を進めるなどというのは、とんでもない話だ」、北海道「憲法の裏付けが不十分なまま政治が行われている異常さを、国会議員は忘れてはならない。与野党は衆院選直前に小選挙区を『0増5減』して1票の格差を2倍以内に収めることで合意し、選挙区画定審議会が区割り作業に入っている。新たな区割りが決まり次第、早期に選挙を行うのが筋だ」、信毎「一連の訴訟では、裁判所が選挙無効の判決を下すかどうかが注目されている。政治が後ろ向きの姿勢をとり続ける場合には、最高裁から選挙やり直しを命じられる可能性が高まると覚悟すべきだ」。

「0増5減は弥縫策」

《改革急げ》静岡「『0増5減』は最高裁判決が廃止を求めた『1人別枠方式』を事実上、温存したままの弥縫(びほう)策にすぎない。(略)国会では選挙制度の『抜本改革』として、定数削減の議論が進む。解散に当たっての自民、公明、民主3党の約束で、実現を急ぐべき課題だが、1人別枠の実質的な廃止こそ、より急がれる抜本改革のはずだ」、毎日「『0増5減』は、都道府県の人口比を考慮しておらず、つじつま合わせとの批判はもっともだ。だが、『0増5減』を前提に第三者機関の審議会が区割り作業中だ。ならばその区割りに基づく法改正を今国会に間に合わせるのが最低限の国会の責任だ」、佐賀「有権者数が少ない地方では、定数削減によって発言力が弱まることの不安が大きい。佐賀県も0増5減によって定数が削減される。地方の声を国政にどう反映させるのか。人口指標を基本にしながらも地方には配慮が必要だ」、産経「一票の格差が最大で5倍だった(平成)22年の参院選も、最高裁から違憲状態と判断された。衆参両院とも抜本的な改革を迫られているのに、いずれも具体的な議論は進んでいない。政治家が決断できないのであれば、休眠中の政府の選挙制度審議会を開き、抜本改革を諮問することが必要である」。(審査室)

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