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紙面展望(2002年)

6月4日付 日中韓の対応を評価
中国・瀋陽の亡命者連行事件をめぐる社説
日本総領事館には批判


 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の五人が、亡命を求め中国・瀋陽の日本総領事館に駆け込みを図り、中国の武装警察官に拘束されるという事件は、五月二十三日、五人がマニラ経由で韓国に入り、ひとまず解決した。日本政府は、在外公館への警官の無断立ち入りはウィーン条約に違反するとして抗議、陳謝と五人の身柄引き渡しを求めたが、中国側はこれを拒否、交渉は平行線をたどった。百三十本の論・社説がこの問題を扱い、五人の出国を受けて論じた五十一本が人道的な扱いを優先した日・中・韓の対応を評価する一方で、総領事館員の対応を批判、難民問題など、今後の外交のありかたを論じた。

日中双方に反省も求める

 《五人の出国》中国「国際社会の批判の高まりを前に、中国政府が人道を優先した選択をしたことを喜びたい」、西日本「小泉純一郎首相は二十一日、日中友好を損なわない大局的見地からの早期決着の考えを打ち出した。中国側が住民の出国に踏みきったのはこの後である。(略)首相発言を譲歩と判断した中国側の柔軟姿勢が読み取れる」、高知「しかし、両国は人権問題の処理にこれほど時間がかかったことを重く受け止めないといけない。一家は発生から二週間を、拘束された不安の中で過ごしたに違いない。日中双方に反省を求める」、下野・北日本・大分など「もし五人の意に反して本国に送還した場合、北朝鮮当局による厳しい弾圧は必至と見られていた。そうした最悪事態を回避できる運びとなったことは、人道的な立場を重視した解決策として評価したい」、南日本「韓国が硬直しきった日中交渉を見かねて、五人を受け入れる意向を示してくれていたことが事態収拾を招いた。自国の国民感情を配慮した政治判断でもあるが感謝しなければならない」。
 《主権侵害》産経「武装警察の総領事館立ち入りという日本の主権が侵害された事実は残されている」、中日・東京・北陸中日「両国の議論の焦点は今後、外交特権侵害問題に絞られる。連行時に日本側が同意していたのかどうか。安全のためならば、警官が公館内に立ち入ることが可能なのかどうか。両国関係をできるだけ傷つけないよう冷静に詰めねばならない」。日経「中国に対する政府開発援助(ODA)に日本の納税者の理解を得るのが難しくなるとの心配が政府部内にはある。小泉純一郎首相は、江沢民国家主席に電話し、日本の空気を伝え、条約違反問題で誠意ある対応を求める必要がある」。
 《不適切な対応》北海道「一連の経過を通じて明ら かになったのは日本外務省の初動対応のまずさであり、 人道意識の希薄さだ」、信毎「亡命希望の旨を書いた英文の文書を渡されながらそのまま返したり、副領事が警官と握手していた事実も明らかにされている。そうした不適切な対応の積み上げの末に、日本側が十分関与できないまま五人が出国する結果を迎えてしまった」、福島民友「衝撃的だったのは、事態をながめているだけの総領事館員の態度であり、それが映し出したのは、危機意識や人権意識の希薄さだった」、河北「領事館員の対応の背景には、阿南惟茂・駐中国大使の見解に代表される外交姿勢があった。阿南大使は事件の日、北朝鮮から脱出した住民が日本大使館に入ってきた場合は、『不審者とみなして追い出せ』と指示していた。瀋陽事件で、亡命問題についての極めて消極的な日本の姿勢を国内外に印象づけたのは残念だ」、琉球「しかし、これは阿南大使の個人的な意見というより、亡命者を受け入れないとの日本政府の原則を反映していると見るべきだ。人権を守れる国か、どうかは国家主権と同じように国際社会の中で重要である」、新潟「証拠映像があるのに中国の交渉術にはまり、無原則な譲歩を重ねた外務省への国民の怒りと不信感は強い」。

難民救済のルール整備を

 《課題》朝日「『北朝鮮難民』は、中国、韓国、日本、それに国連も含めて協議すべき課題である。そうした人々を『難民』と認定していない中国も、その処遇に頭を痛めている。日中とも、対立したり、敵対したりするような事柄ではあるまい」、毎日「中国は『難民はいない』という建前を変え、日中韓がこの地域の安全保障の立場で、対応できるルールを協議すべきではないか。それは、傷ついた日中関係修復にも資する」、徳島「亡命者、難民の多数受け入れに反対する意見も根強く、まだ国民的合意には至っていない。しかし、国際社会の常識からはずれ、評価が低い日本の制度の検討を始めても早くはない」、読売「難民認定法により、国内での対応はできるが、在外公館については法的規定はもちろん、対処方針すらない。政府・与党内には、整備を求める声がある。本格的な検討に着手する時である」。(審査室)

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