各社の紙面

紙面展望(2007年)

1月16日付 「日本の針路」を提言
在京6紙の新年号紙面
社会のありよう探る連載


 イノシシ年がやって来た。安倍晋三首相は年頭の記者会見で「『美しい国』に向かってたじろがず一直線に進む覚悟だ」と決意を述べたが、景気回復に実感はなく、格差は拡大し、子どもたちがいじめなどで苦しみ続けるなど、厳しい現実が日本社会を覆っている。元日の在京各紙は、いずれも社説で「日本の歩むべき道」を説き、連載でも「日本のありよう」を探し求める企画が目立った。

独自ダネ4紙、連載2紙

 【1面トップ】朝日、読売、産経、東京が独自ダネを据え、毎日、日経は連載企画をスタートさせた。

 朝日 「松岡農水相秘書が照会 NPO審査『よろしく』内閣府に記録」。出資法違反容疑で福岡県警の家宅捜索を受けた会社の関連団体「WBEF」のNPO法人申請をめぐり、松岡利勝農林水産相の秘書から審査状況の照会を受けたとする内部文書を、内閣府が作成していたことがわかった。WBEFからパーティー券代百万円を受け取っていた問題が発覚した昨年九月、松岡農水相は自らも事務所もWBEFとは一切関係がないとの見解を示していた。(五日の会見で事務所側からの照会を認めた)。

 読売 「露の原発建設参入へ 東芝・石播」。ロシアが設立を目指している国営の原子力独占企業体「アトムプロム」側が、東芝と石川島播磨重工業(IHI)に提携を打診してきたことが明らかになった。東芝とIHIも提携交渉に応じる考えで、原発の基幹部分となる蒸気タービンや、発電機の製造、供給など、原発建設への協力が柱になるとみられる。アトムプロムへの出資や関連技術の供与に協議が広がる可能性もあるという。

 産経 「定年70歳時代へ 厚労省 促進策に奨励金も」。団塊の世代の定年退職が始まるのを受け、厚生労働省は平成十九年度から、企業に定年を七十歳まで引き上げるよう促す施策に着手する。企業向けに支援アドバイザーを育成するほか、引き上げを実施する中小企業には奨励金を創設するなど、本格的な人口減少社会に入る中、労働力人口を確保するため、意欲と能力のある高齢者が七十歳まで働ける環境づくりを目指す。

 東京 「林野庁OBら288人 談合疑惑法人に天下り」。独立行政法人「緑資源機構」発注の林道整備調査をめぐり、談合を繰り返した疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けるなどした林野庁所管の六つの公益法人に、三百人近い国家公務員OBが天下っていることが明らかになった。大部分が林野庁OBだという。六法人の調査業務の合計受注額は全体のほぼ半分を占めており、調査業務が林野庁OBの権益となっている実態が浮かんだ。

 毎日 連載「ネット君臨」。難病を患う東京・三鷹市の四歳女児を救おうと、募金活動の記事が新聞各紙に掲載された昨年九月、「2ちゃんねる」に家族を中傷する匿名の書き込みが現れた。「また死ぬ死ぬ詐欺ですか」。インターネットの利用者は国内で八千万人を超える。「便利さや効率をもたらす一方、私たちはネットに依存するあまり、いつの間にか支配され、何かをなくしてはいないだろうか」。ネット社会をどう築けばいいのか、身近な現場からの報告で第1部「失われていくもの」が始まった。

 日経 連載「イエコノミー ニッポンの家計」。エコノミーの語源は古代ギリシャ語のオイコノミコス。その元のオイコスは「家計」という意味だった。現金、預貯金、住宅、土地。富の総額二千兆円。家計は日本の国富の八割を握る。「家計のお金が市場に向かい、企業を変え、国を動かす『(家)イエコノミー』。日本経済に新たな好循環を生み出すカギも握っている」。侮れない家計の力を追う。

日本が誇れる価値とは

 【社説】各紙がそれぞれに、日本のとるべき針路を提言した。

 朝日 「戦後ニッポンを侮るな(憲法60年の年明けに)」。「軍事に極めて抑制的なことを『普通でない』と嘆いたり、恥ずかしいと思ったりする必要はない」と説き、省エネや環境対策といった戦後日本の得意技を生かして、「『地球貢献国家』とでも宣言してはどうか」と提言する。「いま『やっぱり日本も軍事だ』となれば、世界にその風潮を助長してしまうだけだ。北朝鮮のような国に対して『日本を見ろ』と言えることこそ、いま一番大事なことである」。

 毎日 「『世界一』を増やそう(07年もっと前へ)」。失われた15年、その「遅れを取り戻すためには、目標と志を高く掲げる必要がある」と訴える。世界に胸をはって誇れるような『日本発の価値』を増やそうという呼びかけだ。そして、なかでも必要なのは「世界一国民を大事にする政府」であり、そうした政府を求めるなら「私たち自身が世界一啓発された有権者でなくてはならない」と説く。「国民のための政治を実現するには、まず私たちが腰をあげる必要がある。それを世界一づくりの第一歩としよう」。

 読売 「タブーなき安全保障論議を 集団的自衛権『行使』を決断せよ」。北朝鮮の核保有が既成事実化する恐れもある中で、日本はどうすべきなのか。「核保有が現実的でないとしても、核論議そのものまで封印してはならない」と訴える。そして、米国の核の傘に依存するしかない現実の下では、日米同盟の実効性、危機対応能力を強化するため、「日本も十分な責任を果たせるよう、集団的自衛権を『行使』できるようにすることが肝要だ」と主張する。

 日経 「開放なくして成長なし」の第一回「懐深く志高いグローバル国家に」。復活した日本経済が力強さに欠けるのは、グローバル経済の息吹を十分に取り込んでいないからだろう。冷戦後のグローバル経済は直接投資の誘致競争の時代。直接投資は成長の切り札であり、資本だけでなく新しい製品、サービスや技術、経営ノウハウをもたらし、雇用機会を創出する。こう指摘し、「直接投資を受け入れる『国際心』が成長持続を確かにし、ひいては安全保障の礎になる」と説く。

 産経 「凜とした日本人忘れまい 家族の絆の大切さ再認識を」。相次ぐいじめ自殺、後を絶たない飲酒運転、さらには親子間殺人と、「日本人と日本の社会を支えてきた倫理や道徳、伝統、克己心といったものは、どうなってしまったのだろう」と嘆く。そして、「隣人を思いやり、苦悩を分かち合う共同体意識の再生も、いまほど求められている時代はない。家族は社会や国づくりの一番の基礎にある。家庭と共同体の再生こそ日本再生へのカギではないか」と説く。

 東京 「新しい人間中心主義」。「若い世代が希望をもてない国に未来があるとは思えません」と訴える。若者をめぐる境遇は一変した。パートやアルバイト、派遣労働などの非正規雇用が広がり、小泉前政権で加速された市場原理主義と新自由主義による構造改革で貧富と格差は拡大した。こう指摘し、「行き過ぎの市場原理主義に否定されてしまった人間性が復活し、資本やカネでなく新しいヒューマニズムが息づく社会―そんな選択であるべきです」と主張する。

団塊、若者…世代を描く

 【連載・企画】朝日一面「ロストジェネレーションー25〜35歳」、社会面「先生に夢を」▽毎日一〜三面「ネット君臨 第1部『失われていくもの』」、社会面「子どもの空間」▽読売一面「日本 第1部『再生への道』」、社会面「ときめいてますか?」(いずれも三日から)▽日経一面「イエコノミー ニッポンの家計」、社会面「サラリーマン2007 団塊の軌跡」▽産経社会面「美しい国」▽東京一面「資源有事」、社会面「いじめと生きる 第1部『ドラえもんのいない世界で』」。

 【ページ数】かっこ内の数字は二〇〇六、〇五年の順。  朝日100(100、96)▽毎日88(88、88)▽読売108(108、104)▽日経116(116、116)広告特集24含む▽産経100(92、92)タブロイド判第4分冊(早稲田大学特集)20を含む▽東京72(72、72)  (審査室)


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