各社の紙面

紙面展望(2007年)

4月3日付 悪質さを一斉に非難
原発臨界事故隠しをめぐる社説
情報公開で不信一掃を


 原発をめぐるトラブルが次々に発覚する中で、石川県志賀町の北陸電力志賀原発1号機で八年前、定期検査中に原子炉の制御棒三本が抜け落ち、臨界状態になったことが分かった。同社は記録を残さず、国に報告もしていなかった。さらに他の原発でも制御棒の脱落があり、東京電力の福島第一原発3号機では臨界事故が起きていたことが判明した。志賀原発の事故を中心に四十本を超す社・論説が取り上げた。

すべてのウミ出し尽くせ

 〈悪質な隠蔽だ〉朝日「今回の(臨界)事故は、測定器の値が『基準値をちょっと超えた』というようなものとは全く性格が違う。一連の問題のなかでは、群を抜いて悪質な隠蔽(いんぺい)である。深刻な事故を隠したことで、その情報が生かされず、新たな事故防止の教訓にならなかったからだ」、読売「原子力の技術者として、きちんと対処すべきトラブルと考えなかったのだろうか。その自覚も責任感も、なさ過ぎる。(略)専門家が想定したこともないトラブルという。そうであるなら、原因を徹底的に調べて、再発を防ぐことがまず大切なはずだ。ところが、発電所の幹部たちは事故を完全に隠蔽(いんぺい)した」、京都「これほど悪質な例は、ほかにないのではないか。(略)真相が判明したのは、一連のデータ改ざん問題を契機に原子力安全・保安院から指示を受け、社内調査を進めるうち内部申告があったからだ。申告がなければ事故は闇の中だったかもしれない」、北國「(内部申告での判明は)北電にとって、一つの救いだったとも言える。国からの指示の有無にかかわらず、特に原発の安全にかかわる事柄について、『隠し事をしない』体質と、『隠し事ができない』体制を自発的に作り上げる契機になるという意味からである」。

 〈これきりか〉新潟「それにしても、こうも次々と不正が出てくるのにはあきれ返る。電力会社の『駆け込み報告』の背景には、各社が三月末までに不正報告を義務付けられていることがある。もうこれ以上隠している大事故はないのか。(略)東電に再度問う。本当にこれきりなのか」、神戸「データの改ざんや隠ぺい、今度のように深刻な事故まで、なかったように装う体質。法令順守(コンプライアンス)意識があまりにも欠けている。原発は、取り扱いを間違うと大惨事になる。その原発よりさらに怖いのは、それを扱う各社のモラル欠如だ」、産経「この機会にすべてのウミを出しつくし、不正の底なし沼を浄化することが必要だ。エネルギーや環境問題への関心や必要性を背景に原子力発電を再評価する機運が高まっている。日本の原子力発電にとっての正念場だ。正直な報告を望みたい」。

 〈業界の体質〉熊本「度重なる不祥事の背景に、批判を恐れて情報を出し渋る電力各社や各原発の姿勢があることは明白だ。リスクに関する情報や対策も共有されないために、各施設で同様のトラブルを生み出す悪循環に陥っていることをうかがわせる」、日経「(北陸電力は)事故隠ぺいの経緯も明らかにしなければ国民の納得は得られず、不都合な事故、トラブルを隠すという体質も一掃されない。(略)不利な情報も隠さず、安全確保と法令順守を徹底してこそ国民の信頼が得られる」、中日・東京「原子力に対する不信は、事故やトラブル自体よりも、その情報を隠蔽したことによって拡大するといってもいい。電力会社は、不都合な事実でも正確に公表することが、結果的には受ける傷が浅く済み、信用につながることを知るべきだ」。

行政側責任棚上げも批判

 〈国の姿勢〉西日本「原子炉等規制法が改正され、内部告発した者が解雇など不利益を被らないようになっている。そうした法改正を受けても、原発での不正を告発するケースはまだまだ少ない。不正を隠したがる電力業界の企業風土を変えていくには、個々の企業内部の意識改革と併せて、行政側のチェック強化も必要だ」、福島民友「国は電力各社に過去にさかのぼって不正一掃を迫っているが、原子力推進は国策のはず。これまで不正を見逃してきた責任を棚上げにし、事ここに至って、国は電力各社を非難する。これでは原発への不信感をさらに深めるだけではないのか」、北海道「政府の原子力委員会は、このほど発表した原子力白書で、地球温暖化防止の観点から『世界は原子力新時代を迎えている』と力説した。しかし、事故隠しが相次ぐ現状では、そんな美辞麗句は空々しく響く」、毎日「白書がいう『確証された経済性、安全性、安定性』にも疑問がわく。(略)隠された原発事故やトラブルが、まだまだあるのではないかと市民は疑っている。情報隠しが一掃され、原発の信頼性や安全性が実感できるようにならない限り、『原子力新時代』に賛同することは難しい」。  (審査室)


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