各社の紙面

紙面展望(2007年)

6月26日付 「介護を食い物」批判
コムスン不正をめぐる社説
利用者本位の対策急げ


 訪問介護最大手のコムスンが介護事業所指定を不正取得していた問題で、厚生労働省は同社に対し新規指定や更新を認めないよう都道府県に通知した。指定打ち切りは同社が全国に展開する事業所の八割、約千六百か所に上る。親会社のグッドウィル・グループは同社を含め関連子会社六社を外部に譲渡し、介護サービス事業から全面撤退する方針を示した。五十本の社・論説が取り上げた。

福祉事業者の資格なし

 〈退場は当然〉朝日「介護保険は40歳以上の人が払う保険料と、税金で運営されている。サービスを受ければ自己負担もある。その制度を食い物にする事業者は、トップ企業でも退場してもらわなければならない」、徳島「虚偽の申請や介護報酬の水増し請求などを東京都や青森県、岡山県、香川県などで繰り返した。しかも、各都県が問題事業所の指定を取り消そうとすると廃業届を提出し、処分逃れを図った。社会的責任の自覚を欠いた悪質な行為だ」、河北「コムスンが介護事業から退場を余儀なくされるのは至極当然だろう。(略)法令順守は、企業としての最低限のモラルで、まして介護といったお年寄りの心や体にじかに触れる分野では、それを超えた優しさや人間性が求められる。法さえ守れないのでは、福祉事業者としての資格はない」。

 〈量から質へ〉読売「介護保険は、サービスの担い手を確保するため、営利目的の事業者の参入も認める形でスタートした。行政は事業者の質より量を優先し、甘い指導を続けてきた。その結果、介護保険の総費用は7兆4000億円まで膨らみ、なお肥大化しつつある。悪質事業者につけ込まれぬためには、厳格な処分とともに、制度全体の不断の点検も必要だろう」、福島民報「(厚労省が)予防重視の政策に転換、介護費用抑制に乗り出したこともあって、市場は曲がり角を迎えた状況にある。事業者は客の掘り起こしに躍起になり、経営努力よりも、結果的に質を下げてでも利益率を上げようとしている現実も垣間見える。今回の問題はそのツケが回ってきた表れとも取れ、同省の取り組みが問われていると言えそうだ」、高知「介護報酬を不正請求する事業者は後を絶たない。不正請求などで指定取り消しとなった事業所は昨年末までで四百三十四カ所に上る。全体からみれば一部とはいえ、量の確保が生んだマイナス面だろう。(略)介護保険はまだ『発展途上』の制度だ。介護業界の体制整備などを進め、質量ともにさらに充実させていかなければならない」、中日・東京「介護ビジネスに参入する事業者の数も増え、指定申請を受ける都道府県のチェックが追い付かないことが今回の不正の背景にあるだろう。この際、チェック体制をもっと厳しくする必要がある。現在は書類が整っているか、施設基準を満たしているかどうかで判断しているが、甘すぎる」。

 〈利用者本位に〉毎日「肝心なのは、コムスンのサービスを利用している高齢者への対応だ。不安を与えることがあってはならない。(略)要介護者は、気心の知れたこれまでのヘルパーに続けてもらいたいとの希望も強い。官と民が協力し、お年寄りが困ることのないよう万全の態勢で臨む必要がある」、北海道「コムスンは、深夜の巡回をはじめ、二十四時間の訪問介護サービスを売りものにしてきた。この面がどうなるのか、利用者は心配している。(略)政府と都道府県は市町村や関係団体と協力し、地域の実情に即応した利用者本位の対策を急がなくてはならない」、新潟「二万人以上いるヘルパーらの雇用維持も大切だ。従業員の中には、介護保険制度発足で猛勉強して資格を取得した主婦や、地域貢献に誇りを持ちながら深夜の激務に耐えている人も多いことだろう。介護現場の貴重な人材を流出させてはならない」。

ビジネスと倫理矛盾せず

 〈民間活用〉信毎「四人に一人が六十五歳以上の『超高齢社会』に近づいている日本にとって、民間の介護事業はますます重要な位置を占める。民間の事業に不信感が広がるようでは、介護の将来は危うい」、産経「今回の不正行為事件を機に介護事業の民間委託についても見直し論が出ている。しかし、民間事業者が競い合うことが利用者に対するサービスの質向上につながるという本来の狙い自体に間違いがあったとはいえまい」、日経「待遇改善の進まない介護人材は離職率が高く、景気回復による他の業界への流出も相まって、年に二―三割が辞める事業所はざらだ。ただ、能力や貢献度に応じた人事制度で良質な人材確保を目指す事業者もある。ビジネスと高い倫理観は決して矛盾しない。企業による介護市場への参入を疑問視する政治家も出始めたが、見当違いだろう」。  (審査室)


<< back