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新聞協会編集委が司法制度改革推進本部に提出した「『裁判員制度の取材・報道指針』について」

平成15年9月10日

 日本新聞協会は、司法制度改革推進本部が制度設計を進めている「裁判員制度」が導入された場合を想定して、加盟各社の取材・報道の際のガイドラインとなる「裁判員制度の取材・報道指針」の制定に向けて協議している。

 裁判員制度が社会に定着するためには国民に、制度が公正・透明なルールの下に運営されていると理解されることが不可欠である。それには「報道の自由」「国民の知る権利」が守られなければならず、あらゆる権力から独立したメディアが存在して初めて、それが保障される。従って、「公正な裁判」を担保するうえでも重要な報道のあり方は、メディア側の自主的な取り組みによって追求していくべきだと考えている。「表現の自由」「報道の自由」は、「国民の知る権利」に応える民主主義社会の根幹でもあるからだ。

 この自主的な取り組みの一つが、裁判員制度の取材・報道に関する指針の制定であり、裁判員制度の骨格がまとまった時点でさらに検討し、最終的には、各社の取材・報道のガイドラインとなる指針を決定する。

 今後、日本民間放送連盟や日本雑誌協会とも連携して、公正な裁判を実現し国民の知る権利にも応えられる環境整備を図るとともに、法曹3者や裁判員経験者との協議の場の設定に努めていく。相互の立場の理解を深めることは、裁判員制度と報道の関係を成熟させていく最善の方策だと考えるからだ。

 また、新聞協会は、推進本部が示した裁判員制度の原案(たたき台)中の「偏見報道の禁止」規定については全面削除を求めていく。この規定は、たとえ訓示規定であっても実質的に事件・裁判に関する報道を規制するものになりかねないうえ、何をもって「偏見」とするのかも明確でない。恣(し)意的な運用を導く恐れの強い規定であり、表現の自由や適正手続きを定めた憲法の精神に触れる疑いがある。

 新聞協会はこれまで、新聞倫理綱領を改定し、集団的過熱取材の見解を公表して人権・プライバシーに配慮してきた。加盟各社も、それぞれ人権に配慮した取材・報道を行ってきた。外部識者らをメンバーとする報道検証機関を設けた社も多い。今後も、加盟各社は、こうした取材・報道姿勢が国民の理解を得られるよう、一層の努力を重ねていくだろう。

 裁判員制度の取材・報道においても、裁判の公正さを尊重し、報道倫理を守っていくことはいうまでもない。

 これまでの協議では、「評議中の裁判員への接触取材や裁判員の特定につながる個人情報の報道などは原則自粛する」方向でまとまっている。裁判員制度の取材・報道指針をめぐる、現時点での協議状況をまとめた。

協議状況

1.裁判員、補充裁判員の個人情報の保護について

  • 裁判員、補充裁判員の氏名、住所など、その人物を特定できる個人情報は、原則として裁判終了までは報道を控える。
  • 裁判終了後に、元裁判員らの氏名や住所を報じるか否かについては、本人の意向を尊重する。
  • 裁判員候補者については、選定手続きが終わるまで氏名、住所など本人を特定する情報は報道しない。裁判員、補充裁判員に選ばれなかった人の個人情報については、本人の意向を尊重する。

2.裁判員等への接触禁止について

  • 裁判の公正を守るために、裁判員が選任されてから一審判決が言い渡されるまで、原則として裁判員等への直接取材や取材の働きかけは行わない。

3.協議機関について

  • 裁判員制度をめぐる取材・報道の問題については、原則として当該社と地裁の対応である。問題が全報道機関に及ぶ場合、協議機関は当該記者クラブとする。

 なお、新聞協会は、裁判員制度の是非については論議しておらず、協議状況のまとめも、あくまで裁判員制度が導入された場合を想定したものであることを付記する。

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