新聞広告賞2022新聞社企画・マーケティング部門
新聞広告賞(第42回)

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風化させてはいけない震災がある【あの日のテレビ欄+47体の身元不明遺体】

盛岡商工会議所、三陸鉄道など205社

2022/3/11別刷り 2022/3/11本紙 本紙 本紙
<広告の狙い・内容>
東日本大震災から11年。多くのメディアは10年目の報道で一定の区切りを付けたように見えてしまいますが、被災者の気持ちに区切りはありません。地域に寄り添う使命を持つ地方紙として、メディアが離れていく今こそ岩手県の風化を食い止め、被災者の役に立つことをする必要があると考えています。2022年3月11日は2011年3月11日と同じ金曜日であり、効果的に伝えることができると考えました。
〔あの日のテレビ欄〕
震災11年の別刷り特集の最終面に、震災当日11年3月11日朝刊のテレビ面を掲載。あの日の朝刊テレビ面は、日付は3月11日ですが普通の朝刊。つまり、人は今日何が起こるか知ることができないことの証明となり、あの日の朝を思い出してもらうトリガーにもなると考えました。それにより、それぞれがあの日を思い出してもらうことで、震災を改めて自分事として捉えてほしいといった狙いで掲載しました。
また、震災発生時刻の14時46分には青いラインを引くと共に、あの日の天気予報も掲載しました。また、2011と2022のノンブルをリンクさせ 、2011年のテレビ面をひと回り小さく配置することで過去の記憶を呼び覚まし、今とつながるような構図にしました。企画が掲載された別刷り特集は県外号外として東京などで街頭配布され、県内読者以外にも届けました。
〔47体の身元不明遺体〕
岩手県には震災津波による行方不明者が千人以上おり、その中で遺体が見つかっていながら家族の元に帰ることができていない身元不明の遺骨が47柱あります。県警は身元不明遺体の似顔絵や遺品などを公開していますが、知らない県民も多く、情報提供者も年々減っています。この事実を題材とし、新聞広告を通じて情報提供者を探そうと「47体の身元不明遺体」を企画しました。加えて県警との連携といった広告領域にとどまらない施策として取り組みました。ページ冒頭では読者の興味喚起を図るため、身元不明者の似顔絵とキャッチコピーを掲載。余白を生かしながら象徴的にレイアウトしました。中面は厳しい現実の訴求と共に被災者感情を考慮しながら残酷になりすぎないように構成。鎮魂の光や空と海を表す青を使って未来につながる読後感にしました。三陸の砂浜に身元不明遺体の数と同じ47の火をたいて象徴的に使ったほか、QRコードも大きく配置し、読者の行動を促しました。
岩手日報が2018年3月11日からスタートした「3月11日を『大切な人を想う日』に」の活動を機に2万3千人を超える署名が集まり、21年に県条例「東日本大震災津波を語り継ぐ日」が制定されました。条例の趣旨の一つ「犠牲者を悼み、大切な人を想い、そして悲しみと教訓を語り継いでいこう」を呼びかけるため、紙面のほかにウェブ動画やテレビCMも連動させました。警察官へのインタビューを映像に盛り込みながら県警サイトに誘導する仕掛けとしました。
終面には行方不明者の遺品を紹介しました。6年連続で詩「最後だとわかっていたなら」も掲載し、「3月11日は明日が来ることは当たり前ではないと知った日。どうか今日、大切な人と話してください」と呼びかけました。


<反響・効果>
掲載後、岩手県警の行方不明者相談会への問い合わせが増加し、県警ホームベージのアクセス数は前月比で約10倍に増えました。県警からは「3月ということを差し引いても今までになく、企画の絶大な効果と分析している」と感謝の言葉があり、「その上で我々警察の使命は、このような協力を無駄にせず最後のお一人までお返しできるように日々がんばること」との決意も頂戴しました。
新聞広告を見た人からのSNS投稿も多くありました。「あの日のテレビ欄」には、「岩手日報が大切なことを伝えている」「何気ないものが、歴史の記録になる。岩手日報のいい仕事を見て」「11年前の今日も同じ金曜日でした。今朝の岩手日報。11年前のテレビ欄が掲載されています。あの日あの時、あなたは何をしていましたか」などのコメントが寄せられました。
「身元不明遺体企画」に関しては、「毎度のこと岩手日報には考えさせられる」「正直これを見るまで県警ホームページにこういったページがあるのすら知らなかった」「岩手日報だけは毎年確認しに行っちゃうな。伝え方が一番好きです。いや好き嫌いで判断できるものじゃないけど、泣けるとかそういう緩い感じで終わらせず、ハッとさせられる恐ろしさをちゃんと刻みつけてくるこの鋭さに好感を持っている。絶対忘れちゃいけない感覚だと思う」「私が大好きだったお医者様もいまだ行方不明です。震災の直前に、病の私の母にビタミンCをたくさん送ってくださった優しい先生でした」などの反応があり、情報が拡散されました。
ウェブメディア「AdverTimes(アドタイ)」では、「3月11日を風化させない、岩手日報が広告で伝えた次なるアクション」として取り上げられました。テレビCMはギャラクシー賞選奨を受賞しました。被災県の地方紙として、今後も取り組みを続けていきます。
広告主 盛岡商工会議所、三陸鉄道など205社 企画 岩手日報社、博報堂
掲載紙 岩手日報 制作 博報堂、博報堂プロダクツ、横尾美杉
掲載日 2022/3/11 扱い
スペース/回数/色 本紙全60段、別刷り全15段/カラー