記者が語る

「知られていないものを伝えたい」

新聞協会賞受賞スピーチ

フジテレビジョン・佐野純氏

フジテレビジョン・佐野純氏が11月26日、新聞協会賞贈賞式で受賞スピーチをしました。「新型コロナウイルスの重症患者を受け入れる病院での長期取材を通じ、治療の実態や医療従事者の声を伝えたかった。普通の人が見られない現場こそ映像で伝えたいと考え、医師に小型カメラを装着してもらい撮影した。取材手法は変化を求められても、知られていないものを伝えたいとの意志は変わらない。国民の生活に資する報道、後世の検証に耐える報道を続けたい」と語りました。

スピーチ全文は以下の通りです。

今年7月に放送したこの番組ですが、企画したのは緊急事態宣言が全国に拡大した4月中旬のことでした。日々のニュースだけでなく、掘り下げたコロナ報道ができないかと考えて「特番を作ろう」と呼び掛けたのが最初でした。

いくつか企画案が出ましたが、拠点病院である程度長期的な取材を行うことで、コロナ重症化の実態や医療従事者の生の声を伝えられないかと考えました。
もちろん、感染リスクの高い病棟内での撮影自体が当時も今も極めて難しいことではありますが、私たちは普通の人が入れない、見られない現場だからこそ、それを映像で捉えたいと思いました。
患者はどんな症状なのか。どんな治療が行われているのか。患者と向き合う医師たちはその時点でどんな知見を得ているのかを伝えたかったのです。

この番組には医師に装着した小型カメラで撮影した映像が含まれており、それが治療や患者の実態を伝える核となっています。
報道機関の原則としては、自分たちで撮影した映像や写真で伝えるべきだと思いますけれども、この番組は自分たちの撮影映像だけで成立させることはできませんでした。

そこで、医師に撮影を託す場合に実際にどうするか。
私たちはカメラを預けっぱなしにするのではなくて、医師と綿密に打ち合わせを行い、カメラの装着位置や医師の動線を確認し、そして撮影された映像は毎日チェックをして翌日以降の撮影プランなどを考えていきました。こうしたことによって狙いを持った番組になったと思います。

今回の受賞はそうした私たちの狙いをくみ取っていただいた結果だろうと思いますし、テレビ報道に携わる者として非常に意義深いことだと感じております。

新型コロナウイルスの感染が始まって間もなく1年です。
治療法が確立されていない状況の中で、感染防止と経済活動のバランスをどう取るのかいまだに明確な答えは見いだせていません。

そしてコロナによる制約が続く限り、私たちの取材や番組制作にも新たな手法が求められていくのだろうと思います。しかし、知られていない物事を知って伝えたいという思い、ジャーナリストとしての強い意志の大切さは変わりません。

そして今、コロナがまた急に拡大しています。
われわれジャーナリズムにとってもここが正念場になってくると思います。
国民の生活に視する報道、後世の検証に耐え得る行動をみんなでやっていこうではありませんか。自戒の念も込めまして申し上げたいと思います。

<受賞者>

佐野純(さの・じゅん)氏

フジテレビジョン
ニュース総局報道局報道センター報道番組部長
「コロナ重症病棟 医師たちの闘い」の取材班代表として、2020年度新聞協会賞を受賞。

(2020年12月15日)