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《関西マス倫合同会議》裁判参加の課題報じて 犯罪被害者の会 元会員ら要望

 関西地区マスコミ倫理懇談会と「メディアと法」研究会の合同会議が7月20日、大阪市の毎日インテシオで開かれた。今年6月に解散した全国犯罪被害者の会(あすの会)の元会員らがパネル討議に登壇した。会の運動により実現した刑事裁判への被害者参加制度について、問題点をメディアが丹念に拾い上げることが今後の改善につながるとの意見が出た。被害者の実名報道については、家族を失った元会員からも「必要だ」との声が上がった。ただし遺族の名前は本人の意向を尊重してほしいとの要望もあった。

 あすの会の顧問を務めた諸沢英道氏(元常磐大学長)は基調講演で、参加制度の実現は「被害者が自ら闘った」最大の功績だと評価した。ただし世界ではこうした被害者運動をするのは支援者だという。被害者自身が訴えることを「漫然と容認する」日本社会の考え方は問題だと指摘した。  

 土師守元副代表幹事はパネル討議で、あすの会の18年間の活動で被害者保護の「大きな幹を作れた」と振り返った。自身も含め、元会員の多くは制度の恩恵を受けていないものの、それを承知の上で活動を続けてきたことが誇りだと述べた。今後の課題として、被害少年やそのきょうだいの精神的ケアや教育支援を挙げた。  

 林良平元代表幹事代行は2008年に施行された刑事裁判の参加制度について「今まで気付かなかった不備が出ているはずだ」と指摘した。しかし制度を使った人の声が集まりにくくなっているという。「メディアが参加制度の問題点を丹念に拾い上げ、報じてほしい」と要望した。

 諸沢氏も、あすの会の活動は被害者支援の第一歩にすぎず、今後の進展にはメディアの役割が欠かせないと話した。「課題を見つけたら専門家の声とともに伝えてほしい」

被害者の実名「必要」 遺族名、意向尊重を

 討議では事件・事故の実名報道についても議論した。土師氏は1997年の神戸連続児童殺傷事件で当時11歳だった息子・淳君を亡くした。実名報道について問われると「名前は生きた証し。匿名だと本人の人生を否定されたような気になる」と理解を示した。ただし遺族の実名はそれぞれの意思を尊重してほしいと強調した。  

 2003年に妻・和子さんを失い、あすの会で活動してきた寺田真治氏も、被害者本人の実名報道は「事件を構成する固有名詞だからやむを得ない」と話した。しかし自身については「『夫』で十分ではないか」と述べ、被害者遺族の名前を報じるかどうかは「本人の意向を聞いた上で判断してほしい」と訴えた。

 諸沢氏は「名前と顔写真がなければ報道に現実味が出ない」という主張は「記者の間で受け継がれてきた古い考え方だ」と指摘した。事件の発生場所から離れた地域の読者には被害者名や顔写真は必要ないと述べた。「公共性よりも被害者の利益が尊重されるのが原則」だとし、報じない判断も必要だと語った。

 ただし「捜査当局の匿名発表はあってはならない」とも。捜査が適正かどうかチェックすることもジャーナリズムの役割だとし、実名発表は必要だと話した。

 参加者からは、報道機関が実名や顔写真の掲載を控えても、インターネット上で虚実入り交じった情報が飛び交う恐れはぬぐえないとの声が上がった。これに対し諸沢氏は「『ネットは無責任で信頼できない』との認識は世界で共有されている。ネットへの影響を気にせず自社の方針を貫くことが読者の信頼を得る唯一の道ではないか」と応じた。

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