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《盛岡でNIE全国大会》 新聞と教育で命を守る 震災語り継ぐため連携を

 第23回NIE全国大会は7月26、27の両日、岩手県の盛岡市と大槌町で開かれた。大会スローガンは「新聞と歩む 復興、未来へ」。2部構成の座談会では、東日本大震災の風化を防ぎ、未来に語り継ぐためにも新聞と教育の連携を深めたいとの意見が出された。新聞と教育の使命はともに「命を守る」ことにあるとの指摘もあった。新聞記事から災害対策を話し合う公開授業なども実施した。  

 新聞協会の白石興二郎会長(読売)は開会式で、2022年施行の改正民法で成人年齢が18歳に引き下げられることなどを挙げ、学びと社会をつなぐ新聞の役割は重みを増すと述べた。災害のたびにSNSで偽ニュースが拡散する中「信頼できる情報とは何か」が問われていると指摘。正確な情報と分析を伝える新聞は「児童・生徒の学びを多方面から支えている」と強調した。岩手日報の東根千万億代表取締役社長は「東日本大震災の教訓を学び直し、防災・減災のため新聞を学校教育に生かしてほしい」とあいさつした。  

 座談会では、かつて震災を経験した学生や教員、新聞記者らが意見交換した。宮城教育大3年の高橋莉子さんは、中学1年だった震災直後に学校新聞「希望」の発行を始めた。「地域との関わりについて考え自ら発信する活動が大切だ」と述べた。岩手県の教員を目指す高橋さんは、震災の教訓の継承には過去を知ることも重要だとし「教育に新聞を使うことで子供の自主的な学びを深めたい」と語った。  

 県立総合教育センターの藤岡宏章所長は「震災を経て、岩手は地域と学校のつながりがより強まった」と話した。新聞が震災当時、子供の活躍や地域の話題を取り上げ「学校同士や、学校と地域をつなぐ接着剤の役割を果たした」と指摘した。  

 釜石市の復興を支援する「釜援隊」隊員の手塚さや香氏は元毎日記者。取材する側、される側双方の立場を経験した。「報道は物事を単純化して伝える。落とされた部分についても常に意識しなければならない」と述べた。  

 SNSが発達し、取材を受けた側が「意図に反する報道だった」と声を上げることもたやすくなった。「記者が独自の視点を持つことは重要だが、取材相手が伝えたいことをより慎重に考える必要がある」と話した。

 岩手日報の鹿糠敏和報道部次長は、学校や子供たちへの取材を通じ「子供は希望だ」とのメッセージを届けたい気持ちが強まったという。しかし、取材では悲しみに暮れる子供にも出会った。新聞は教材にもなるからこそ「物事を複眼的にみることが必要だ」と語った。  

 藤岡氏は、震災の風化を防ぎ、語り継ぐためにも新聞の役割は増すと指摘した。さまざまな人の意見を知り、考えるヒントを得られる新聞は「教育と実社会をつなぐ」とし、連携を深めたいと述べた。  

 鹿糠氏は、多くの記者が震災遺族の「二度と災害で命を落としてほしくない」との思いを積み上げてきたと語った。滝沢市立柳沢小で授業をした際、「滝沢市は噴火被害の可能性がある。意味のある避難訓練をしたい」との感想が寄せられたことに触れ「新聞と教育の使命は命を守ること。協力して子供たちに『命を守る』という意識を根付かせたい」と話した。  

 大会は新聞協会主催、盛岡市と大槌町の教育委員会の共催で開かれた。岩手日報社と岩手県NIE協議会が主管した。教員や新聞関係者など約1600人が参加した。

公開授業 防災を「自分ごと」に 記事から自助、共助策探る

 NIE全国大会の公開授業では、過去の新聞から災害対策を学び取る授業例が示された。読解力や表現力を育てるために、新聞記事の文章構成や表現の特徴を分析する授業もあった。  

 盛岡市立本宮小の山内和子教諭は「命を守る ふるさとを守る」と題した授業を公開した。6年生31人が、西日本豪雨や16年8月の台風10号の記事を基に、地元で洪水が起きた際の対策を話し合った。  

 記事を読み、自助や共助の在り方について意見を持ち寄り、「ハザードマップをあらかじめ確認する」「災害弱者に避難を呼び掛ける」などの対策を発表した。山内教諭は「防災を『自分ごと』として捉えるため、新聞記事から対策を話し合い、考えを深めさせた」と授業の狙いを話した。  

 盛岡市立仙北中の長根いずみ教諭は「五輪の記事から『説明のワザ』を見つけよう」と題し公開授業に臨んだ。2年生32人がリオデジャネイロ五輪で日本が銀メダルを獲得した陸上男子400メートルリレーの記事を読み比べ、文章構成や表現方法など読み手の関心を引く工夫を探った。  

 生徒からは「新聞には事実だけでなく記者の思いが書かれている」との意見が出た。見出しについては「シンプルで分かりやすくし、伝えたいことを強調している」と分析。写真は記事の内容を象徴する場面を使っているとの指摘もあった。佐藤葉乃さん(14)は「新聞には伝えるための技がたくさんあることが分かった。家でも新聞を読んでみたい」と話した。  

 新学習指導要領の施行を見据え、授業での新聞活用を考える特別分科会も開かれた。文部科学省初等中等教育局の大滝一登視学官は「新聞はこれからの学びにつながる」などと話した。

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