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《デジタルメディアセミナー》SNS発信 寿命長い記事を 多彩な切り口が求心力生む

 新聞協会メディア開発委員会は9月27、28の両日、デジタルメディアセミナーをプレスセンターホールなどで開いた。「岐路に立つ新聞メディア デジタル生き残りへの課題」と題した初日のパネル討議では、速報が埋もれやすいSNSでの発信は、長く話題に上るコンテンツ作りが大切だとの指摘があった。関心がある情報だけを集めるスマートフォン利用者に合わせ、興味を持たせるポイントを多く作り、繰り返し伝えることが必要だとの意見も出た。

 討議に先立ち、リンクトインの村上臣日本代表が講演した。リンクトインは世界で5億7千万人以上が使うビジネス向け交流サイト。ヤフーでモバイル事業戦略を担当していた村上氏は2017年に移籍した。

 村上氏は、24時間発信可能なデジタル空間では「速報はすぐに埋もれる」と指摘した。SNSでの情報発信は「いかに長く話題に上るかが重要だ」とし、コンテンツの価値を高めることが必要だと述べた。

 メディア各社が画像や動画コンテンツを駆使し、スマホ使用者の滞在時間を奪い合う中で「同じ戦い方をすればIT企業が強い」と村上氏。首相へのインタビューなどIT企業には難しい良質な一次情報を提供することが新聞の強みだとし「話題を生みシェアされることが重要だ」と話した。

 会場から「インターネットで無料の記事を読める時代に、人がお金を出しても読みたいと思う境目はどこか」との質問が出た。村上氏は「デジタルサービスで個人への課金は難しい。企業向けの情報提供サービスが有効ではないか」と答えた。

 討議では、博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所の吉川昌孝所長がスマホ使用者の情報摂取の特徴について説明した。同研究所の調査によると、20代女性の6割は世の中の情報量が多すぎると感じている。

 吉川氏は、短文投稿サイト・ツイッターのリツイート(再投稿)機能を、メモ代わりに使う女性の例を紹介した。玉石混交の情報があふれる中で、興味ある情報があってもすぐに見失ってしまうため「『これだ』と思った情報をスマホに引き寄せている」と説明した。

 JX通信社の米重克洋代表取締役は「スマホは既存メディアの接触時間を奪うだけでなく、新たなメディア接触時間を生んでいる」と指摘。小売店でレジに並ぶ時間を例に挙げた。プラットフォーム企業がデータを蓄積しスマホ対応を加速する一方、報道機関の取り組みは遅れているとし「まずスマホに徹底的に向き合うことが大前提だ」と述べた。

 吉川氏は、スマホ利用者の特徴に合わせ「読者の興味を引く『焦点』をたくさん作って、何度も伝えることが必要だ」と分析。ニュースの肝を一つに絞り込んで報じる新聞のスタイルは、受け手が興味ある情報だけを引き寄せる時代に合わないと述べた。

 サッカー・ワールドカップロシア大会で日本がコロンビアを破った試合では、大迫勇也選手に対する「大迫半端ないって」という言葉が注目を集めた。これを機に大会に興味を持つ人が増えたとし「多彩な焦点を出して、ニュースの真ん中に来てもらうことが必要だ」と話した。

 会場からは過去の映像などの有効な二次利用方法を問う質問が出た。米重氏は「過去の事件や事故、災害の情報と位置情報をひも付けたデータは不動産業界などに需要があるのではないか」と答えた。

 村上氏は、新聞社が蓄積したデータを無料で公開し、自由に使ってもらう手法を提案した。対価に代えて「分析結果などを一番最初に知らせてもらう仕組みが良いのではないか」と話した。

 2日間で計155人が参加した。

広告の5割 デジタルで スケダチ・高広社長が提言 サイトの収益構造分析が鍵

 2日目の「デジタル事業で収益をあげるために」と題した分科会では、デジタルマーケティングを手掛けるスケダチの高広伯彦社長が「新聞社は今後10年で、デジタル広告収入を広告収入全体の半分まで高めるべきだ」と訴えた。自社ウェブサイトの収益構造分析と、広告会社に頼らない営業体制が鍵になると述べた。

 デジタル空間での収益化を読者への課金に頼るのは難しいとの認識を示した。コンサルティング会社のデロイト・トーマツによる今年の調査で、14歳以上の日本人のうちオンラインニュースに利用料を支払ってもよいと答えたのは5%にとどまると紹介。読者の獲得や維持に要する費用をまかなうのは簡単ではないと話した。

 他方、広告は工夫次第で収益を伸ばせると強調した。そのためには自社サイトの収益構造を分析し、閲覧数ごとの収益率をはじき出すことが必要だと述べた。

 ページ当たりの広告量を絞った方がクリック率が上がり、収益性が高まることもあるという。分析を深めることで傾向が分かると指摘した。収益率が高い分野の記事を強化することも有効だと述べた。

 広告会社に頼らない営業体制作りも欠かせないと話した。ウェブサイトに載せる媒体資料は、連絡先を入力した人に限って公開するよう薦めた。関心を寄せた企業を顧客候補としてリスト化し、直接営業を掛けるべきだと説いた。

営業と開発 全て自前で 日経Nブランドスタジオ

 日経の三宅耕二執行役員デジタル事業広告・IDユニット長は、デジタル広告を制作するNブランドスタジオの体制について話した。商品開発や営業を全て自前で担っているとし「広告枠を売る発想から抜け出すことが重要だ」と説いた。

 デザイナーや動画専門の人材の雇用、育成にも力を入れているという。資本提携するViibar(ビーバー、東京都品川区)とは、事業者間取引を手掛ける企業の動画広告の使い方について研究を進めていると述べた。

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