NSK ニュースブレチン オンライン
2003年7月
-------------------------------------------------------------------
*

新聞協会会長に箱島氏を選任

*

新聞社の総売上高は2年ぶりに減少 広告収入が落ち込む

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
*Topics
-- 京都、神戸、中国新聞3社の共同開発データベースが稼働
-- 日刊スポーツ印刷社の王子工場が稼働
-- 朝日新聞西部本社の市民交流スペースが好評
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
今月の話題>>>
イラク戦争の報道巡りシンポジウム開催、従軍取材は有益との声が大勢占める
-------------------------------------------------------------------


新聞協会会長に箱島氏を選任

社団法人日本新聞協会は18日、東京・内幸町のプレスセンターホールで第77回定例会員総会を開き、任期満了に伴い役員(理事・監事)を改選した。また、会長、副会長、専務理事を次のとおり選任した。

◇ 会長
箱島 信一 (新任・朝日新聞社代表取締役社長)

◇ 副会長
東   功 (再任・北海道新聞社代表取締役会長)
佐々木勝美 (新任・山陽新聞社代表取締役社長)

◇専務理事
村上 重美 (再任)

「品格と節度」保ち行動を――人権に配慮し報道規制と戦う

箱島新聞協会会長は、機関紙「新聞協会報」のインタビューに応え、新聞協会が取り組むべき課題などについて次のように語った。

--会長就任の際に、NIEの強化を課題に挙げた。
若者の新聞離れ対策の大きな決め手がNIE(Newspaper in Education)だと、かねてから思っていた。1930年代からNIEへの取り組みが始まった米国と比べると、日本での歴史は20年足らずで、まだまだ発展途上だ。

新聞協会ではもともと販売委員会(Circulation Committee)の活動として始まった。最近、各社が学校に講師を派遣したり、紙面での展開にも力を入れるようになり、全社的なものになってきたが、まだ不十分だ。

7月31日から松江市で開かれる第8回NIE全国大会にも参加し、熱心な活動をされている教師と交流し熱気に触れたいと思う。

--新聞の文化性、公共性などを社会に理解してもらうために何が必要か。

権力と新聞という構図では、読者は当然我々の側に立ってくれると思っていたが、必ずしもそうではなくなっている。この現実を直視し、その理由を検証、反省しないといけない。集団的過熱取材対策をはじめ、取材される側の人権に配慮した取材と報道の実現に努力すべきだ。

新聞倫理綱領(The Canon of Journalism)から逸脱する行為があれば、早目に警告を発するなど、きちんとした姿勢を打ち出すことが必要だ。いかに競争が激しくても、新聞倫理綱領がうたう「品格と節度」から外れては、新聞の存在基盤自体が揺らいでしまう。現場の熱気に引きずられるだけではだめだ。

新聞の相互批判も必要だが、品位を欠く批判は、自らをおとしめるものだ。

--新聞広告の環境も厳しいが。
様々な調査からも、新聞は最も信頼性の高いメディアであることは変わらない。広告媒体としての新聞の特性を最大限発揮し、それを理解してもらう努力が必要だ。広告主が使いやすい媒体にするために、広告効果を示すデータ整備や、デジタル化などを進める必要がある。
--多メディア化の中での新聞の役割をどう考えるか。

信頼性の高いメディアとしての新聞の存在感は、ますます高まる。インターネット事業でのビジネスモデルがまだ確立してないが、コンテンツの収集、整理、発信に関して新聞は百数十年の歴史を持ち、その能力は圧倒的だ。更なる発展の可能性を持っている。

新聞の将来は、いかに多くの優れた記者を抱えるかにかかっている。

--優秀な記者を育てるために、新聞協会として取り組むべきことは。

基本的には、記者教育は各社で行うべき仕事だが、最低限の記者倫理やルールなどを共有化するために、協会として努力する余地があるかもしれない。

記者は、所属が異なっても、厳しい緊張の中で、社会的に大きな影響力を持つ仕事に携わっているという事実や、言論の自由という基盤を共有している。そうした共通基盤に基づく共感があってしかるべきだ。報道規制に対しては、ともに戦う姿勢が必要だ。


新聞社の総売上高は2年ぶりに減少 広告収入が落ち込む

新聞協会はこのほど、2002年中に新聞社が売り上げた総額を前年比3.7%減の2兆3979億円と発表した。協会会員の日刊新聞100社(法人単位、スポーツ紙を含む)の総売上高の推計。すべての収入項目で減少したが、特に広告収入が10.1%のマイナスだった。

調査は毎年実施しており、各社の決算書を基に暦年の総売上高を算出。決算書を提出していない社は同規模社の平均的な数値などから推計した。総売上高は販売収入、広告収入のほか、その他収入(出版・受託印刷・事業収入等の営業収入、営業外収入、特別利益)の合計額で、新聞社の総収入に当たる。

2002年の総売上高のうち販売収入は0.2%減の1兆2832億円で2年ぶりの減少。

この結果、総売上高に占める構成比率は販売収入が前年より1.8ポイント拡大して53.5%、広告収入は2.3ポイント縮小して32.6%となった。


Topics.......Topics.......Topics........

京都、神戸、中国新聞3社の共同開発データベースが稼働

京都、神戸、中国の新聞3社が共同開発を進めていた記事、写真、紙面(イメージ)の統合データベースが完成、6月12日から稼働した。共同データベース(DB)の構築は、日本の新聞界では初めて。

データベースは「X−B」(−A)と名づけられ、3社は相互にインターネット経由でDBを検索できる。NewsMLに対応しており記事、写真、紙面のデータを多目的に再利用できる。

3社の共同開発によりシステムの開発・維持費の大幅削減を図る。開発メーカーは日本IBM。DB設備本体は、関西電力の関連会社のデータセンター(大阪市)に置かれ、センターの運営費と、センター・本社間の回線料を3社がそれぞれ負担する。

DBの利用は、3社の編集局間での相互利用から始めた。DB上のすべての記事・写真・紙面の検索・閲覧が可能だが、写真、紙面イメージの実画像のダウンロードには制限が設けられている。

商用化に関しては「採算や個人情報の管理などの課題を解決した上で検討する。NewsML対応にしているので、企業や団体などのニーズに合わせ再編集したコンテンツを配信することも可能になる」としている。三社は他の地方紙にも参加を呼びかけている。


日刊スポーツ印刷社の王子工場が稼働

日刊スポーツ新聞社の関連会社・日刊スポーツ印刷社(東京都中央区)の王子工場(東京都北区)が6月20日に稼働した。日刊スポーツ約10万部のほか、朝日新聞の朝刊約55万部、夕刊約23万部を印刷する。いずれも埼玉、東京北部向け。

新工場の延べ床面積は1万7696平方メートル。40ページ(うち16六個面カラー)印刷が可能な東京機械のタワー型輪転機「6200UD」を5セット導入した。

王子工場の近接地には、読売新聞東京本社が11月初旬の一部稼働を目指して東京北工場を建設中。また、製紙メーカー・日本製紙の堀船倉庫も建設中で同倉庫と両工場は地下トンネルで結ばれる予定。完成すれば、両工場は同倉庫からコンベヤーで新聞印刷用紙の供給を受けることになる。


朝日新聞西部本社の市民交流スペースが好評

朝日新聞西部本社が新社屋4階に設けた市民との交流スペース「朝日さんさん広場」が好評だ。5月6日、北九州市の大型複合施設「リバーウォーク北九州」内に新社屋を移転したのを機にオープン。

パソコンを使った「学校新聞づくり講座」のほか、ミニコンサートや講演会、各種展示でにぎわっている。名称は、九千二百人の応募の中から選んだ。

同広場の面積は200平方メートル。「学校新聞づくり講座」では、クラス単位で市内の小・中学生が訪れ新聞づくりを体験する。A3判サイズで朝日新聞本紙と同じ書体を使うなど本格的なレイアウトも人気の一つ。高校生や教師、PTAなどからの利用申し込みにも対応している。現在、週1回程度のペースで開催中。

講座の受講は無料。スペース利用は原則有料だが、現在は目的に応じて無料にするなど柔軟に対応している。同社は「訪れた市民同士が交流するなど、様々な形で大いに利用してもらいたい」と話している。

<< back


今月の話題>>>

イラク戦争の報道巡りシンポジウム開催、従軍取材は有益との声が大勢占める

6月に入って従軍記者らが帰国したの機に、イラク戦争の取材、報道を検証するシンポジウムが相次いで開かれた。新聞記者、フリージャーナリストが従軍取材体験を語るとともに、新聞社の管理職が記者を従軍から離脱させた際の判断などについて参加者に説明した。

まずは、「イラク戦争――戦場からの報告」をテーマにした新聞協会主催の第43回紙面審査全国懇談会が6月4、5の両日、東京で開かれた。新聞社の記事審査担当者や出稿部門のデスクら41社87人が参加。イラク戦争で従軍取材をした朝日新聞社の野島剛(のじま・たけし)記者と開戦後もバグダッドに残って取材を続けたフリーランスの山本美香(やまもと・みか)記者が講演した。

海兵隊に従軍、クウェートから陸路イラクに北進した野島記者は、「自分が直接見聞した米兵の生の姿を記事にしようと考えた。読者は戦場に直面した記者自身の姿や思い、生活の苦労に強い関心を示した」と話した。

米軍の対応について「誠実だった」と評価し、「米軍側にも従軍取材の受け入れに思惑があったはずだが、メディアとしては歓迎すべき判断だった。記者の従軍が蛮行の抑止にもなったと思う」と述べた。

また、「報道機関として、危険だから記者を出さないという考えはやめてほしい」と指摘し、報道機関が自社記者を戦場に派遣する場合には、死傷した場合の責任等を記した契約を個別に結ぶようにしてはどうかと話した。

日本のTV局と契約を結びバグダッドから報道を続けた山本記者は、リポートの内容やバグダッドから退避する場合の判断は本人に任されていたことなどを紹介した。

その上で、報道機関とフリーランス記者との関係にふれ、「今回契約したTV局は、自社記者を危険地域に行かせないという後ろ向きの発想でなく、その地域や問題に強い人に取材させるという判断で、フリーの記者を起用したと思う。危険の見返りとして、報酬など金銭保証があるのは当然だ」と話した。

次いでマスコミ倫理懇談会全国協議会主催の第18回公開シンポジウムが6月7日に東京で開かれ、一般参加者284人を含む370人が参加した。テーマは「いま マスコミに問われているもの――イラク戦争とメディア」。同協議会は新聞、放送、出版、映画、広告など、227の企業を会員とするマスコミ界の横断的組織。各メディアに共通する倫理上の諸問題について話し合うとともに、言論・表現の自由に対する外部からの介入の排除に努めている。

「戦争取材で見たもの、感じたこと」をテーマに講演したフリージャーナリストの佐藤和孝(さとう・かずたか)氏は、戦闘状態にあったイラクの首都バグダッドに残って取材を続けた体験を語った。

外国メディアが取材拠点にしていたパレスチナホテルが米軍の砲撃を受け、ロイターなどのカメラマン、記者、技術者が死傷した際、同氏は隣室にいた。

幸い負傷しなかったが、あの砲撃は米軍の記者に対する脅しだったと述べ、「米軍は自軍の従軍記者は守るが、管轄外の記者は敵と位置付けていた」と話した。

また、多くのメディアが、ホテル前広場のフセイン大統領像が引き倒されたシーンを、バグダッド市民が米軍を歓迎している象徴として報道したことについて、「200人ほどが広場に集まったが、市民と報道陣は半々程度。現場では、米軍を歓迎しているとはいえない印象を持った」と語った。

パネルディスカッションでは、従軍取材に参加した日本テレビの今泉浩美(いまいずみ・ひろみ)記者が、「米軍に利用されるかもしれないから従軍しない、という選択はあり得ない。利用されないよう努力するしかない。実際に自分の目と耳で確認することに重要な意味がある」と話し、従軍取材は有用だった主張した。

開戦直前にバグダッドから一時撤退したものの、陥落直前にバグダッドに戻って取材した共同通信社の原田浩司(はらだ・こうじ)記者は、現場取材の重要性を説いたうえで、「我が社はパレスチナホテルのバルコニーに白旗を揚げていた。周りの記者にはばかにされていたが、そのおかげで砲撃されずに済んだと思う」と、できる限りの安全策を講ずる必要性を強調した。

戦闘状態の激化を受け、従軍記者を軍から離脱させた朝日新聞東京本社の亘理信雄(わたり・のぶお)外報部長は管理職の立場から、「取材は社の業務であり、取材を指示する立場としては、危険を予見しなくてはならない。危険の全くない取材などあり得ないので、ケースバイケースで判断するしかないが、指示する立場としては臆病なくらいでよい」と話した。

<< back

Nihon Shinbun Kyokai
The Japan Newspaper Publishers & Editors Association
Nippon Press Center Bldg., 2-2-1 Uchisaiwai-cho, Chiyoda-ku,
Tokyo100-8543, Japan

bulletin@pressnet.or.jp.

Copyright 2003 Nihon Shinbun Kyokai
All right reserved