NSK ニュースブレチン オンライン 2003年12月
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第17回新聞製作技術展(JANPS2003)に2万人が来場
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記者クラブ制度の廃止を求めたEU提案に反対の見解を発表――日本新聞協会
日本新聞協会は12月10日、編集委員会の記者クラブ問題検討小委員会がまとめた「記者クラブ制度廃止にかかわるEU優先提案」に対する見解を発表した。
日本の記者クラブ制度は現在も「知る権利」の代行機関として十分有効に機能しており、廃止する必要は全くないと表明している。欧州連合(EU)の行政機関、欧州委員会が、11月14日開催の「規制改革に関する日・EU高級事務レベル協議」で、昨年に引き続き記者クラブ制度の撤廃を申し入れたことなどに伴う措置(別項参照)。
新聞協会編集委員会は欧州連合(EU)が昨年10月、日本政府に対して「記者クラブ制度撤廃」を求めた後の11月、記者クラブ問題検討小委員会を再開し、記者クラブの存在意義などについて検討を重ねてきた。12月10日に発表した見解はその検討結果である。
見解では、
(1)日本の記者クラブは情報公開に消極的だった議会や行政といった公的機関に対し結束して情報公開を迫るという役割を100年以上にわたり担ってきた
(2)加えて公的情報の迅速・的確な報道、人命人権にかかわる取材・報道上の整理、市民からの情報提供の共同の窓口といった機能を持っている
――などと指摘。
そのうえで、「記者クラブ制度は、単一の情報源への過度の依存および情報の照合確認の怠慢を助長し、社会全般が得られる情報の質を低下させている」とのEU提案について、何ら根拠がないばかりか、そのような実態も存在しないと反論している。
また、「記者クラブを否定することは、メディア本来の責務を放棄することにもつながりかねない。まさにそれは『社会全般が得られる情報の質の低下』を意味するからである」と説明している。
さらに「外務省発行記者証を、公的機関が主催する報道行事への参加認可証として認め、国内記者と平等な立場でのアクセスを可能にすべきだ」とのEU提案について、これまでの新聞協会の見解で(1)記者クラブは、参入を希望する外国報道機関の記者については、原則として正会員の資格で加入を認めるべきである(2)公的な記者会見については、参加者をクラブの構成員に一律に限定するのは適当ではない――ことを表明していると指摘。
新聞協会の見解を受け、実際に多数の記者クラブは、外国報道機関に門戸を開放しているほか、記者クラブ主催の記者会見は、所属する会員以外にも開放されており、外国プレスがいう「排除」「制限」は一方的な見方であると反論している。
「公的機関が行う記者会見やブリーフィング、その他のメディア向け行事への参加は、一般的に各機関の記者クラブに所属する会員に限定されている」とのEUの主張に対しては、次のように説明。
「ブリーフィングや懇談など、それぞれ呼び方は違っても、基本的に各報道機関や記者が個別に行う取材を、取材対象者の都合で、集団の形で行う取材の形式である。この取材形式は、情報を隠したがる公的機関に対して、記者が集団で圧力をかけ、勝ち取ってきたものであり、たとえ、定例化していても、取材対象者と取材者の間に一定の信頼関係があることが前提となっている。従って記者なら誰でも自由に参加できる性質のものではあり得ない。ブリーフィングへの参加を認めるかどうかは、取材対象者が判断することである」
最後に「それぞれの国には、それぞれの歴史的背景を持つ取材上の組織、ルールがある。日本の記者クラブもわが国の歴史から生まれ、発展したものである。EU提案は、そうした背景への理解が不足しており、「誤解」と「偏見」「事実誤認」に基づいたものと言わざるを得ない」と述べている。
EUが記者クラブの撤廃を日本政府に申し入れ
欧州連合(EU)の行政機関、欧州委員会は、11月14日開催の「規制改革に関する日・EU高級事務レベル協議」で、昨年に引き続き記者クラブ制度の撤廃を申し入れた。これに対し日本政府は昨年同様、「ジャーナリストが自立的に運営する記者クラブの存在について、政府は当否を言う立場にないし、その立場は今後も変わらない」と、あらためて記者クラブの自立性を尊重する立場を明確にした。
EUは同提案の中で、「記者クラブ制度は外国報道機関への事実上の競争妨害として作用している。これにより、外国報道機関の視聴者や読者への情報伝達が国内報道機関よりも不当に遅れ、また現場での質問ができないことにより、間接情報に頼ることを余儀なくされている」などと指摘。昨年同様、日本政府に(1)外国報道機関特派員に発行されている外務省記者証を、日本の公的機関が主催する報道行事への参加許可証として認め、国内記者と平等の立場でのアクセスを可能にする(2)記者クラブ制度を廃止することにより情報の自由貿易にかかわる制限を取り除く――ことを求めた。
(2)の要望については、日本政府は「現時点では何ができるか分かっていない。これから検討していきたい」と回答した。
EU側はフェルナンド・ヴァレンツエラ対外関係総局副総局長ら、日本側は外務省の佐々江賢一郎・経済局長らが参加した。
読売の東京北工場が稼働
――製紙メーカーの倉庫と地下で直結、新聞巻き取り紙を自動搬入
読売新聞社の東京北工場(東京都北区)が、11月9日組み朝刊分から一部稼働した。来年1月には全面稼働する。これまで主に東京・大手町の東京本社工場で印刷していた都内北部、埼玉県南部向けの朝刊約100万部、夕刊約45万部を印刷する。
同工場は読売グループ国内27番目の印刷拠点で、首都圏では川越工場(埼玉県)と並ぶ最大規模の印刷工場。同社の100%子会社が運営する。地上4階、地下1階で延べ床面積は2万1158平方?。江東、塩浜工場に続きサーマル式CTP(Computer to Plate)を導入。印刷体制は40ページで16個面カラーで、毎時十七万部印刷の高速シャフトレスタワー型輪転機「CT-7000CD」を6セット配備した。
来年秋に創刊130周年を迎える読売が、首都圏工場の40ページ16個面カラー体制づくりを進めるに当たり、東京本社工場に代わる基幹工場。全面稼働後には東京本社工場の印刷部数は、本紙朝刊で30万部弱となる。
読売の東京北工場は、日本製紙堀船倉庫をはさみ、今年6月に稼働した日刊スポーツ印刷社王子工場と並んで建てられた。倉庫と両工場は地下トンネルで結ばれ、ベルトコンベアーで巻き取り紙が2工場に運ばれる。
3社は共同で、環境保護や地域住民との協調に取り組んでいる。工場南側に公開空地を設けたほか、北側の隅田川沿いにはサクラ並木をつくり、来年秋には外周約900メートルの散歩道が完成する。さらに2工場は、自然な風の流れを確保するために屋根の形状を流線型にしたほか、読売の工場はホールとミニサッカーなどができる運動広場を、日刊スポーツの工場もホールとゲートボール場を地域住民に開放する。新聞配送車も、東京都の環境影響評価(アセスメント)基準よりもさらに環境に配慮した低公害車を使用する。
このほか、3社で消火用水290トン、生活用水40トン、飲料水10トンを備蓄。読売は、地元消防団に災倉庫の移転先として敷地の一部を提供。こうした取り組みが評価され、3社は11月13日、王子消防署から表彰を受けた。
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日本新聞博物館(ニュースパーク、横浜市)の企画展示「新聞漫画の目――人 政治 社会」が11月1日から始まった。来年2月1日までの開催。幕末から1970年代の新聞に掲載されたポンチ・漫画の歴史を約280点の資料で振り返る。
同展では故長谷川町子氏が朝日新聞等に連載した漫画「サザエさん」が掲載された紙面などが展示され、来館者の目を引いている。
11月8日には新聞製作工房で、朝日新聞夕刊に時事問題をテーマにした四コマ漫画「地球防衛家のヒトビト」を連載中の漫画家しりあがり寿氏を招きフォーラムを開催した。
しりあがり氏は、時事ものの新聞漫画を描くにあたって「意見が対立する問題を描く際は偏った立場にならないよう注意している。読者が考えるきっかけとなるような漫画を心がけている」と語った。
「東ティモールの声」社主兼編集長に聞く
2002年5月にインドネシアから独立した東ティモール民主共和国。人口約80万人の同国では現在、日刊紙2紙が発行されている。そのうち部数の多い「スアラ・ティモール・ロロサエ(東ティモールの声)」紙のサルバドール・ソアレス社主兼編集長が、外務省の招きで10月21日から10日間来日した。同氏にこれまでの歩みと課題について話を聞いた。
−−現在の発行状況は。
発行部数は約1250部。インドネシア語と英語、公用語のテトゥン語とポルトガル語の四か国語で発行している。社員は50人。うち25人が記者だ。
−−インドネシア統治時代の状況は。
統治時代の1993年2月に東ティモール初の日刊紙として創刊した。我々の地域だけの新聞があっても良いと思った。だが当時の新聞社はつらい立場に置かれていた。記者が警察官などに殴られたほか、94年と99年4月には独立反対派の民兵などに襲われ、社屋が半壊。同9月には、印刷機を壊され社屋も燃やされ、発行不能になった。
−−独立賛成派の論調だったからか。
私自身は親インドネシア派だ。自分の政治的な立場と新聞発行は別に考えるべきで、新聞発行は一般民衆に政治や民主主義の問題を広く伝えるためだ。しかし、人によっては中立には見てもらえない。
−−発行を再開したのは。
国連の暫定行政機構下の2000年7月だ。ジャカルタに避難中、現大統領のシャナナ・グスマン氏から東ティモールで新聞発行を再開してほしいと説得された。新聞発行には重い使命があり、心理的な重圧もあったが、東ティモールのために戻った。独立後の現在、メディアの自由度は高い。親インドネシア派の私が新聞を発行していることは、自由の証しでもある。
−−今後の課題は。
最大の問題は資金難。新聞発行では利益が出ないので、カラー印刷機を導入し印刷事業の利益を新聞経営に回したいと考えている。現状では、記者教育も全くできていない。様々な面で日本の報道関係者の支援を得たい。
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インドネシアからの独立に反対する民兵らの襲撃を受け、1999年9月に全壊した「東ティモールの声」の社屋跡(2002年10月撮影)
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第17回新聞製作技術展(JANPS2003)に2万人が来場 |
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新聞協会主催、日本新聞制作技術懇話会(CONPT―JAPAN)協賛で2年に1度開催している第17回新聞製作技術展(JANPS2003)が11月4日から4日間、「未来をひらく技術と創造――環境にやさしい新聞づくり」を統一テーマに、東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開かれ、日本全国から2万0027人が訪れた。
新聞製作関連の50社と新聞協会が出展。日本でも導入する新聞社が増えつつあるコンピューター内の紙面データから直接印刷用のプレートを製作するComputer to Plate (CTP)や、ニュース管理標準フォーマット「NewsML」を利用したシステムが注目を集めた。
4日の開会式では、主催社を代表して箱島信一・新聞協会会長(朝日新聞社代表取締役社長)があいさつ。「JANPSが新聞制作技術関係者にとって未来の良き刺激となり、また、交流の場として実りあるものになることを期待する」と述べた。
CTPに関してはサーマル(thermal plates)、銀塩(silver-halide plates)、フォトポリマー(photopolymer plates)といった各種版材が勢ぞろいした。
このうち明るい場所での作業が可能なサーマルCTPは、読売新聞が1月、東京・江東工場に初めて導入した。
このほか、「NewsML」をはじめとするXMLを活用した素材管理システム、組み版システムが注目を集めた。
また、大刷りを出力せずに紙面やレイアウトのチェックを可能にする新聞紙面サイズのタッチパネル機能付きディスプレーの展示もあった。
広告のデジタル送稿の進展や新聞カラー印刷の際の標準色となる新聞用ジャパンカラー(JCN)の実運用への検討が進むなか、広告関連システムの出展も多かった。
印刷関連では、シャフトレスタワー型輪転機をはじめとする関連機器の展示のほか、朝日新聞、読売新聞の京都工場で来年稼働予定の毎時18万部を印刷できる高速輪転機のパネル展示も関心を集めた。
統一テーマ「環境にやさしい新聞づくり」を反映し、環境対応型のインキや洗浄液の出展も多かった。
新聞協会ブースでは、JCNについてパネルによる概要説明のほか、環境に配慮した新聞製作に向けた取り組みなどを紹介した。
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