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2004年1月
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2004年箱島信一・新聞協会長の年頭あいさつから
報道制約の動きと断固闘う――NIE事業の一層の充実に努力

* 2003年日本の新聞発行部数は5287万部――4年連続の減少
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-- 写真記者協会2003年度の協会賞作品決まる
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今月の話題>>>
2004年の日本の報道界を展望する
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2004年箱島信一・新聞協会長の年頭あいさつから
報道制約の動きと断固闘う――NIE事業の一層の充実に努力


2004年の年頭にあたり、全国の報道関係者のみなさまに謹んで新年のごあいさつを申しあげます。

イラク戦争後の世界は、戦後復興の遅れから新たなテロの脅威を増幅させ、2人の日本外交官が殺される事態も招くなど混迷の度合いを強めています。フセイン元大統領の拘束が今後のイラク情勢にどう影響するかも予断を許さないところです。小泉内閣のイラクへの自衛隊派遣決定は、国内に賛成、反対の激しい議論の渦を巻き起こし、国際的な注目も集めております。「平和立国」を指針としてきた戦後日本の枠組みは大きく揺らいでおり、新聞報道にとって今年は「勝負の年」となるのは確かです。一方、国内経済は景気の底入れが語られながらも、円高圧力の下で先行きの不安感がぬぐえません。年金、道路、地方財政など構造改革の行方も不透明なままです。今年もまた、困難な1年が予想されます。

こうしたなか、メディアを規制するさまざまな動きは依然続いています。

新聞協会理事会は一昨年、個人情報保護法案と人権擁護法案に対し、憲法で保障された表現の自由に政府が介入する道を開くものとして、反対の緊急声明をまとめ公表しました。個人情報保護法は一部修正ののち昨年5月に成立、人権擁護法案については衆議院解散に伴い廃案になりました。個人情報保護法は2005年4月から全面施行になります。報道分野は適用除外になっており、直接的な影響はひとまずない、と言ってよいでしょう。しかし、報道以外の販売、広告などの分野は義務規定の適用を受けることになります。この面では、新聞界として十分な検討を要します。また、法施行後も「表現の自由」「報道の自由」を狭める運用が行われないか、引き続き警戒していく必要があります。

政府の司法制度改革推進本部は裁判の審理・評決に一般国民が参加する裁判員制度の導入を検討しております。この中で、裁判の公正を保つためとの理由で、偏見報道をしないよう配慮義務を盛り込んで報道内容を実質的に規制しようとしたり、裁判員だった人への取材を難しくしたりする内容が検討されていると伝えられています。

私たちは、こうした規制が出てくる背景には、報道によるプライバシーなどの人権侵害を訴える声があることに注意しなければなりません。そして、報道をめぐる問題は、報道機関の自主的対応で解決を図り、読者や視聴者との信頼のきずなをより確かなものとすることが今日的課題となっていることを、改めて強調しておきたいと思います。

メディアを法的に規制したり、報道の自由を制約したりしようとする動きは、新聞をはじめとするマスコミの使命遂行への努力を否定するものです。引き続き注視し、強く反対の姿勢を示して、断固として戦っていかなければなりません。

記者クラブについては、近年、海外のメディアや政府機関から、廃止を求める声が出されるようになりました。しかし、要望や批判のほとんどは記者クラブの実態の誤解に基づいています。編集委員会は記者クラブ問題検討小委員会の活動を強化し、現行の記者クラブ見解を踏まえ、毅然とした態度で日本における記者クラブの有用性を主張していくことにしております。

さて、昨年の新聞大会のあいさつで、私たち新聞人が深刻に受け止めなければならない問題として、次の時代の中核となる若者世代に無購読層が急速に広がってきていることを申しあげました。新聞総発行部数も1997年をピークに減少傾向を示しています。この事実を重く受け止め、新聞離れを業界挙げて食い止めるために、中・長期的方策を講じることが焦眉の課題であります

販売委員会は、昨年から4月6日を「新聞をヨム日」とし、この日からの1週間を「春の新聞週間」と定め、新聞を読まない層の中心を占める若者向けに、購読を呼びかけるキャンペーンに取り組み始めました。無購読者に向けた総合的な購読PR活動を展開することにより、新聞を手にとってもらうための環境作り、基盤整備を図ることを目的としたものです。2年目になる今年は、新聞メディアの強化に関する委員会も、昨年度まで展開してきたRead Me.キャンペーンを踏まえて、新聞をヨム日に照準を合わせたキャンペーンを準備中です。各委員会の既存の活動を有機的に結び付けながら、新聞の購読PRを業界全体の大きな運動としていくことが求められます。

日本新聞教育文化財団の新聞博物館(ニュースパーク)、NIE事業も、未来の読者と新聞サポーターを育てるために、いっそうの充実を図っていかなければなりません。03年度のNIE実践校は21校増えて389校に達し、各地域の推進協議会の独自認定校23校を加えると目標の400校を突破しています。また、日本新聞販売協会が取り組み、販売委員会が協力している「すべての教室へ新聞を」活動については、近く販売委員会として新聞提供に当たっての考え方がまとまる見込みです。より多くの教室で新聞が教材として利用され、NIE活動がいっそうの広がりをみせるよう願ってやみません。


2003年日本の新聞発行部数は5287万部――4年連続の減少

新聞協会「日刊紙の都道府県別発行部数と普及度」によると、2003年10月現在の日本の新聞総発行部数は52,874,959部。前年比0.6%減で4年連続の減少。一般紙は0.2%減、スポーツ紙は3.7%減少した。朝刊、夕刊をそれぞれ別々にした場合は70,339,887部。内訳は朝刊が51,246,188部、夕刊が19,093,699部。調査対象は新聞協会に加盟する123紙。

朝刊夕刊セット部数は前年比0.9%減で13年連続の前年割れ。朝刊単独部数は0.4%減、夕刊単独は、3.1%の減少となった。地区別では、近畿の0.4%増、沖縄の1.0%増を除き減少した。

一世帯当たりの部数も、前年比0.02部減少して1.07部となった。人口1,000人当たり部数は555部。


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写真記者協会2003年度の協会賞作品決まる

東北写真記者協会、東京写真記者協会は昨年末、2003年度の各協会賞を発表した。おもな受賞作は次のとおり(関西、北海道、中部、九州など各地の写真記者協会賞は順次掲載の予定)。

<東北写真記者協会賞>

岩村雅裕記者(デーリー東北新聞社)の「闇夜に妖しく『ツキヨタケ』」
(写真)=デーリー東北新聞社提供
同作品は10月上旬、十和田湖畔で裏側のヒダが緑色に発光するツキヨタケを撮影したもの。夜でなければ観察できないこの発光現象を撮影するため、暗闇の中、足場の悪い山奥へ入り、長時間露光で撮影した。構えた三脚ごと斜面を転げ落ちるなどの苦労の末撮影された写真には夜空の円周運動も写しこまれており、天体の光とキノコの光が組み合わされた美しさと撮影に至る努力が評価された。

<東京写真記者協会賞>
原田浩司、関根孝則両記者(共同通信社)の「イラク戦争」
(写真)=東京写真記者協会提供

2003年3月の米軍によるイラク攻撃開始からバグダッド陥落までを多角的にとらえた点が、臨場感があるなどと評価された。

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2004年の日本の報道界を展望する

<編集>

プライバシーなど人権への市民意識の高まりを背景に、裁判員制度導入に伴う報道規制の問題など、市民のメディア批判を利用した報道規制の動きには引き続き警戒が必要だ。

政府は2004年3月までに、裁判員制度導入のための法案を国会に提出する。政府司法制度改革推進本部の制度素案には「偏見報道禁止規定」(報道機関は、事件に関する報道にあたって裁判員等に事件に関する偏見を生ぜしめないように配慮しなければならないとする規定)が含まれているが、自民、公明、民主各党とも否定的で、同規定は法案に盛り込まれない公算が強い。ただ、何らかの条件が付く可能性もある。

新聞協会が批判している「裁判員・元裁判員への接触規制と守秘義務」などについては、自民党案が推進本部検討会座長試案に沿っており、厳しい規制がかけられる恐れが強い。新聞協会は関係機関との協議や制度導入時の取材の在り方などについて議論を重ね、法案提出前後の迅速かつ実効的な対応が求められるだろう。

欧州連合(EU)などによる記者クラブ批判に対しては、クラブの存在意義を重ねて社会にアピールしていく必要がある。新聞協会は、各クラブに02年1月の新聞協会見解に沿った規約改正を促している。

集団的過熱取材対策では、現場レベルの迅速な対応が混乱を回避してきた。事例を積み重ねる中で、より合理的な対応の検討が進むだろう。

イラクでは依然、不安定な治安情勢が続くが、自衛隊のイラク派遣基本計画が決まり、現地取材の重要性は高まる。各社とも、記者の安全確保と報道の使命との狭間で苦悩する日々が続きそうだ。


<販売・広告>

新聞の発行部数は4年連続で減少。新聞協会は若者を中心とした無購読者対策を推進する。4月の「春の新聞週間」は2年目を迎え、全国的なPR活動が展開される。

景気や企業業績の復調を背景に、新聞広告市場は回復の兆しも見られる。アテネ五輪、地上デジタル放送や情報通信市場の拡大による広告出稿に期待感が高まる。データ整備やデジタル化・カラー化といった広告主の要請に応えるため、新聞各社は新聞特性を打ち出した商品開発や提案型の営業活動、他媒体との連携などで、ブランド構築や説明責任を果たす企業広告、消費者の課題を解決する広告手法を模索する。


<技術>

共同通信社が昨年末、国際新聞電気通信評議会(IPTC)が定めたニュース管理標準フォーマット「NewsML」による記事配信を開始した。これに伴い、同社の加盟社はシステムを変更、NewsMLの実用化が進む。

CTPの導入もさらに進む。朝日、読売の京都工場や毎日の福島工場など、今年稼働予定の全国紙の工場はCTPを採用。稼働中の工場も製版機などの更新時に導入を検討するケースが多い。

CTPの導入でフィルム製作工程が不要となり、さらなる省力・省人化とコストダウンが期待できる。描画品質やスピードなど性能の向上も、導入の動きに拍車をかけている。

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