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2004年7月
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ダイオキシン報道――テレビ朝日が農家側と和解、1,000万円支払う

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読売新聞東京本社の「読売新聞郡山工場」が稼働

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-- アセアン記者研修会が終了
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政治報道の在り方を問う――マスコミ倫理懇談会がシンポ、400人参加
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ダイオキシン報道――テレビ朝日が農家側と和解、1,000万円支払う

 テレビ朝日の番組「ニュースステーション」のダイオキシン問題報道で、埼玉県所沢産野菜の安全性への信頼が傷つけられ価格が暴落したなどとして、所沢市の農家らが同局に損害賠償と謝罪放送などを求めていた訴訟は6月16日、差し戻し後の東京高裁で和解が成立した。和解では、テレビ朝日が「放送の説明内容に不適切な部分があったことなどにより、視聴者に誤解を与え、所沢市内の農家に多大な迷惑をかけたこと」について謝罪。和解金として1,000万円を農家らに対し支払った。謝罪放送は和解条項には盛り込まれなかったが、同局は同日の「報道ステーション」で和解内容を報道。誤解を与えたことなどに対し、あらためて「おわび」した。

 問題となったのは1999年2月1日の放送内容。民間調査会社の調査結果をもとに、埼玉県の所沢産野菜から1グラム当たり0.64〜3.80ピコグラムのダイオキシン類が検出されたなどと報じ、主にホウレンソウを例示してダイオキシン類汚染の危険性を説明した。しかしその後、高い値を示したのは「せん茶」であり、同局がこれを知らずに報道していたことが判明。同局は同18日放送の番組内で、所沢のホウレンソウ生産農家などに迷惑をかけたことを謝罪したが農家側提訴。

 2001年5月の1審、02年2月の2審は農家側の訴えを棄却、テレビ朝日側が勝訴した。しかし、昨年10月、最高裁第1小法廷は、テレビ番組による名誉棄損の成否について「放送内容全体から一般の視聴者が受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきだ」との初判断を示した上で、番組が摘示した主要な事実は「真実であることの証明がない」として、1、2審判決を破棄、審理を差し戻していた。

 最高裁では一方で、「一連の報道は公益目的であり、長期的に見れば農家の人々の利益擁護に貢献する面も有する」などと、報道の意義を評価する補足意見も出ていた。

 和解後の記者会見で、テレビ朝日の中井靖治(なかい・やすはる)・常務取締役報道局長は「裁判所から、一連の放送の意義を評価する最高裁補足意見を踏まえて和解勧告があり、最終的には円満に解決すべきだと考えた。迷惑をかけたことは事実で、反省しなければならない。あらためておわびし、この反省を踏まえ、より正確な報道を目指したい」とコメントした。

 最高裁判決に対し、テレビ朝日は「国民の知る権利や報道の自由を制約する可能性を含んでいる」と指摘していたが、この点に関しては、代理人の弁護士が同じ会見の席で、「判決後に出た判例雑誌の解説等にもあるが、冷静に解釈すれば、判決は(テレビ放送の名誉棄損の成否を)『印象だけで判断するものではない』としており、従来の判断とそう変わらない。データを示し警告を発する報道について、すべてのデータを立証すべきとした判断は問題だと思っているが、双方納得した上での解決が大事と考えた」と述べた。

 和解後の農家側の記者会見では、原告団は「謝罪内容が納得できるものであり、自主的に謝罪放送を行うとの約束がなされたと判断し、和解に応じた。放送の違法性と責任を認め謝罪されると理解している。精神的および経済的損害の賠償金として1,000万円頂くことになったが、訴訟は賠償金目的ではなく、全額を農業振興のために寄付したい」などと話した。

 このコメントを受けテレビ朝日は同日、「当社の認識と大きなズレがある。誤解を与えたことなどについてはお詫びしたが、違法性を認めたものではない。また、支払うのは和解金で、違法性を認めた賠償金ではない」とのコメントを発表した。

読売新聞東京本社の新印刷工場「読売新聞郡山工場」が稼働

 読売新聞東京本社の「読売新聞郡山工場」(福島県郡山市)が6月1日、稼働した。また同社は6月3日、「読売新聞茨城西工場」(茨城県茨城町)の建設に着工した。茨城西工場は、来年5月の稼働を目指す。

 郡山工場は、読売の印刷拠点として全国28個所目で、延べ床面積7673平方メートル。印刷体制は40ページ16個面カラー。毎時17万部のタワー型シャフトレス輪転機「CT7000CD」を3セット、サーマル方式のCTP(コンピューター・ツー・プレート)を導入。これまで福島工場(福島市)で印刷していた福島県全域、山形県南部、新潟県北部向けの、読売新聞、福島民友新聞の全発行分、報知新聞、デイリーヨミウリの計約36万部を刷る。福島工場は、閉鎖する。

 茨城西工場は、延べ床面積約7450平方メートル。印刷体制は40ページ16個面カラー。郡山工場と同じ「CT7000CD」を2セット、サーマル方式のCTPも導入する予定。発行エリアは、現在、江東、茨城両工場で印刷している茨城県南部の一部と中央部を予定している。既存の茨城工場を補完する。

 運営は、東京本社とアサガミ(東京都千代田区)が共同出資する「アサガミプレスいばらき」(茨城県茨城町)が行う。



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アセアン記者研修会が終了

 新聞協会が実施する第27回アセアン記者研修計画は1日、29日間の全日程を終了した。6月30日夕刻には、歓送会が開催され、新聞協会国際委員会の吉田信行(よしだ・のぶゆき)委員長(産経新聞東京本社常務取締役)から、7か国14人の参加記者に修了証が授与された。

 代表してあいさつをしたThe National Television(LAOS)News EditorのMs. Malayvieng Vongchadyは、スピーチの途中、感涙に言葉を詰まらせ、ほかの記者たちから声援が飛んだ。

 Binh Dinh Radio & Television Station(VIETNAM) ReporterのMr. Tran Quoc Baoは、徳島市の阿波踊り会館を訪ねた時のことが印象に残ったといい、「ベトナムでは日本と同様に、伝統文化に対する若者の関心が薄れている。阿波踊りの歴史や実演を見るだけでなく、一緒に踊ったことで理解が深まった。両国とも自国の伝統文化に誇りを持ち、保存・発展させるために一層の努力をすべきだ。日本の取り組みをベトナムに紹介したい」と語った。

 個人取材で江戸玩具を取り上げたのは、Lianhe Zaobao(SINGAPORE)のMs. Lee Kuan Fung Executive sub-editor。「東京・浅草で江戸玩具を見て、小さいことと複雑な作りに驚いた。実際に遊ぶこともでき、高い職人技術で作られている」と話した。

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政治報道の在り方を問う――マスコミ倫理懇談会がシンポ、400人参加
 全国の新聞、放送、出版、広告関連などの企業・団体を会員とするマスコミ倫理懇談会全国協議会主催の第19回公開シンポジウム「いま マスコミに問われているもの−−政治とメディア」が6月12日、東京で開かれた。一般参加者345人を含む435人が参加、同シンポジウムとしては過去最高の規模となった。第1部は、日本経済新聞社コラムニストの田勢康弘(たせ・やすひろ)氏が「政治記者30年」と題し講演。第2部は岸井成格(きしい・しげただ)・毎日新聞社役員待遇特別編集委員を司会に、早野透(はやの・とおる)・朝日新聞東京本社編集委員、和田圭(わだ・けい)・フジテレビ解説委員、二木啓孝(ふたつぎ・ひろたか)・日刊現代ニュース編集部長、石沢靖治(いしざわ・やすはる)・学習院女子大教授の計5氏によるパネルディスカッションが行われた。

 同協議会は「マスコミ倫理の向上と言論・表現の自由」を目的として1958年、日本新聞協会や日本民間放送連盟のほか出版、映画、広告などのマスコミ関係10団体と全国10地区のマスコミ倫理懇談会を構成メンバーに結成された。マスコミ各界をつなぐ唯一の組織となっている。

田勢氏は、32年間の政治記者経験から、政治ジャーナリズムの問題点や今後の展望などを講演。長年政治報道を続けてきたが、「小泉政権をどう伝えるかという壁に突き当たった」と話した。これまでの日本の政治報道は、「意思決定の仕組みより政治家の人間関係や選挙に焦点が当てられてきた」と指摘。その上で、「小泉政権となって意思決定の方法が大きく変わったにもかかわらず、メディアの政治を見る目が変わっていない。メディアに政治判断の変化を読み解くだけの力がないため、小泉政権について本当の議論が巻き起こるのを妨げている」と語った。

 若年層の新聞離れについても、「新聞の力が落ちているからだ」と断言。「テレビ報道がまだジャーナリズムと呼べるものではないから、新聞はまだ食いつないでいる。今後、日本語という障壁に守られてきた新聞社が、外資に買収される日も来るだろう。年功序列や終身雇用が崩れても、自立できるだけのジャーナリストを育成する必要がある。個々の力を高めていかなければならない」と話した。

 パネルでは、今日までの十数年間での政治報道の変化について意見交換した。中でも、政治家が盛んにテレビ出演するなど、テレポリティクスとも言われるテレビ政治の進展については、多くの意見が出された。

 二木氏は、「テレビの希有な使い手」として小泉首相を挙げ、「飯島(いいじま)首相秘書官が『普通の人は忙しくて新聞は読まない。大事なのはテレビ、女性誌、スポーツ紙だよ』と話していた。そうしたメディア戦略に乗らざるを得ないメディアが、首相に対して『パフォーマンスだ』などと批判しなければならないところにむなしさがある」と話した。

 早野氏は、テレビと新聞との媒体特性の違いにも触れ、「新聞という記録に残る媒体の価値を分かってくれる人もいる。手元にあって読める新聞をもとに、普通の人がもっと政治に対してアクションを起こしてほしい。小泉・飯島コンビがしているのは、いわばテレビを通じての大衆操作で、それは本当の民主主義ではない」と指摘した。

 和田氏は、テレビ報道のここ十数年での大きな変化の一つに、「ニュース番組の大型化やプライムタイムへの進出により、番組の完成度や視聴率がより求められるようになった」点を指摘。その功罪と今後の課題について、「政治を国民に近づけた一方で、オピニオンリーダーではなくマスを意識しなければならないため、大衆に迎合した形に情報を加工する誘惑に駆られやすい。安易な加工をせずに、いかに多くの視聴者に見てもらえるようにしていくかが課題だ」と述べた。

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