新聞教育文化財団が主催する第9回NIE全国大会が7月29、30の両日、新潟市で開かれた。全国から教育関係者958人、新聞関係者137人の計1,095人が参加、過去最高だった昨年の603人をさらに大きく上回った。「活字文化を大切に 発展させようNIE」を大会スローガンに、初日は、新潟県内の小・中・高校、大学、専門学校によるNIE実践発表のほか、教師、新聞記者などによるパネルディスカッションなどが行われた。2日目は、小・中・高校別の公開授業と分科会のほか、NIE実践教師研修会が開かれた。
開会にあたり、同財団の箱島信一理事長(朝日新聞社代表取締役社長)は、「NIEを体験している生徒の保護者を対象とした調査で、9割の保護者がNIEを評価しているとの結果が出ている。力づけられると同時に、新聞側は解説記事などへの要望を意識して紙面を作る必要がある。今年度は実践校が目標の400校を超えたが、目標達成は新たな飛躍を期す時だ」とあいさつした。招かれた新潟県教育長は、「各学校における新聞活用の優れた実践は、紙面を通じて広く県民に紹介され、学校理解の推進にも役立っている」と活動の取り組みを評価した。
実践発表では、新聞スクラップで社会事象に関心を持たせ、リレートークでコミュニケーションの推進を図った取り組みなどが紹介された。
パネルディスカッションのテーマは「子供が高まるNIE――地域や学校の連携を視野に」。NIEの効果について「新聞を仲立ちに教師と生徒が対話できる。また、一つのテーマについて深く探求する姿勢が養われた」「高度情報化社会のなか、新聞は自分の世界を切り開くためのパートナーになれる可能性がある」などの発言があった。
また、「新聞は親子が人として対等に話し合う仲立ちになるチャンスを持っている」などの評価もあった。
地域参加の観点からは、「教育ボランティアとの連携により、NIEは子どもと地域を媒介し、きずなを作ることができる」と指摘した。
NIE全国大会の2日目は公開授業と分科会が、小・中・高校の校種別にそれぞれ2コマずつ開催された。NIEの実践事例が報告され、NIEにおける「情報の発信」の位置付けや必要性をめぐり、活発な意見交換も行われた。
公開授業のうち、「小学校−II」では、新潟市内の小学校6年生が、自分たちの住む町の歴史と現状を調査し、町の魅力や課題をガイドブックと新聞にまとめたものを発表。毎週水曜朝の「NIEタイム」で、地域に関する新聞記事などを読ませ、問題追求の意識を高めさせたという。指導した教諭は「児童たちは取材を通して、新聞記事の背後に記者の思いがあることを理解できたようだ。その上で、児童自身の思いを記事として発信するために新聞を作った」と話した。
「高等学校−I」では、新潟県内の高校1年生が、「新聞づくりを通して培う情報を整理・発信する力」をテーマに、全国大会初日を取材した内容を新聞にして発表した。
質疑応答では、会場から「大会を通して『発信』がキーワードの一つになっているが、NIEには(新聞作りなどを通して)子どもに情報を発信させることが不可欠なのか。すそ野を広げる上でも、もっと簡単にできるNIEがあっても良いのではないか」との問題提起があり、これをもとに多くの意見が交換された。
「発信は必要だ。ただ、方法はいろいろあり、意見を述べることも発信の一つ。発信を大げさにとらえているのではないか」
「子どもたちが伝えることの難しさを自覚し行動に移した時こそ、本当のNIEの効果が上がる」と発信の重要性を主張する声も上がった。
一方で、「もっと気楽に肩の力を抜いてできるNIEがあってもいいという点は共感できる。立派な実践ばかりではおじけづく部分もある」との意見も出され、実践が深まりを見せる一方で、初心者向けの実践研究も必要ではないかとの課題が出された。
実践教師研修会では、小・中・高校それぞれ2グループずつに分かれ、新潟で発行されている6紙の当日の朝刊を使って総合学習の授業を組み立てた。参加者からは、「研修会は、新聞の学習材としての可能性を実感できる良い場だ。グループで討論することで、指導スタイルを見直す良い機会にもなった」との意見も出され好評だった。