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2004年10月
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2004年度新聞協会賞――編集部門で4件に授賞

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朝日新聞が中国新聞に広島向け発行分の印刷を委託

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-- 共同通信に特別編集委員が誕生
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新聞各紙が「子ども新聞」発行――夏休みに小・中学生が記者体験
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2004年度新聞協会賞――編集部門で4件に授賞

 新聞協会は9月1日、2004年度新聞協会賞の授賞作として編集部門4件を決定した。授賞式は、10月15日に富山市で開催する第57回新聞大会式典で行う。

 新聞協会賞は、新聞界(通信・放送を含む)全体の権威と信用を高める諸活動を促進する目的で1957年に創設された。編集、経営・業務、技術の各部門で顕著な功績のあった新聞協会加盟会員社所属の新聞人に対して贈られる。

 今年度は編集部門に47社78件、技術部門に4社4件、経営・業務部門に3社3件の応募があった。

 
「受賞作と受賞理由」

◇「UFJ、三菱東京と統合へ」の特報

 日本経済新聞社編集局経済部  発田真人(ほった・まさと)

                       矢沢俊樹(やざわ・としき)

 日本経済新聞は、不良債権処理をめぐり抜本的な経営改革を迫られていたUFJホールディングスが、すでに基本合意していたUFJ信託銀行の住友信託銀行への売却を白紙撤回し、三菱東京フィナンシャル・グループに統合を申し入れ、三菱東京も応じる方針であることを2004年7月14日付の朝刊一面トップでいち早く特報した。

 UFJの経営問題は、日本の金融再生の最大の焦点の一つとなっていた。大口融資先査定をめぐる検査忌避の疑いを理由にUFJが刑事告発される可能性もある中、三菱東京との統合で総資産190兆円という世界最大の銀行グループの誕生を伝えたスクープは、日本経済への影響が大きく、世界的な注目も集めた価値あるもので、メガバンクが生き残りに向け自立的に行動するという金融再編の新しい流れを的確にとらえた報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。



◇イラク国連バグダッド事務所爆破テロ〜瞬間映像のスクープ

 日本放送協会(代表)「NHKバグダッド」取材班 ヨーロッパ総局カイロ駐在  別府正一郎(べっぷ・しょういちろう)

 NHKは2003年8月19日、バグダッドの国連事務所が強力な自動車爆弾で大破し、デメロ特別代表ら20人以上が死亡した大惨事の一部始終を克明に撮影し、午後10時(日本時間)からのニュース番組で他に先がけて報道した。

 不発弾処理をめぐる記者会見中に突然、遭遇したにもかかわらず、沈着冷静に爆弾テロの瞬間と現場の混乱を生々しく伝えた映像には有無を言わせぬ迫力があり、イラクの状況がより混迷の度を深めていく流れを世界に伝えた。国連の撤退にもつながる歴史的に重要な場面をとらえた映像は、テレビジャーナリズムの力をいかんなく発揮した報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。



◇北海道警察の裏金疑惑を追及した一連の報道

  北海道新聞社(代表)「道警裏金問題」取材班 編集局報道本部次長 高田昌幸(たかだ・まさゆき)

 北海道新聞は、旭川中央署の捜査費用報償費の不正支出疑惑を契機に、北海道警の全部署で裏金が作られているとの疑惑を、2003年11月25日付朝刊を皮切りに粘り強く報道し、道警が組織的に裏金作りを行っていたことを認めざるを得ない状況にまで追い込んだ。

 数々の特報により道内世論を動かし、読者の圧倒的な支持を背景に内部告発者を次々と生んだこのキャンペーンは、警察取材の基本姿勢を読者に明示するとともに、警察庁に「架空名義領収書の原則禁止」の措置をとらせるなど、警察の不正経理問題摘発を全国に波及させた報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。



◇キャンペーン企画「拉致・北朝鮮」

 新潟日報社(代表)「拉致・北朝鮮問題」取材班 編集局報道部長代理兼編集委員 高橋正秀(たかはし・まさひで)

 新潟日報は、北朝鮮による日本人拉致事件の早期解決を訴え真相究明への道を探るため、横田めぐみさんが新潟市で拉致されて26年目の2003年11月15日から、今年6月28日まで長期にわたるキャンペーンを展開した。

 事件の全体を検証し、拉致被害者の家族、友人や関係者を丹念に取材して、拉致被害者とその家族の苦悩と闘いの日々を克明につづった。拉致問題が膠着(こうちゃく)状態から一部被害者家族の帰国・来日へと大きく進展する中、拉致問題にかかわった人々の全面的な解決を願う気持ちを深く丁寧に報道し、改めて事件の非情さを認識させ、政府の対応を促したキャンペーンとして高く評価され、新聞協会賞に値する。



朝日新聞が中国新聞に広島向け発行分の印刷を委託

 朝日新聞社と中国新聞社は9月2日、朝日新聞の広島県向け発行分の委託・受託印刷に合意し、基本契約を結んだと発表した。朝日新聞社が70万部を超える発行規模の地方紙に委託印刷するのは初めて。両社は、販売正常化や無読層対策など、新聞業界が抱える課題に協力して取り組むことでも合意。来年4月から、広島市内と同市周辺向けの朝日新聞6万部を中国新聞の福山制作センター(広島県福山市)で印刷する。

 朝日は今回の委託について、コストの削減や、輸送事故の解消を理由に挙げている。

 中国側は、「無読層への対応も両社が一致して取り組むだけでなく、協力をして他社に働きかけることにも同意が得られた」と説明している。

 



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共同通信に特別編集委員が誕生

 共同通信社は9月1日、特別編集委員制度を新設し、同日付で春名幹男(はるな・みきお)・論説副委員長が就任した。同制度では、専門分野で高い能力や実績を持つ記者を任命し、管理職のライン業務から離して取材・執筆活動に専念させる。

 特別編集委員は編集局長直属とし、編集委員室から独立した立場で活動するが、取材、執筆に際しては、編集委員室や編集局各部と調整、連携する。常設ではなく、適当な人材がいれば抜てきする。

 同社は制度新設の理由を、「最近の紙面は、解説記事や識者のインタビューが増えており、じっくりと読ませる記事の需要が高まっている。個性的で優れた記事を出稿するために、高い評価を受ける大記者を育てることは時代の要請だ」と説明。「共同の知名度向上にも期待するが、何より記者個人の力量を発揮することが担保される特別編集委員は、記者として理想的な姿だ」と、新制度に期待を寄せた。

 春名特別編集委員は、1996年入社。ニューヨーク、ワシントン両特派員、ワシントン支局長などを歴任した国際記者で、94年度ボーン・上田記念国際記者賞、2004年度日本記者クラブ賞を受賞している。

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新聞各紙が「子ども新聞」発行――夏休みに小・中学生が記者体験

 

 夏休み中に小・中学生が取材、記事を書いた別刷り特集の「子ども新聞」が、今年も9月初旬に複数の新聞社から発行された。

 各紙の子ども新聞はブランケット判8〜14ページ建てで、カラーを多用している。社告などで募集した子ども記者約30〜100人が、現役記者の指導を受け、興味、関心のあるテーマに沿って取材、記事を書いた。沖縄県の琉球新報(発行部数朝夕刊とも約20万部)は米軍普天間基地の移設、大分県の大分合同新聞(発行部数朝夕刊とも約25万部)は介護福祉施設の様子、佐賀県の佐賀新聞(発行部数朝刊約14万部)は地元Jリーグサッカーチームの監督インタビューを取り上げるなど、企画も多様だ。

 佐賀新聞の「子ども佐賀新聞」担当デスクは、発行の狙いを「子どものうちから新聞に親しみ、若者の新聞離れをくい止めるため」と話す。琉球新報は低学年の子どもにも読めるよう、人名を含めすべての漢字にルビを振った。

 子ども記者の対象は、各社小学校5、6生だが、佐賀新聞は4年生から中学校3年生までと幅広い。人数の規模は各社で異なるが、毎年安定しているという。今年、子ども記者が111人に達した青森県の東奥日報(発行部数朝夕刊とも約26万部)の担当者は「総合学習で新聞を活用することが多く、教師、保護者の関心が高い」とみる。

 各紙が共通して取り上げたテーマは市町村合併。県知事や市町村長へのインタビュー、合併協議会の取材などから、合併の理由や手続き、自分の考えを記事にした。鹿児島県の南日本新聞(発行部数朝刊約41万部、夕刊約3万部)の担当者は「市町村合併は子どもの将来にかかわる。関心を持つのはいいことだ」と話す。このほか、さまざまな職業を体験する企画も各紙に見られ、南日本新聞には「子どもたちの職業観を養う効果がある」との読者の評価が寄せられたという。

 完成した紙面は通常の朝刊に折り込んだほか、参加者の学校などに提供。南日本新聞は鹿児島県内の全小学校へ、佐賀新聞は佐賀県内の全小・中学校へ配布した。

 ほとんどの社が今後も発行を続ける予定だ。

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