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2005年5月
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編集協力費を受け取っていた問題で朝日新聞が社長らを処分

* 琉球新報社が新聞博物館を開館
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-- 2005年度日本記者クラブ賞は産経新聞ソウル支局長の黒田氏に授賞
-- 訪日ロシア記者団団長へのインタビュー――「団結して言論の自由守りたい」
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今月の話題>>>
衆参両院の憲法調査会が最終報告書をまとめる
――マスメディアに対する評価については積極、消極の両論併記
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編集協力費を受け取っていた問題で朝日新聞が社長らを処分

 朝日新聞社が発行する雑誌「週刊朝日」のグラビア記事に関し、同誌の編集部が消費者金融会社の「武富士」から、5000万円の編集協力費を受け取っていた問題で、朝日新聞社は19日、「連載終了後に写真集を出版するなどとした約束が、約4年間も実行されていないのは契約不履行に当たる」として武富士に謝罪、法定金利6%を含めた全額を返済することを決めた。また、「協賛社の存在を読者に説明することを怠った」「社内調査をして返金を決めた2003年秋以降、できるだけ早く問題の処理に当たるべきだったのに放置した」ことの責任を問い、箱島信一(はこしま・しんいち)・代表取締役社長(=3か月間、報酬の30%を減額)を含む関係者計6人を処分。再発防止のため、企画記事等に関する協賛のガイドラインも作成した。

 この編集協力費に関し、朝日は2000年6月に武富士と覚書を締結。武富士側は当初、協賛のクレジットを入れるよう求めたが、その後、連載終了後に写真集の出版か写真展の開催をし、武富士の社名を明示することで合意した。朝日はいったん返金を決めたが、「武富士が刑事事件の捜索を受けている最中で返金交渉が難しい」などの判断から、それ以上の対応はとらなかった。

 最近、当初の予定通り、写真集を出版する交渉を再開したが、「『タイアップ企画』である以上、本来は最初から協賛社のクレジットを入れるべきところを入れておらず、約4年間も約束が守られていなかったのは契約不履行に当たる」と判断、返金するとともに、写真集の出版を取りやめた。

 朝日が作成したガイドラインでは、(1)企画記事などに関して協賛金等の提供を受ける場合は役員会審議を受ける(2)役員会は編集の独立性や読者の信頼の確保などを十分に踏まえて審議する(3)役員会の審議を経て承認された場合でも協賛社名を記事に明記する−−と定めた。


琉球新報社が新聞博物館を開館


 沖縄県の地元紙、琉球新報(朝刊、夕刊とも20万5000部発行)が4月20日、那覇市内に「琉球新報新聞博物館」をオープンさせた。同館は、琉球新報社の新社屋と隣接する制作センターの3階にあり、沖縄の新聞の歴史や、古い新聞製作の機器などを紹介する(写真)。

 総面積は約400平方メートル、入館無料で琉球新報社1階の受付から渡り廊下を通って入る。新聞製作の変遷や同社の歴史、編集、印刷、販売など新聞社の仕事をパネルなどで展示。沖縄の新聞の特色を特集した「沖縄戦と新聞」「基地と報道」のコーナーも設けた。

 NIEなどにも役立てるため、学校で新聞作りを体験する「出前記者」などの活動も紹介し、いずれは新聞作り教室も開催したいという。



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2005年度日本記者クラブ賞は産経新聞ソウル支局長の黒田氏に授賞

 日本記者クラブは4月20日、2005年度日本記者クラブ賞を産経新聞社の黒田勝弘(くろだ・かつひろ)・ソウル支局長兼論説委員(写真)に授賞すると発表した。共同通信勤務時を含めて通算22年間ソウルに駐在し、韓国と朝鮮半島を多様な角度から分析している。63歳の今も日々ニュースを追い、発信し続ける、国際記者としての活動が評価された。

 黒田氏は、さまざまな問題を抱える日韓関係に真正面から向き合い、両国民の相互理解のために非難を恐れず、双方に率直な苦言も呈してきた。

 1989年から執筆するコラムでは、韓国は日本と因縁、ゆかりが深いからこそ面白いという立場で、韓国の政治・経済だけでなく文化、趣味、食、映画など幅広い話題を取り上げ、「近くて遠い・遠くて近い」隣人・隣国の全体像に迫っている。

 1964年共同通信社入社。ソウル支局長、外信部次長などを経て89年から産経新聞社ソウル支局長兼論説委員。92年度ボーン・上田記念国際記者賞も受賞している。著書は30冊に及ぶ。

 日本記者クラブ賞は、報道・評論活動などを通じて顕著な業績をあげ、ジャーナリズムの信用と権威を高めたジャーナリストに贈られる。





訪日ロシア記者団団長へのインタビュー――「団結して言論の自由守りたい」

 新聞協会の記者交流計画でロシア人記者6人が4月7日から11日間来日した。新聞協会の機関紙、新聞協会報は一行の団長であるウラジミール・トーリン氏=Mr. Vladimir TORIN President Russian Interregional League of Journalists(ILJ)に、プーチン政権のメディア統制が強まっているとの指摘があるなか、露メディア事情についてインタビューした。

 

 国土が広く多様な地域からなるロシアでは、単一のメディア組織で何十万人もの記者らが情報を共有することは困難だ。全国レベルの「メディア同盟」や「ジャーナリスト同盟」と、ILJのような小規模紙の団体が連携して活動している。

 ILJは2001年に設立され、モスクワ近郊の沿ヴォールガ連邦管区の25の新聞社と若干数の放送局が、社や記者個人単位で加盟している。25紙の発行部数は計約70万部。今回来日した6人は、いずれもILJのメンバーだ。

 われわれ小規模メディアでは、取材で得た情報を書けないといったことはない。国家レベルの政治的な動きにかかわる問題をあまり扱わないということもあるが、「記者倫理」の問題は、日本でもあるだろう。

 ILJの加盟紙は現在、広告集稿、高騰する用紙代への対応、郵便局を介した配達コスト削減などの経営問題に直面している。 これらの問題解決のためにILJとして尽力している。加盟紙間で記者の不足を補うこともある。団結して「言論の自由」を守りたい。

 今回の来日中、読売新聞社、NHK、中国新聞社の3つのメディアを訪ねたが、盤石な経営が表現の自由の基盤になっていることがよく分かった。他の記者も、長い歴史、大量部数を印刷、配達するシステムなどに興味を持ったようだ。また、広島を訪れ「核拡散を防ぐためのジャーナリストの責任を強く感じた」と語る記者もいた。


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今月の話題>>>

衆参両院の憲法調査会が最終報告書をまとめる
――マスメディアに対する評価については積極、消極の両論併記

 

 衆参両院憲法調査会の最終報告書が出そろった。衆議院の調査会は15日、参議院の調査会は同月20日にそれぞれ議決、各議長に提出した。両報告書は、プライバシー権、知る権利、マスメディアへのアクセス権などといった「新しい人権」の憲法への明記に言及。衆院は、この3つの権利を明記すべきとする「多数」意見を紹介し、参院はプライバシー権の明記を「すう勢」意見とした。報道の自由との関連では、両院とも、知る権利に奉仕する意義を評価する意見と併せ、人権・プライバシー侵害などのマスメディアの問題を指摘する意見も紹介。第三者機関の設置などマスメディアの自主規制に対する評価も、積極、消極両論を盛り込んだ。憲法改正手続きに必要な国民投票法案を審議する後継機関の扱いは両院議長らに一任され、今後は、憲法改正と論議とあわせ同法案の扱いに焦点が移る。

 憲法調査会は、憲法について「広範かつ総合的に調査を行うため」、2000年に設けられた。衆議院50人、参議院45人で構成。最終報告書は衆参両院とも、自民、民主、公明三党の賛成多数で議決。共産、社民の両党は反対した。

 報告書では、意見が分かれたもののうち、衆院は、約20人以上が発言した項目について、全体の3分の2以上が一致したものを「多数」意見とした。参院は、自民、民主、公明三党がおおむね一致したものを「すう勢」意見とした。

 「新しい人権」の憲法への明記の是非について、両院ともに賛否両論を併記した上で、個別の権利についてマスメディアとのかかわりに触れた。

 衆院では、

1) 知る権利を「国民が政治的意思決定に関与するという自己統治の価値にとって前提となる」

2) アクセス権を「マスメディアの巨大化および情報の寡占化が進んでいる」

3) プライバシー権を「情報化社会の進展が著しい」

――などの理由で規定すべきとする意見が「多数」だった。

 表現の自由については、参院が「メディアやIT技術の発達に即した規制のあり方については、意見が分かれた」として両論を併記。

 中でも、報道の自由に関連しては、両院とも、国民の知る権利に奉仕する重要な意義を持つとする意見を紹介する一方、「マスメディアの影響力の増大、商業主義に流されがちであること等から、報道される側が権利的にも低位に置かれ、多くの人権侵害がみられる」(衆院)、「報道の行き過ぎによりプライバシーが侵害されるなどの問題面が認識されるようになった」(参院)との意見も紹介した。

 衆院では、表現の自由とプライバシー権が衝突した場合も議論され、「表現の自由がより尊重されることが普遍的な公理」とする意見とともに、「それがマスメディアの報道の自由である場合、弱者としての個人のプライバシー権を守るために一定の配慮が必要」との意見も併記した。

 また、報道の自由と個人のプライバシーの調整に関しては、マスメディアの自主規制について次のような肯定的意見と否定的意見の双方が記載された。

<肯定的意見>

「マスメディアに対する法的な規制は絶対にあってはならず、自主的な判断に委ねなければならない」

「自主規制が当然で、それにはマスメディアが自主的に設置した第三者機関によるチェックが有効だ」

<否定的意見>

「自主規制だけでは足りない」

「行政から独立した第三者機関を設置し、報道の自由の保障と個人のプライバシーの保護の双方を図るべきだ」

「裁判による事後的な調整に当たっては、懲罰的な損害賠償制度を導入すべきだ」

 参院でも、マスメディアの自主規制について、「政府機関に委ねるとどちらか一方に軍配をあげることになる」「自主規制はあまり成功例を聞かない。仲間をかばうための隠れみのと言われないような第三者の介入や公開があれば、もう少し進むのではないか」など、積極、消極評価の両論が盛り込まれた。

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