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2005年7月
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* WAN世界大会ソウルで開催――日本からも7人がスピーチ
* 43人の犠牲から14年――雲仙火砕流の被災地で当時の報道カメラなど見つかる
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*Topics
-- 12歳少女殺害事件から1年――被害者の父親の新聞記者が事件報道について提起
-- 国会内の取材記者もクールビズ
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今月の話題>>>
厚生労働省が医師試験など国家試験合格者の氏名を非公表へ――記者クラブが反対申し入れ
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WAN世界大会ソウルで開催――日本からも7人がスピーチ

 世界新聞協会(WAN)の第58回世界新聞大会・第12回世界編集者フォーラム(WEF)が5月29日から4日間、世界80か国から1300人以上、日本からも47人が参加して韓国・ソウルで開かれた。大会では「改革によって勝機をつかむ 成功への鍵」、フォーラムでは「読者は変わっている。新聞を変えよう」をテーマに、報告と討議が行われ、日本からも箱島信一・朝日新聞社代表取締役社長(現取締役相談役)ら7人がセッションのスピーカーとして登壇した。

 

 「新聞ルネッサンス」と題した大会の第1、2セッションでは、インターネットや携帯電話の普及、若者の新聞離れ、無料紙の増加など、新聞を取り巻く環境の変化に対応した戦略などが報告された。

 第3セッション「紙媒体以後――次世代のメディア」では、箱島氏が登壇。10年前に始めた自社のインターネットサイト「アサヒ・コム」や、携帯電話サイトなど、成功しているネット活用例を報告。無料会員制サービス「アスパラクラブ」についても、「利益は見込んでいないが、新しいユビキタス社会の根幹をなす世代を新聞に呼び戻す試みだ」と述べた。

 第4セッション「メディアの将来展望」では、杉田亮毅(すぎた・りょうき)・日本経済新聞社代表取締役社長が、ユビキタス時代の新聞の役割について報告した。杉田氏は、ネットの影響の拡大は新聞にとって脅威だが、編集者の価値判断が一目で分かる紙の新聞は当面、主要なメディアで在り続けると指摘。速報性、双方向性に優れたネットは紙を補完するものとして役立て、広告や販売促進にも応用できると述べた。また、「オンライン・メディアやブログが浸透し、読者に情報を選び取る判断が迫られる時代だからこそ、客観的なメディアが価値を持つ。これをおろそかにせず、読者のニーズに応えるコンテンツを提供していけば、新聞の将来は明るい」と強調した。

 写真=開会式で挨拶する韓国の盧武鉉大統領

43人の犠牲から14年――雲仙火砕流の被災地で当時の報道カメラなど見つかる

 1991年に大規模火砕流が発生し、16人の報道関係者を含む43人が犠牲となった長崎県島原市の雲仙・普賢岳で6月22日、当時の報道関係者のものとみられる報道機材が見つかった。発見されたのは、望遠レンズ3本とテレビカメラ2台、三脚4本。匿名の電話を受けた同市災害対策課の職員らが、今も警戒区域に指定されている同市南上木場町の小屋の中で確認した。

 発見された機材は焦げた状態。現在までに、400ミリ、800ミリの望遠レンズは、それぞれ毎日新聞社、読売新聞社所有のものと確認され、残る600ミリについては日本経済新聞社から照会があった。三脚付きのカメラはNHK所有と確認されているが、三脚のないソニー製のカメラは損傷が激しく確認が取れていない。ただ、付属レンズの製品番号は福岡放送(福岡市)所有のものと一致。当時のいきさつから、レンズは日本テレビが借りていたものではないかとの話があるという。

 これら機材は今後、所有者に返却されるが、同課では、「例えば現地で何らかの対応をしてほしいということであれば、市で対応を協議することになるだろう」としている。


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12歳少女殺害事件から1年――被害者の父親の新聞記者が事件報道について提起

 2004年6月1日に発生した長崎県佐世保市の小6女児殺害事件から1年を迎え、被害者の父親、御手洗恭二(みたらい・きょうじ)氏(毎日新聞編集委員)が5月31日、手記を公表した。手記では、報じる側から報じられる側になって感じた報道の問題点にも言及。報道によって、問題の掘り起こしや議論の深まりが得られる一方、過熱報道が遺族が混乱状態から抜け出す障害になるという「矛盾」をいかに解消させるかが求められていると指摘。象徴的なものとして「実名」と「顔写真」を例に挙げ、その必要性について問題提起した。

 手記では、事件の背景を探る中で見えてきた問題点を司法や教育へ提言。実名報道については「初報などではやむを得ないが、事件が『定着』してからは意味がない」と明言。顔写真も「入手や掲載には遺族の了解が最低限必要」との考えを示し、「始めから顔写真ありき」との発想ではなく、「そもそも本当に必要かどうかに疑問を持つことから始めるべきだ」と述べた。

 その一方で、「実名か匿名かを判断し責任を負うのは報道自身であり、警察など各機関による匿名はさまざまな危険をはらんでいる」との点も指摘している。

 報道についての項は、「徐々に報道の姿勢も変わっている。それでも、多くの遺族が報道に怒りや憤りを訴えている。このことを常に報道する側は考える必要がある」と結ばれている。




国会内の取材記者もクールビズ

 地球温暖化防止対策等の観点から政府が、夏季の服装をノーネクタイ・ノー上着とするよう提唱している「クールビズ」運動が1日から始まっている。

国会議員の国会内での服装も同日から、申し合わせによりクールビズが可能となった。これに合わせ、報道関係者の国会内での服装も、議員に準じた扱いとなった。ただし、本会議場は、議員ともども上着・タイの着用が必要となる。

 東京では6月24日、今年初めて気温が30度を超える真夏日したが、記者のクールビズ化はそれほど進んでいない様子だ(写真)。その中で、すっかりクールビズの記者は「担当する委員会の委員長がクールビズだから」と理由を説明。

担当する議員がクールビズの推進派か守旧派かが記者の服装にも影響するようだ。


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厚生労働省が医師試験など国家試験合格者の氏名を非公表へ――記者クラブが反対申し入れ


 厚生労働省は6月21日、これまで氏名を公表していた医師、歯科医師、看護師など同省が管轄している10の国家試験について、2005年度から受験地と受験番号のみを公表する方針を決めた。報道機関への公表もこれに合わせるとしている。同省は、4月に施行された行政機関個人情報保護法に抵触する恐れがあるほか、「不合格の事実が知れ渡った」などとする苦情が寄せられており、受験者のプライバシーにも配慮する必要があると説明している。一方、医師などの資格の高い公共性を踏まえ、特定の人の医師免許の有無を人々が確認する手段が必要だとの指摘もあり、同省では近く有識者による検討会を設置し、年内をめどに具体的方策を決める方針。

 これに対し、厚生労働記者会は6月30日、今年度以降予定される合格者発表について、漢字による氏名発表を行うよう同省に対し申し入れた。申し入れ書では、(1)国家資格試験合格者は公共性が高い(2)個人情報保護法では報道目的の個人情報提供は基本的に認められている(3)公表は合格者本人にとって著しい不利益にならない−−としている。

 同記者会は今年3月末に、同省が04年度の発表で、報道機関への漢字による公表をやめて片仮名表記に変更した時点でも、従来通りの情報提供を行うよう申し入れた。今回も、同省から説明を聞くなどして対応を検討、6月29日に開いたクラブ総会で、再度申し入れを行うことを決めた。総会では「発表資料の問題であれば対応できるが、行政判断に対する交渉は一クラブの役割を超えている」などの声も出されており、報道界としての対応を新聞協会などに求めることも併せて決めた。

 官公庁で増えている匿名発表の問題については、新聞協会編集委員会で「個人情報保護法などを理由にした匿名発表に対抗する理論を構築する「原則実名の意義に理解を求める」――との方針のもと議論しており、今秋にも見解をまとめる予定。

 

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