鹿児島市で第10回NIE全国大会――今後について熱のこもった討議
新聞教育文化財団が主催する第10回NIE全国大会が7月28、29の両日、鹿児島市で開かれ、全国から教育関係者668人、新聞関係者136人の計804人が参加した。「広げよう 深めよう NIE〜豊かな学びを求めて〜」をスローガンに、初日は、記念講演やパネルディスカッションなどが行われた。節目の年を迎え、「熱討・NIE これまでの十年、これからの十年」と題したパネルディスカッションでは、NIEによって授業が活性化する、日本の教育の質の向上につながる、など有用性を評価する意見が出された。
開会あいさつに立った同財団の箱島信一(はこしま・しんいち)理事長は、昨年の日本NIE学会の設立と、今年から始まるNIE週間(11月の第1月曜日から)の創設がNIEのさらなる飛躍に結びつくと期待を寄せた。また、教育界と新聞界の協力強化も訴え「新聞提供というハード面だけでなく、共同研究やそれに基づく教材開発などのソフト面でも協力していけば、必ずNIEの新たな地平が開ける」と力説した。
続いて、文部省の田中孝一(たなか・こういち)・初等中等教育局視学官が講演。「NIEは今後の社会の質の決定にかかわる重要な教育活動の一つだ」と述べるとともに、メディアリテラシーの育成、新聞の作られ方や記事の執筆・編集をする学習促進、保護者・地域、学会との連携強化などを提案した。
パネルディスカッションでは、小中高校の教師ら7氏が登壇。NIEが「点にとどまり、線や面に広がっていない」ことが最大の課題だとして、NIEの理論・体系化の必要性を説く意見や、児童・生徒の新聞離れを問題点に挙げ「今後は、読まれる新聞作り、実践校への新聞配置など、新聞社の対応も含めさらに工夫と努力が必要だ」などの提言があった。
また、新聞活用の効果の理論化、NIE導入方法やカリキュラムなどの体系化、新聞記事データベースの自由な利用などが課題・問題点に挙げられた。
会場からは、子どもの発達段階に合わせたNIEの導入計画(カリキュラムデザイン)を新聞社が作り教育界に示す米国の例が出され、日本での検討を望む意見が挙がった。
これに対し、パネリストから「新聞社にそれを求める意見と、教材の利用方法は教師が決めるべきだとする意見がある。そのため、すぐに取り組むとは言えないが、今後の重要な検討課題ではある」との意見があった。
NIEの有用性については、パネリストから市町村合併をテーマにした実践例が紹介され、新聞を活用した授業の実践前後では、生徒の主張や論文の論理性に大きな違いがあったほか、97%の生徒が授業は役に立ったと答え、授業の活性化に寄与したという。
このパネリストは、NIEを教育の質の向上につなげるためには(1)新聞活用自体の趣旨と効果の明確化(2)論文や討論などへの発展(3)同財団、学会、各地の推進組織の連携−−が必要と訴えた。
会場からも、授業後にニュースや授業内容について生徒間、家庭で話題になるなどの効果が得られたという報告や、英語科、特別学校等での導入事例・効果などが多数紹介された。