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2005年8月
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* 中国常駐記者の人数枠が撤廃へ
* 鹿児島市で第10回NIE全国大会――今後について熱のこもった討議
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*Topics
-- ASEAN記者研修の全日程終了
-- 独日メディア賞――NHKのシュレーダー首相インタビューに授ける
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今月の話題>>>
過熱防止に遺族取材経験者を配置――JR脱線事故の取材・報道、マスコミ倫理懇談会で議論
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中国常駐記者の人数枠が撤廃へ

 中国常駐記者枠に関しては、現在、120人に制限されているが、7月中旬、外務省から、「中国政府から人数枠の撤廃に応じるとのことである」との連絡が日本新聞協会に寄せられた。

 外交文書の書き換えが済み次第、人数枠が撤廃される。日本政府では6月中旬、国内調整がつき大使館を通じて記者枠撤廃を申し入れた。中国側からは同月末、人数枠についてのみ撤廃を受け入れる意向が示された。ただし、常駐都市の枠(北京、上海、広州、重慶の四都市)は引き続き維持されるため、新たな都市に常駐を希望する場合は、引き続き外交交渉が必要になる。

鹿児島市で第10回NIE全国大会――今後について熱のこもった討議

 新聞教育文化財団が主催する第10回NIE全国大会が7月28、29の両日、鹿児島市で開かれ、全国から教育関係者668人、新聞関係者136人の計804人が参加した。「広げよう 深めよう NIE〜豊かな学びを求めて〜」をスローガンに、初日は、記念講演やパネルディスカッションなどが行われた。節目の年を迎え、「熱討・NIE これまでの十年、これからの十年」と題したパネルディスカッションでは、NIEによって授業が活性化する、日本の教育の質の向上につながる、など有用性を評価する意見が出された。

 開会あいさつに立った同財団の箱島信一(はこしま・しんいち)理事長は、昨年の日本NIE学会の設立と、今年から始まるNIE週間(11月の第1月曜日から)の創設がNIEのさらなる飛躍に結びつくと期待を寄せた。また、教育界と新聞界の協力強化も訴え「新聞提供というハード面だけでなく、共同研究やそれに基づく教材開発などのソフト面でも協力していけば、必ずNIEの新たな地平が開ける」と力説した。

 続いて、文部省の田中孝一(たなか・こういち)・初等中等教育局視学官が講演。「NIEは今後の社会の質の決定にかかわる重要な教育活動の一つだ」と述べるとともに、メディアリテラシーの育成、新聞の作られ方や記事の執筆・編集をする学習促進、保護者・地域、学会との連携強化などを提案した。

 パネルディスカッションでは、小中高校の教師ら7氏が登壇。NIEが「点にとどまり、線や面に広がっていない」ことが最大の課題だとして、NIEの理論・体系化の必要性を説く意見や、児童・生徒の新聞離れを問題点に挙げ「今後は、読まれる新聞作り、実践校への新聞配置など、新聞社の対応も含めさらに工夫と努力が必要だ」などの提言があった。

 また、新聞活用の効果の理論化、NIE導入方法やカリキュラムなどの体系化、新聞記事データベースの自由な利用などが課題・問題点に挙げられた。

 会場からは、子どもの発達段階に合わせたNIEの導入計画(カリキュラムデザイン)を新聞社が作り教育界に示す米国の例が出され、日本での検討を望む意見が挙がった。

 これに対し、パネリストから「新聞社にそれを求める意見と、教材の利用方法は教師が決めるべきだとする意見がある。そのため、すぐに取り組むとは言えないが、今後の重要な検討課題ではある」との意見があった。

 NIEの有用性については、パネリストから市町村合併をテーマにした実践例が紹介され、新聞を活用した授業の実践前後では、生徒の主張や論文の論理性に大きな違いがあったほか、97%の生徒が授業は役に立ったと答え、授業の活性化に寄与したという。

 このパネリストは、NIEを教育の質の向上につなげるためには(1)新聞活用自体の趣旨と効果の明確化(2)論文や討論などへの発展(3)同財団、学会、各地の推進組織の連携−−が必要と訴えた。

 会場からも、授業後にニュースや授業内容について生徒間、家庭で話題になるなどの効果が得られたという報告や、英語科、特別学校等での導入事例・効果などが多数紹介された。


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ASEAN記者研修の全日程終了

 新聞協会が実施する第28回アセアン記者研修計画は14日、29日間の全日程を終了した。13日夕刻には、東京・内幸町のプレスセンターホールで歓送会が開かれ、国際委員長の宇治敏彦(うじ・としひこ)・中日新聞社常務取締役東京本社代表から、7か国13人の参加記者に修了証が授与された(写真)。

 シンガポールのオン・フイファン上級記者(新明日報)(Ms. Ong Hui Fang Senior Reporter Shin Min Daily News)は同国でも問題になっている少子化に関心を持つ。「シンガポールでは子どもを持つ女性への減税や、保育所等の増設などの政策がとられているが、日本は少子化対策への政府の介入が少ないと感じた。独身女性が増えていると聞くが、シンガポールでも女性の晩婚化が進んでいる。子どもを産み育てる環境整備などを政府がサポートするのは良いことだ」。

 会の終盤には、記者全員で「蛍の光」を日本語と英語で披露する一幕もあった。




独日メディア賞――NHKのシュレーダー首相インタビューに授ける

 ドイツ政府は7月8日、「独日メディア賞」を、NHKが昨年12月に放送した「クローズアップ現代 過去から未来へ−−シュレーダー独首相に聞く」の番組制作スタッフに贈った。同日、ドイツ大使公邸で授与式が行われた。

 同番組は、シュレーダー首相への的を射た質問により、国連安保理改革などのドイツの対外政策や、国内政治、改革政策の現状を具体的に分かりやすく導き出し、ドイツと日本が同様の問題を抱えていることを示したことなどが評価された。

 同賞は、日本の報道機関によるドイツ関連の特に優れた報道を顕彰し、日本でのドイツ報道を促進するため、ドイツ外務省が2002年に創設した。授与は今回が2回目。

 取材に当たったNHKの藪並整司(やぶなみ・せいじ)・報道局番組部チーフプロデューサーは「思いがけない賞をいただき、大変うれしい。日本と同様、第2次大戦後に米国から大規模援助を受けたドイツが、イラク戦争ではなぜ米国に反対したのか、首相に聞きたいと思った。『友好関係にある国だからこそ、言うべき時にははっきり言わねばならない』という言葉が最も印象に残った」という。

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過熱防止に遺族取材経験者を配置――JR脱線事故の取材・報道、マスコミ倫理懇談会で議論
 関西地区マスコミ倫理懇談会と、マスコミ倫理懇談会全国協議会の下部組織である「メディアと法」研究会の合同会議が7月15日、大阪市内で開かれ、新聞・放送・出版など報道関係者、研究者ら53人が参加した。4月に起きた尼崎JR脱線事故をめぐる遺族・被害者報道の在り方について、読売新聞大阪本社の永田広道(ながた・ひろみち)・社会部次長、NHK大阪放送局の出石直(いずいし・ただし)・報道部担当部長、関西学院大の山中茂樹(やなかな・しげき)教授から報告を聞き、意見交換。集団的過熱取材(メディアスクラム)への対応や、市民のプライバシー意識の高まりを受けた形での実名・匿名、顔写真掲載の問題、記者教育の在り方などについて議論した。

 107人の犠牲者が出た今回のJR事故報道では、各社が激しい取材活動を展開した。一時は遺体安置所で50人ほどの記者が遺族1人を取り囲むような状態も見られたが、永田氏は「中堅記者が『取り囲むのをやめよう』と言い始めるなどしたので、ある程度落ち着いた取材ができた。完全なメディアスクラム状態にはならなかった」と報告。一部ではしつこく取材する社もあったが、読売では取材を拒否された場合は深追いしないことを徹底したという。出石氏からは、「NHKでは、現場に専任デスク2人を12時間交代で常駐させ、メディアスクラム防止や指導に当たらせた」との報告があった。

 遺族取材に当たって、読売は、阪神・淡路大震災や池田小事件以降、遺族取材を担当してきた経験者数人をキャップにし、その下に若手記者5、6人を配置。永田氏は、「経験者は、取材現場での遺族への説明や対応、メディアスクラムへの配慮もできる。遺族の気持ちも理解しており、適切な対応を取ってくれた」と話した。NHKも、「遺族取材を担当する取材班には、専従のデスクとして遺族の痛みが分かる人物を配置し、取材記者も経験年数や性格から向き不向きを判断して当たらせた」(出石氏)という。

 今回の報道では、実名・匿名や顔写真の扱いについても問題になった。読売では、若手記者には法務部から文書を配布し、実名や顔写真がなぜ必要かという基本的な知識を持たせた上で、説明できるようにした。また、2ページの遺族特集記事で、同意が得られた計71人の顔写真を掲載。永田氏は、「20年前の日航機墜落では520人全員の顔写真を掲載した。今は遺族の了解を重要視している」と話した。

 当局等の情報開示では、警察が遺族の強い希望で4人を匿名発表したほか、個人情報保護法の影響で発表を拒む病院などもあった。永田氏は、「警察側には隠す気はなく、実名での発表を説得してくれていた」と言及。一方で個人情報保護法をめぐっては、「マスコミへの情報提供が適用除外されていることをほとんどの人が知らず、病院や市役所などでさえ知らない場合もあった。大きい組織には適用除外の説明で通じることもあったが、個人には実名の意義を説明するしかなかった」と苦労を語った。

 出石氏は、こうした事件・事故のたびにマスコミの取材・報道への批判が強まるのは、大量動員と大量報道が原因と指摘。「報道の長期化で日常的な感覚がマヒし、マナーを逸脱する行為も起きるが、こうした問題は記者個人の倫理の問題だ。ジャーナリスト教育は重要だが、企業の社員教育以前の問題だろう。メディア批判は企業や業界ではなく個人に向けられるべきで、何らかの形で個人に対する評価システムができないかと考えている」と話した。

 一方、元朝日新聞記者でもある山中氏は、「記者教育はOJTではだめになっている。常識も含め、きちんと系統立った記者教育をすべきだ」と指摘。「外部への出向といった試みも必要ではないか」と提言した。また、メディア批判の強まりに対しては、「阪神大震災ではヘリの騒音が救助の邪魔になったと言われているが、本当にそうなのか検証が必要だ。問題が起きた際の対症療法だけでなく、きちんと検証し、体系立てた反論を試みる時期に来ているのではないか」と語った。

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