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2006年6月
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共同通信が記者指針を策定

* 記者ら5人が来日――新聞協会の欧州フェローシップ
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今月の話題>>>
クロスメディア―――広告会社が新聞広告とネットとの相乗効果を提案へ

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共同通信が記者指針を策定

 共同通信社は4月1日、編集綱領に基づく「記者活動の指針」を策定した。記者が前向きな姿勢で仕事に臨めるよう、“べからず集”にはしないとの方針の下、メディア環境の変化などを踏まえ、報道機関としての存在意義を再確認した。前文と「基本姿勢」「人権とプライバシー」など6項目で構成。冊子にまとめ、全職員に配布する。

 前文では真実の追求、権力の監視、人権の擁護、自由と独立の確保をうたい、「誠実で謙虚な姿勢と高い職業意識で信頼を獲得する」と宣言している。

 「基本姿勢」では、通信社の基本である「正確で速く」に加え、多メディア時代に求められる「深くて分かりやすい」報道をするとした。また、「事実の重みを忘れず、取材を尽くす」と記し、安易に分かった気になることを戒めた。

 「人権とプライバシー」では、実名報道の原則を確認した上で、状況に応じて匿名を選択するとした。事件・事故の被害者や家族には特段に配慮し、集団的過熱取材を避けつつ、さまざまな取材方法を模索する。

 また、「情報の出所明示と取材源の秘匿」の項で、出所の明示を前面に打ち出した。一方で、真実の情報を得るために取材源を秘匿することは「記者に課せられた最も思い責務の一つ」とした。昨年、匿名情報源の利用をめぐり米国のニューヨーク・タイムズやAP通信などが相次いで示した基準も意識したという。

 「取材手法と情報の取り扱い」では、新しい取材ツールであるインターネットの利用について、「公的機関などの信頼できる情報以外は直接引用しない」と明記した。

 「職務倫理」では、取材対象と適切な距離を保つための注意事項を列挙。「説明責任」では、苦情や問い合わせへの誠実な対応の必要性を説いている。

 指針をまとめた担当者は「現場の記者やデスクが、この指針にどれだけ魂を吹き込むかが大事だ」と話す。「人よりも早く物事を知り、多くの人に伝えるのは記者の醍醐味。その喜びも伝えたかった」との思いが、規律の列挙ではない指針の策定につながった。

 共同では現在、編集局の業務や組織の見直しなど、編集改革についても議論を進めている。

記者ら5人が来日――新聞協会の欧州フェローシップ

 新聞協会と欧州ジャーナリズム・センター(EJC)が行う欧州記者フェローシップ計画に参加する記者5人が来日し5月16日、歓迎レセプションが行われた。同計画は2004年度、オランダ・マーストリヒトに本部のあるEJCを新たな協力団体に選んで再開。欧州記者の来日は3年ぶりになる。

 一行は、都内で日本の政治、文化、経済などのレクチャーを受けた後、広島、京都を訪問、5月27日に離日した。

レセプションでは日本側代表者が「インターネットが普及し外国の状況がよく分かるようになったが、実際に異文化に触れることが大切。新緑の季節、日本を満喫してほしい」とあいさつした。

 ラトビアのディエナ紙のヨーロッパ特派員サニタ・イェムベルガ氏は、「日本は侍や、すしといった印象が強いが、近代日本、特に女性の生活や状況について学びたい」と語った。

5月22日には、東京都内の小学校を訪問、日本の教育事情を視察した。一行は、給食体験のほか、4年生と5年生の5つのクラスのNIE授業を見学(写真)。その後、生徒や校長先生と懇談した。

 ベルギー紙ユーロポリティークのセバスチャン・ファレティ記者は、母国フランスで3年間、高校の歴史の教師をしていた経験があるとのこと。「米中枢同時テロの翌日、すべての仏紙を生徒に見せ、一つの事件を各紙どのような視点でとらえているか、比較検討させたことがある。自分の視点を生徒に持たせたかった」と新聞学習の意義を語った。興味のある記事を切り抜き、見出しを考えまとめる作業などを行っていた5年生のクラスの見学では、「日本の教育は受け身になりがちだが、生徒は自主的に楽しく取り組んでいるようだ」と感想を述べた。

 サッカーワールドカップドイツ大会の開催が近づき、生徒からは、ドイチュランド・ラジオ編集者のバルバラ・シュミッドマッターン氏に、サッカーやドイツの料理について質問する場面もあり、交流を深めた。

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朝日新聞阪神支局襲撃事件を忘れない
             ――新局舎に資料室、一般にも公開

 


朝日新聞阪神支局の新局舎で4月13日から、3階の「朝日新聞襲撃事件資料室」が一般公開されている(写真)。新局舎は事件の現場となった旧舎と同じ場所に建つ。既に約500人の市民が訪れた。6月1日には同事件の犠牲者となった故・小尻知博(こじり・ともひろ)記者の両親が来室した。

「事件を忘れない」との思いから、外観は旧舎のイメージを残す茶色のれんが作り。資料室には、小尻記者の遺影を含む約20点の写真パネルのほか、事件当時の支局のソファや犯行声明文、発砲で飛び散った散弾粒などを展示している。

松浦和夫(まつうら・かずお)支局長は「当時と比べ、今、日本の社会状況は、果たしてどれだけ変わっただろうか。事件は過去の話ではなく、現在も続いている問題だ」と話す。2階の編集室に飾られた小尻記者の遺影には、今も毎日、支局の誰かが線香をあげる。

資料室の隣りの会議室スペースも一般に開放し、ギャラリーとしての利用も受け付ける。地域の人が気軽に立ち寄る「開かれた支局」とするという。

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クロスメディア―――広告会社が新聞広告とネットとの相乗効果を提案へ


 インターネットの進展やメディアの多様化、消費者の購買行動の変化などに伴い、企業の広告活動では、さまざまなメディアを組み合わせることで相乗(シナジー)効果を上げる「クロスメディア」という手法が広がっている。検索連動型広告が定着するなか、ネットと既存媒体を組み合わせて、いかにシナジー効果を生み出すかも模索されている。広告会社では、従来の「メディアミックス」との違いを探りながら研究・試行が進む。新聞社はこのトレンドに、新聞や新聞社の強みをどう提案していけるのだろうか。

 電通発表の「2005年の日本の広告費」では、TV、新聞、ラジオ、雑誌のマスコミ4媒体がいずれも前年割れするなか、インターネット広告費は約55%増と高い伸びを示した。中でも、同広告費のうち検索連動型広告費が約2割を占めるなど、サーチエンジンマーケティング(SEM)は、費用対効果を重視する広告主にとって重要な広告手法の一つとして定着した。一方で、新聞広告費のシェアは17・4%まで減少している。

 他方、ブログなどネット社会の進展で、消費者の購買プロセスも変化し、従来、マス媒体中心の広告展開の中で認識されてきた「注意→興味→欲求→記憶→購入」というモデルでは、広告効果を説明することが難しくなってきているとの指摘もある。

 広告会社レベルではこれまで、消費者への情報到達を指標に、各媒体を組み合わせることでリーチ(到達)を補完する「メディアミックス」型の広告提案が試みられてきた。それと「クロスメディア」とはどう違うのだろうか。

 ある広告会社の担当者は「従来のメディアミックスの狙いは、各媒体の量的価値を最適化させることであった。これに対し、クロスメディアの狙いは質的価値を最適化させることだ」と話す。リーチの最大化ではなく、消費者に到達した後の態度変容を目的に、メディアの最適な組み合わせが模索されており、各媒体には、より質的な効果の説明が求められてきているという。

 広告会社のクロスメディアをめぐる対応はさまざまだ。クロスメディアプロモーション局を設置し、各媒体局から集まった社員がその効果を提案し、消費者の購入意向を最大化させるための組み合わせを考える広告会社もある。また、新聞社のデジタル関連事業をサポートする部門を設け、新聞社のサイトビジネス強化や広告商品開発、本紙やその他保有メディアとのクロスメディア商品の開発・セールスなどを行う広告会社もある。

 

 クロスメディアへの対応では、広告会社での研究が進む一方、新聞各社も積極的に新しい広告展開に取り組んでいる。事例が一定の効果を上げ始め、広告主側の要求もさらに高まるなか、新聞社には、いかに本紙と自社サイト、グループ各社の放送・雑誌など関連メディアを組み合わせてセールスしていくかも求められる。

 朝日新聞社は、広告局の各営業部とデジタルメディア部が共同でクロスメディアに取り組んでいる。デジタルメディア部に各営業部担当を置き、営業担当者らと話し合うほか、必要があれば、電子電波メディア本部の担当者も入って検討する。

 毎日新聞社は、紙面連動型広告を、広告、デジタルメディア両局が連携して営業する。昨年から広告局に置いたメディア戦略担当部長が両局のつなぎ役を務める。

 産経新聞社は、新聞広告とネットを一体化させる広告システム「Nepper(ネッパー=Net & Paper)」を立ち上げた。紙面広告や産経ウェブにURL等を掲載してネッパーサイトに誘導、紙面に載せきれない情報を補足し、さらには広告主サイトまで誘導する。通常のバナー広告より、広告主サイトへ移動するコンバージョン率が高く、商品・サービスに興味を持った“中身の濃い”顧客を誘導できて、広告主にも無駄がないという。

 日本経済新聞社は、広告局内に「ネット委員会」を発足させ、電子メディア局のインターネット営業部も参加する形でクロスメディアについて検討してきた。今年3月からは、広告局業務推進部内にクロスメディアグループを設け、新しいクロスメディア型広告の商品開発・販売を、同委員会と連動して行う体制を構築した。電子メディア局内でも、インターネット営業部を窓口に、新聞やグループ各社の放送・雑誌との連携を図っている。

 読売新聞社は、広告局メディア推進部で本紙以外の媒体の広告営業を行うとともに、本紙とのクロスメディア企画も推進してきた。3月には、広告局横断のプロジェクト「クロスメディア会議」を発足。情報交流を密にし、局内の随所でクロスメディア企画への対応を取りやすくした。一方、メディア戦略局には常設のプロジェクト「広告推進委員会」があるほか、ホームページやモバイルの運営部門に置いた広告担当者が、広告局と連絡を密にして対応している。

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