新聞協会はこのほど、「再雇用制度導入状況調査」の結果をまとめた。それによると、調査に回答した新聞・通信・放送社のうち51社が、高年齢者雇用安定法の改正に対応し、何らかの形で再雇用制度を導入している。今後の課題には、「再雇用時の職場の開拓・確保」を挙げる回答が最も多かった。
日本の新聞・通信社の多くは60歳定年制を実施しているが高齢化社会の到来に向け、国家的にさまざまな施策が実施されている。その一つがこの4月に施行された改正高年齢者雇用安定法。事業主に「従業員を65歳まで雇用する」措置を段階的に行うことを義務づけた。
同法の施行によって事業主は?定年年齢の引き上げ?定年制の廃止?継続雇用制度の導入――のいずれかを06年度から導入し、厚生年金の支給開始年齢の引き上げに合わせて2013年までに、段階的に雇用延長の年齢を引き上げなければならない。各事業主の実情に応じて全員を雇用しなくてもよい場合があり得ることを認めているが、その場合、労使協定で具体的、客観的な採用基準を定めなくてはならない。
今回の調査はこうした法改正を受け、各社の取り組み状況を把握するために実施された。調査に56社が6月1日時点で回答した。内訳は新聞・通信が55社、放送が1社。
改正法への対応では「新たに再雇用制度を導入」した社は30社、「既にある再雇用制度を改定」した社は20社だった。これに加え、既存の制度を改定するとともに新制度を設置したのが1社となっている。
再雇用者の選考基準については、「原則は希望者全員だが、選考基準を設けた」と回答したのが27社、「選考基準を設け、基準に合致した人のみ雇用する」が23社。一方、「選考基準は設けない」と回答したのは3社で、ほとんどの社が何らかの選考基準を設けている。
主な基準は、「過去数年間(多くの社は2〜3年)の評価結果の平均」「産業医による健康診査で就労可能な健康状態であること」「一定の職能資格、考課、職位」などとなっている。
雇用・契約形態は「嘱託社員」が最も多い。契約期間は各社とも基本的に「1年間」で、更新回数は「年金支給開始年齢まで」との回答が最多だった。退職前の有給休暇は、「すべて繰り越した」と回答した社が21社で多数。再雇用期間中の有給休暇が「ある」とした社が30社で、「20日間」が最も多い。嘱託社員には「賞与がある」と回答した社も多い。
業務内容は、本人の希望と職場とのマッチング結果によるため「人によって異なる」と回答したのが最も多く、21社にのぼった。
「職場は退職前と変えていない」と回答したのは16社。「経験を生かすため」「即戦力として活用」「後輩の育成に力を発揮してほしい」などの回答が多い。
「退職前と変えている」との回答は5社にとどまった。「同じ職場からニーズがない」「残業があまりない職場、定型的業務に従事させている」などが理由に挙げられた。
再雇用者用の職域・職場については、11社が「新たに開拓した」と回答。具体的には「夜勤のない印刷職場を新設」「従来の派遣、アルバイトを中止し、OBを採用する職場を増やした」などとなっている。
今後の課題としては、職場の確保、職域の開拓を挙げる社が最も多かった。「希望職種と職場のミスマッチの解消」「2009年以降は、再雇用期間が5年と義務づけられるため、中長期的に職域、職場の確保を図らなければならない」といった点が指摘されている。