阪神大震災から12年、「1.17」体験警鐘テーマに特集――神戸・在大阪の各紙
6,400人以上が亡くなった阪神・淡路大震災の発生から1月17日で、12年を迎えた。地元の神戸新聞や在阪各紙は同日付朝刊で多彩な関連記事・特集を大きく紙面を割いて展開。震災体験の継承をテーマに、被災者の心に今も残る震災の傷跡や復興に向けた町の取り組みを伝えるとともに、防災の重要性や課題を訴えた。
神戸新聞は、過去の出来事を現在の視点で伝える「神戸クロニクル」で震災を取り上げた。震災当日の夕刊をイメージした一個面の号外ふうの紙面には「兵庫県南部で大地震」「死者・不明千人超す」「阪神高速が倒壊」などの見出しが並ぶ。
神戸クロニクルでは、過去に1938年の阪神大水害や1945年の神戸空襲、終戦などを取り上げており、今回で5回目となるが、担当者は「一番作りたかったのは震災の紙面。発生当時、伝えるべきことを伝えきれなかった悔しさを思い出しながら編集した」と話す。神戸新聞社は本社社屋が被災し、わずか4ページの夕刊しか発行できなかった当時を振り返った。だが、今でも取材先では「あの薄っぺらな新聞に励まされた」との声を聞くという。
取材を担当した記者の多くは当時、入社していなかった。取材を指揮したデスクは「若い記者にとって、12年前に取材した記者の思いを実感しつつ、被災者の声を聞く機会になればよいと思った」と話している。取材の過程では、12年たった今でも当時を思い出したくないという理由から、取材に応じてくれない被災者もいたという。
神戸新聞はまた、8ページの別刷り特集を合わせて発行した。全国の活断層の中でも地震発生確率が高いとされている兵庫県西部の断層帯地震の被害想定や、災害で負傷した際の応急処置などを紹介した。
現在の小学6年生が今春卒業すると、小学校の児童は全員、「震災後生まれの世代」となる。朝日新聞大阪版は「12歳」をキーワードに紙面を展開した。「12歳の君へ」と題した4ページの特集では、震災を知らない世代への体験、教訓の継承に加え、防災教育に焦点を当てた。社会面では、震災の痛手の中で育った震災後世代への心のケアの必要性を訴えた。
「12歳」は当初、震災から12年が経過し、どう体験や教訓を語り継ぐかという課題を浮かび上がらせるためのキーワードだった。しかし、担当者は「まだ12年しか経っていないとの印象を強くした」という。「震災後世代にとっても震災は生々しく身近な体験であり、決して風化は始まっていない」と話す。
12歳に焦点を当てた朝日新聞大阪版とは対照的に、読売新聞大阪版は2ページの減災特集で団塊世代を取り上げた。被災した自治体で復興の先頭に立ったベテラン職員が退職していくなか、被災体験や防災ノウハウを継承していくための取り組みを紹介している。
毎日新聞大阪版は、震災直後に連載した「希望新聞」のタイトルで、地域福祉などの活動を通じて「共助」を支える人々を3ページにわたり特集。震災のモニュメントがある271地点を記した「震災モニュメントマップ」も見開きで掲載した。