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2007年7月
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新聞協会会長に北村正任氏を再任

* 「ありのままの重み再確認」――ジャーナリズムシンポジウム
* 地域住民との連携強化を――広島市で販売フォーラム
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「知る権利に奉仕」に立ち返れ――マスコミ倫理懇談会シンポジウム
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新聞協会会長に北村正任氏を再任

 社団法人日本新聞協会は、6月20日、東京・内幸町のプレスセンターホールで第86回定例会員総会を開き、任期満了に伴い役員(理事・監事)を改選した。また、会長、副会長を次のとおり選任した。

△会長
北村正任=きたむら・まさとうKitamura Masato(再任・毎日新聞社代表取締役社長)

△副会長
小坂健介=こさか・けんすけKosaka Kensuke(再任・信濃毎日新聞社代表取締役社長)

多田昭重=ただ・あきしげTada Akishige(新任・西日本新聞社代表取締役社長)

 北村会長は「新聞業界が各面に渡り困難な時期に、重ねて会長の任を引き受ける責任の重さを感じている。私ができるのは、会員各社の影響力を1つの方向に向け、束となって対抗していくための束の縄の役だ。誠心誠意、職務にまい進したい」とあいさつした。

 小坂副会長は「非力ではあるが、北村会長を補佐していきたい」、多田副会長は「大変な時期であることは会員各社の皆さんがよくご存じだと思う。北村会長の下で精一杯務めたい」とそれぞれ、あいさつした。

「ありのままの重み再確認」――ジャーナリズムシンポジウム


 朝日新聞社は6月22日、東京・有楽町の有楽町朝日ホールで、シンポジウム「事件や戦争をどう伝えるか――現場の目撃者として」を開催した。読者ら約450人が聴講した。1999年に米コロラド州コロンバイン高校で起きた銃乱射事件や、イラク戦争関連の報道でピュリツァー賞を受賞したロッキーマウンテン・ニューズ社の社長らも登壇。人権や国益とのかかわりの中で、報道が担うべき役割を議論した。

 基調講演したロッキーマウンテン社のジョン・テンプル(John Temple)社長は、報道写真の在り方について人間性が重要であるが、「目撃者としての責任を果たすためには、人の心を乱すものであっても、重要な写真は掲載するという勇気が必要だ」と訴えた。

 同紙は銃乱射事件の報道で、殺害され道路に横たわる少年の写真を掲載。遺族から強い抗議を受けた。しかし話し合いを重ね、相互理解を築いたという。

 写真記者のトッド・ハイスラー(Todd Heisler)氏(現ニューヨーク・タイムズ紙)らによるイラク戦争の戦死者、遺族の姿を描いた企画も紹介。戦死した夫の棺に寄り添う女性の写真などについて「記者と遺族の深い共感が実現させた」と話した。

 これらの事例を基にテンプル氏は「編集者はありのままの世界を伝えることが大事だ」と指摘。報道において、人々の生き方など「物語」を表現することの意義を説いた。

 パネルディスカッションではまず「人権とジャーナリズム」をテーマに討議した(写真)。

 早大の藤田博司(ふじた・ひろし)客員教授が司会を務め、テンプル、ハイスラーの両氏と、リチャード・ロイド・パリー(Richard Lloyd Parry)(英タイムズ・アジアエディター)、やなぎみわ(現代美術作家)、外岡秀俊(そとおか・ひでとし)(朝日新聞社ゼネラルエディター兼東京本社編集局長)の各氏が登壇。取材・報道を通じ公共の利益と人権、プライバシーの保護をどう調整すべきかをめぐり、意見を交換した。

 ハイスラー氏は積極的な報道の重要性を強調した上で「1人の人間として、現場では撮影対象に静かに接することを心がけている」と述べた。駆け出しのころ「まず人間であり、次に職業人であり、最後に写真記者であるべきだ」と教えられたことを信条にしていると語った。外岡氏は「記事に具体性がなければ、事実は伝わらない。被害者のさまざまな思いを踏まえ、悩みながら新聞を作っていくしかない」と話した。

 一方、やなぎ氏は「インターネットの普及により人々の情報に対する欲望が拡大していくなか、新聞のモラルはますます重要になっている」と指摘した。

パネルの第2部は石破茂(いしば・しげる)元防衛庁長官を交え、「国益とジャーナリズム」をテーマにイラク戦争の報道などを議論した。

 石破氏は、ハイスラー氏の写真報道を踏まえ「つらく悲しいことも国民に見せ、判断の正しさを問うことが、政府の責任なのかもしれない」と発言。「メディアの批判に耐えられない国益は、その名に値しないのではないか」と述べた。

 パリー氏は「ジャーナリストは、国益でなく読者の利益を考えなければならない」と強調した。


地域住民との連携強化を――広島市で販売フォーラム

 中国新聞社と中国新聞中国会連合会主催(後援・新聞協会販売委員会)の「全国新聞フォーラム2007広島」が6月13日、広島市の広島国際会議場で開かれた。「協調と競争 明日をひらく」をメーンテーマに全国の新聞販売関係者ら1300人が参加した。新聞社の販売担当役員らによるパネルディスカッションでは、各社が協調して無購読者対策を進める必要性が指摘された。この後、3つの分科会に続き、総括の全体会合で「地域住民とのパートナーシップを強め、系統を超えて新聞ファンづくりと将来の読者づくりに積極的に取り組もう」などと大会アピールを採択した。

 開会式で、中国新聞社の川本一之(かわもと・かずゆき)代表取締役社長が歓迎のあいさつ、新聞協会の北村正任会長(きたむら・まさとう)(毎日新聞社代表取締役社長)が祝辞を述べたのに続いて、杏林大学(Kyorin University)の金田一秀穂(きんだいち・ひでほ)教授が「心地よい日本語」をテーマに、記念講演を行った。

 パネルディスカッションの後、3つの分科会に分かれ、各地の販売所長らが事例を紹介した。

 分科会「新たな販売手法」では、熊本日日新聞社の販売センター所長が、企業などの新人研修に講師を派遣し、新社会人に新聞を活用する方法などを教える活動などについて述べた。読売新聞社の読売センター所長は、購読ポイント制を導入した独自の会員組織を紹介。産地直送や季節に応じたサービスなどを展開し「顧客感動を高めたい」と語り、従来の新聞販売から脱却し、付加価値の高い読者サービスに取り組む必要性を指摘した。

 このほか、分科会「販売所の経営改革」では、高齢者を雇用するため電動自転車を導入した事例や、10月に発足する郵便事業会社がチラシのポスティングに進出することに、業界が協調して対応する重要性が語られた。

 分科会「販売所の地域貢献」では、宮崎県指定の天然記念物「アオウミガメ」を守るための産卵地の海岸清掃活動や、前日の朝刊がポストに残っているのを確認した後、購読者が登録した連絡先に無料で連絡する異常事態支援サービスなどの報告があった。

 全国新聞フォーラムは1993年から隔年で開かれ、今回が8回目。次回は2009年、秋田市で開催される。


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毎日新聞が「ニュース検定」――時事問題、どれだけ分かる?

 毎日新聞社がNPO法人日本ニュース時事能力検定協会と行う「ニュース時事能力検定試験」受検の受け付けが6月1日、始まった。第1回試験は9月2日、全国20会場で行われる。新聞離れが指摘される若者らに、社会への関心を高めてもらうのが狙い。「時事力を評価、認定する初の検定試験」として、入試や就職、生涯学習への活用を期待する。

 試験の略称はニュース検定(N検)。難易度別に1〜5級(1級が最も難しい)に分け、マークシート方式で時事問題を出題。1級は8割、2〜5級は7割の得点で合格となり、認定証が発行される。

 NPO法人の検定協会は昨年10月、時事問題への社会的な関心を高めるため設立された。養老孟司(ようろう・たけし)東大名誉教授が名誉会長、毎日新聞東京本社の岸井成格(きしい・しげただ)特別編集委員が理事長に就任。ジャーナリストや大学教授ら8人が理事を務める。

 毎日新聞社では、新規事業開発室が担当。編集局、論説室なども、問題作りに協力する。運営は今年4月に設立された毎日教育総合研究所に委託した。

 新規事業開発室長は「若者に社会やニュースへの関心を持ってもらい、(新聞読者の)裾野を広げるのが目的」と強調する。河北や信濃毎日、琉球など、地元の地方紙と共催する受検地もある。

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「知る権利に奉仕」に立ち返れ――マスコミ倫理懇談会シンポジウム
 マスコミ倫理懇談会全国協議会は16日、東京・内幸町のプレスセンターホールで「取り戻せるか!国民の信頼――メディアの責任と規制の行方」をテーマに、第22回公開シンポジウムを開催した。青山学院大学の清水英夫(しみず・ひでお)名誉教授の基調講演に続き、ジャーナリストらによるパネルディスカッションを開催。番組捏造や記事・社説の盗用などの問題が起き、言論・表現の自由に対する公権力の介入も懸念されるなか、国民の信頼を取り戻す道筋などを話し合った。

 清水氏は「メディアの責任と自律――強まるメディア批判にどう応えるか」と題して講演した。「メディア関係者が取るべき道は、開放性、反権力、謙虚さの三つ」と強調。「これら三つは一つの軸で結ばれている。メディアが本当に市民の側に立ち、知る権利に奉仕するという原点に返ることを意味する」と述べた。

 続くパネルでは、田中早苗(たなか・さなえ)弁護士が司会を務め、神谷紀一郎(かみや・きいちろう)(東京新聞編集委員兼紙面審査委員)、村木良彦(むらき・よしひこ)(メディア・プロデューサー)、森達也(もり・たつや)(映画監督、作家)、吉岡忍(よしおか・しのぶ)(ノンフィクション作家)の四氏が登壇した。
 新聞界では今年に入り、記事や社説の盗用事件が相次いだ。神谷氏は「第一は記者の規範の問題だが、パソコンやインターネットの悪影響もあるのではないか」と指摘した。また、当局による情報管理の強化や、社会からの圧力の高まりなど、新聞記者を取り巻く厳しい環境を述べた上で、現場で市民、読者と接することが「信頼を取り戻す道だ」と説いた。
 村木氏は、関西テレビの番組捏造問題で外部調査委員会の委員を務めた。調査の結果を振り返り「分かりやすさやおもしろさが重視され、番組作りで核となるべきところに人力、時間、経費がかけられていなかった」と問題を総括した。
 同じく捏造問題の外部調査委員だった吉岡氏は「各社の取材方法を受けたが『あるある大事典』と同じ方法だった。最初に結論があり、それに合わせた都合の良いコメントを集めることが取材になっている」と指摘。「マスメディア全体の問題となる大きな落とし穴があると感じた」と述べた。
 森氏は「テレビニュースも新聞記事も主観的な表現であり、中立公正ではありえない」と発言。メディア関係者に「自分にとっての真実を伝えることが大事」と訴え、表現者としての自覚を促した。

 また虚偽放送の禁止や再発防止計画の提出規定を盛り込む放送法改正案を、田中氏は「規制強化により、日本は世界でも恥ずかしい国になる」と批判した。

ト売りも検討中だという。ネットでの受注も10月をめどに始める予定。

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