入賞作品 テーマ:「家族」
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[略号凡例]
CD:クリエーティブディレクション・AD:アートディレクション・C:コピー ・D:デザイン ・I
:イラスト
最優秀賞
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「一家団欒」
中島史朗さん(なかしま・しろう、フリーランス) |
優秀賞
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「親子」
代表・加藤寛之さん
(かとう・ひろゆき、電通)
AD:加藤寛之さん
C:宮田知明さん |
デザイン賞
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「少し、離れてみる。」
代表・石井克哉さん
(いしい・かつや、博報堂)
C:石井克哉さん
D:渡辺数人さん
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コピー賞
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「しあわせな子供」
代表・石井良さん
(いしい・りょう、リクルートメディアコミュニケーションズ)
C:石井良さん
D:山本祐司さん |
学生賞
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「最近、家族の会話が減った気がする。」
栗原唯央さん(くりはら・いお、多摩美術大学)
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審査講評 -クリエーター6氏と新聞協会広告委員会正副委員長による審査会-
審査委員長
眞木 準氏
今年は「家族」をテーマに、意見広告の形を取ったり社会問題を含んだ視点の作品を求めた。最優秀賞の「一家団欒」は「いっかだんらん」が「いつかだんらん」に変わっていく様に、実は深いメッセージが込められ、家族が崩壊している現代の世相を反映している。「親子」はデザインが優れアート性もある。
審査委員
児島 令子氏
ただほのぼのしたり、共感したりという表現より、メッセージ性のある作品を選ぶことに注力したが、そういうのが最後まで残らなかったのが残念だ。そんな中で引き付けられたのが「しあわせな子供」だ。体外受精、不妊治療という表に現れにくいテーマを、ひとりの女性のモノローグというとことん「個」にこだわって表現している。そのコピーには、作りごとの広告なのに作りごとではない、生な人間の思いがあふれていて力を感じた。
審査委員
佐藤 可士和氏
「家族」に対する思いや意識、在り方は人によってさまざまな形があり、難しいテーマだ。その中で「一家団欒」のようにストレートに当たり前のメッセージを正面から発信したのがよかった。「親子」は「家族ってこういう意味だったのかな」と、もう1回考えさせるビジュアルの力がある。「少し、離れてみる。」はドットを利用した凝ったデザインがいい。「最近、家族の…」は言えない本音をごみ袋に入れて捨ててしまうというアイデアをうまく表現できている。コピーとの絡みもとてもよく、学生にしてはレベルの高い作品。
審査委員
副田 高行氏
「一家団欒」は「つ」は同サイズのまま、ほかの文字が小さくなっていき、「いっかだんらん」が最後には「いつかだんらん」になる。驚くほどシンプルで、現代の家族をシニカルにユーモラスに表現している。デザイン賞の「少し、離れてみる。」は、離れてみるとドットの家族が浮かび上がってくるという面白いアイデアだった。ただ今回、個人的には家族についてもう少しメッセージ性のある作品が欲しかった。
審査委員
服部 一成氏
複雑に多様化した「家族」というテーマに対して、何らかの新しい問題提起やメッセージを発信する場合、個々の立場を越えた普遍性と、深い洞察に支えられた説得力が必要だ。新しい視点を示そうと試みた作品のいくつかが賞候補に残ったが、十分な普遍性や説得力があるとは言えなかった。一方、「一家団欒」や「親子」の主張は一見平凡だが、そこはかとないユーモアのうちに「そういえば、家族の時間って…」と読者に改めて考えさせる表現力が優れていた。
審査委員
前田 知巳氏
「家族」というテーマは、一見きわめて簡単そうで、実は新鮮な発想が持ち込みづらい厄介なテーマだったのかもしれない。だからこそ、今回、コピー賞はなし?という状況の中、受賞作「しあわせな子供」があったことで、選ぶ立場としてはホッとした気がする。このコピーには納得がいかない、という意見もあった。しかし、ある主張をぶつけ、読む人に立ち止まってもらい、考えてもらう、という作用をもたらした時点で、新聞広告としての役割は、下手に無難に美しく作られた表現よりもよほど果たされているのではないだろうかと私は思う。