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2003年5月
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新聞協会などが北朝鮮拉致被害者の取材で家族会などと懇談
−−自由な取材を要望

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日中記者交流計画で記者10人が来日

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-- 新聞協会主催の第43回在日外国報道関係者招待レセプションに140人が参加
-- 中国新聞田城氏が記者クラブ賞を受賞
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今月の話題>>>
インターネット事業の確立に向け有料化を模索――新聞各社
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新聞協会などが北朝鮮拉致被害者の取材で家族会などと懇談
−−自由な取材を要望

昨年10月15日、北朝鮮から帰国した拉致被害者5人に対する取材は、依然代表取材を中心とした異常な事態が続いている。このため、自由な取材の実現を求めている新聞協会は5月1日、民間放送連盟とともに「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」および「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」と懇談した。

拉致被害者の取材については、在京社会部長会はじめ拉致被害者の出身地である新潟県、福井県の報道各社で、拉致被害者の帰国に際し、集団的過熱取材の発生を防ぐため「節度ある取材・報道」を申し合わせ、現在まで記者会見などは代表取材で対応している。一方で、代表取材では「肝心な点が聞けない」といった意見や、「拉致被害者への対応が取材規制の前例として利用される可能性がある」といった指摘もあり、直接取材の実現が課題となっている。

懇談を申し入れた際、新聞協会と民放連は、「拉致被害者が置かれた『微妙な立場』は十分に承知している。貴会の思いを謙虚に受け止め、『誤解』の壁を乗り越えて、『報道の在り方』を考えたい」と表明(2002年11月号参照)。

さらに(1)帰国当初の状況とは大きく変わり、被害者らは日本の暮らしになじみ、状況をきちんと理解するようになった、(2)北朝鮮に家族を残していることなどは理解するが、直接取材できないといった異常な取材制限が続いている、(3)現在の取材の在り方では、どのメディアも同じ内容の画一的な報道になり、報道機関に課せられた使命達成の支障となっている、(4)本人の真意が誤って伝えられる可能性も危ぐされる――などとあらためてと申し入れた。

これに対し家族会側は、懇談の中で(1)節度ある取材が維持されていることに感謝しており、メディアとは今後も良好な関係を続けていきたい、(2)個別取材は受けていないが記者会見での自由な質疑は既に実現している――などと強調した。 その上で、「帰国から半年が過ぎ、余裕が出てきたように見えるかも知れないが、5人はいまだに警察の事情聴取を受けていない。それは家族を北朝鮮に残しているからだ。家族が帰国して状況が大きく変わるまでは、『節度ある取材』を続けるよう、再度お願いする」「5人は国家的犯罪の被害者であるといった視点を忘れないでほしい」と説明した。

これに対し報道側は「5人は公人ではないが、5人の北朝鮮での暮らしぶりや、北朝鮮はどのような国なのかは国民の大きな関心事である。ぜひ肉声で語ってほしい。世論、政府を動かし問題解決につなげるためにも必要だ」と要望した。

拉致被害者への取材が制約される中で、3月中旬、拉致被害者の1人である曽我ひとみさんの日程を新潟県真野町が、偽って発表するといった事例も発生した。帰国以来、曽我さんの日程は曽我さんが在住する真野町の役場が本人に確認の上、報道機関に発表していたが、「終日、自宅で過ごす」と発表していた期間中、東京で肺ガンの摘出手術を受けていたことが判明したものだ。これに対し新潟県内の報道機関で構成する新潟県報道責任者会議は、「報道機関に対する完全な裏切り行為」だと抗議、真野町および極秘扱いを要求した政府とも新潟県責任者会議に謝罪したが、自由な取材が行われないことの危険性が改めて認識される事例となった。


日中記者交流計画で記者10人が来日

歓迎レセプションであいさつする一行
新聞協会と中華全国新聞工作者協会が実施する第21回日中記者交流計画で4月6日から15日間の日程で中国側記者団9人が来日した。

今回の主なテーマは「日本の中小企業制度」。団員の一人、中国財経報(China Financial & Economic News)の姚中利(Yao Zhong-li)・副総編集(Vice Chief Editor)は日本の印象を「仕事に対する態度が非常にまじめで効率のいい国」と述べ、「低迷する日本経済だけでなく、歴史や文化にも興味があるので、いろいろ見て回りたい」と話した。

一行は、読売新聞東京本社の論説委員から日本の経済問題についてブリーフィングを受けたほか、中小企業庁や財務省、東京証券取引所などを訪問した。

その後、浜松、京都を経て岡山に移動し、岡山市の山陽新聞社を訪ね幹部と懇談した。この後、愛媛、大阪での視察を経て帰国した。

胡錦濤国家主席(党総書記)体制になった中国では、「報道改革」が加速している。政府が国内メディアに対して政府幹部の動向や会議の内容を過剰に報道せず、国民の関心に応じた内容を取り上げるよう求める方針を発表した。

これについて団長の汪発楷(Wang Fa Kai)・中国質量報(China Quality Daily)常務副総編集(Standing Vice Chief Editor)は、報道改革の目的を(1)生活情報(2)社会の動き(3)国民の考え――の3点を一般の人々に広く知らせることと説明。「改革は報道だけでなく、中国全体の発展につながっていく。多くの人に喜んでもらえるよう、各紙とも、記事内容の工夫や写真、グラフの活用など編集面での取り組みを以前から進めている」などと話していた。

Participants are:

Wang Fakai(China Quality Daily / Standing Vice Chief Editor)
Tan Shengxi(China Audit News / President Chief Editor)
Wang Peiwen(Dazhong News Group / General Manager)
Shao Shihong(China Taxation News / Vice General Manager)
Yao Zhongli(China Financial & Economic News / Vice Chief Editor)
Wen Guifen(Journalists' Association of Qinghai Province / Standing Deputy Presiden)
Wu Yu(Economic Daily / Deputy Director of News Editing Center)
Cai Zhonghuang(Guangdong Television / Deputy Director of News Center)
Yu Shanlan(China Industry & Commerce News / Journalist of Front-page Department)
Yao Genlin(International Liaison department / All-China Journalists Association)


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新聞協会主催の第43回在日外国報道関係者招待レセプションに140人が参加

新聞協会が内外の報道関係者が懇親を深めることを目的に毎年開いている在日外国報道関係者招待レセプションが4月23日、東京のプレスセンタービル10階のレストラン・アラスカで開催された。

43回目を数える今年のレセプションは、米英主導のイラク戦争が終結し、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)がアジアを中心に感染拡大する時期に開催された。こうした重大な出来事が続発していることを受け、歓迎のあいさつにたった坂上守男・日本新聞協会副会長(京都新聞社会長)は「的確な情報を広く読者に伝える報道への期待が普段にも増して高まっている」と述べた。

1961年に第1回のレセプションが開催された当時、在日特派員は日本人を含め85社250人程度だったが、フォーリン・プレスセンターによると40年を経た現在は、262社942人となっている。このことに坂上副会長は「海外報道機関の日本離れが言われているが、日本は依然としてアジアの報道センターとして重要な役割を担っている」と言及した。

今年の出席者総数は、ブラジル、中国、フランス、インドネシア、韓国、米国などの報道機関の特派員や、フランス、オランダ、フィリピン、タイ、スリランカの各国大使を含む在日大使館関係者、日本新聞協会の理事会メンバーを含め約150人だった。


中国新聞田城氏が記者クラブ賞を受賞

日本記者クラブは21日、2003年度の日本記者クラブ賞を中国新聞社の田城明(たしろ・あきら)・特別編集委員(写真)に授賞すると発表した。「核」を人類史の問題としてとらえた企画・連載記事の集積などが評価された。

田城氏は1972年、発送部員として入社。旺盛な勉学意欲と英語力が認められ、81年、33歳で編集局報道部に配属された。その後一貫して「被爆体験」の持つ意味や「核時代の実相」を国際的視野で追究している。

「核」の始まりから今日までを、核超大国・米国をはじめとする各国関係者への真しで丹念な取材を通して再構築。「21世紀 核時代 負の遺産」などを企画・連載した。

2000年4月からの連載「知られざるヒバクシャ 劣化ウラン弾の実態」では、いち早く劣化ウラン弾の製造・使用禁止の必要性を訴え注目された。

87年に米・タフツ大学フレッチャー・スクール大学院修士課程修了(国際関係論)。96年編集委員、2月から現職。95年度にはボーン・上田記念国際記者賞や、2002年石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞なども受賞した。

日本記者クラブ賞は、報道・評論活動などを通じて顕著な業績をあげ、ジャーナリズムの信用と権威を高めたジャーナリストに与えられる。

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インターネット事業の確立に向け有料化を模索――新聞各社

新聞協会メディア開発委員会がこのほどまとめた2003年「新聞・通信社の電子電波メディア現況調査」によると、回答があった80社中79社がウェブサイトを開設、情報提供サービスを行っている。ほとんどが無料。

動画コンテンツを提供しているのは17社。前回調査以降、6社増えた。また、「携帯電話等向け情報提供」を行っているのは53社で、この3年間で倍以上に増えている。料金代行徴収がビジネスモデルとして確立しているほか、若者層へ情報提供する強力なツールとして利用されているからだ。

調査は1998年以降、毎年1月1日現在で実施、各社の電子・電波メディアに対する考え方や参入状況等を尋ねている。

調査を通じて各社はインターネット事業をビジネスとして確立させるため、コンテンツの有料化やサイトの会員制度の導入などを模索していることが明らかになった。

こうしたなか、朝日新聞社は3月3日からホームページ内の会員制のサイト「クラブA&A」の有料化に踏み切った。現在の登録会員は2000人。今後魅力あるコンテンツを提供し、会員数の増加を目指す。

背景にはインターネット事業における広告収入の減少もある。広告費統計によると、日本におけるインターネット広告は拡大傾向にあるものの、今後新聞社が広告収入だけでサイトを運営することは難しくコンテンツの有料化が必要との見方が強い。

朝日の「クラブA&A」は1999年10月、無料でメールアドレスを取得できるサービスとしてスタートし、広告収入を柱に運営してきた。会員数は23万人に達していた。

会員に有料化を告知した結果、開始時点2000人が有料会員に移行。旧会員のうち9万人が残った。この9万人は8月末まで部分的に一部のサービスを利用できる。

新規の有料サービスは、月額500円。基本料金でニュースダイジェストなどを閲覧できる。このほか、追加料金でネット連載小説も購読できる。

朝日新聞の担当者は「利用者は突然の有料化に戸惑ったと思うが、有料にふさわしいコンテンツの在り方を検討し、充実を図りたい」と話している。

有料化に踏み切った理由については「広告不況で赤字が続いており収益体質の改善のためだ」と説明。「現段階の有料会員は2000人でビジネスとしては厳しいが、2003年度の目標会員数は1万人。旧会員への無料サービスが終わる9月以降が勝負だ」と話す。

その他の全国紙は「会員制サービスそのものを有料化する段階ではない」とするものの、「オプションとして有料化できるコンテンツを探したい」「インターネットでは無料で速報するという基本路線は維持したい。有料コンテンツは、読者の情報ニーズをつかみながら検討し年内をめどに始めたい」と話すなど、いずれはニュース自体を有料化したいという。

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