公正取引委員会は11月2日、新聞業をはじめ5種類の特殊指定について、廃止を含めた見直し作業に入る方針を発表した。それぞれの特殊指定に「現在でも必要性があるか、一般指定では対応できないか」などの観点から検討を加え、関係業界の意見等を聞きながら、今年度内をめどに結論を出すとの意向を表明した。
ただし、卸・小売業者などに対し、その新聞や著作物の再販売価格を維持させることができる著作物再販制度については「現時点で見直す考えはない」としている。新聞協会は同日、「新聞の再販制度と特殊指定は一対のものだ」との立場から、公取委の見直しの動きに強く抗議し、「現行規定の維持を強く求める」とする声明を発表した。
特殊指定とは、不公正な取引方法を禁じる独占禁止法の規定に基づき、公取委が特定の業種における具体的な禁止事項を告示したもの。新聞業に関する特殊指定を含めて7種類ある。公取委は、このうち新聞業、教科書業、海運業、食品かん詰め・びん詰め業、オープン懸賞の5種類の特殊指定を見直したい考えだ。
新聞業の特殊指定について、公取委は1998年にも見直しを行うと表明。新聞協会は公取委と交渉を重ねた。
その結果、公取委は99年に特殊指定を改正したものの、従来の特殊指定の趣旨は継続し、新聞社および新聞販売店による「差別定価」「定価割引」と、新聞社が販売店に注文部数より多く新聞を供給する「押し紙」行為は不公正な取引方法として残った。また、新聞社による異なる定価の設定は、ただし書きで「学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであること、その他正当かつ合理的な理由をもってする」場合に限り認めることとした。一方、再販制度そのものの存続は、その2年後の2001年に決定した。
今回、公取委は、新聞業の特殊指定に関して「前回の見直しは再販制度の議論と並行して進めており、その結論が出ていないなか、できる範囲のことを行った。今回は、そもそもの特殊指定が必要かどうかから議論する」と表明している。
新聞協会は同日の声明で、「新聞業の特殊指定は、差別定価や定価割引などを禁止することにより、その流通システムを守り、維持するために定められたものだ。新聞の再販制度と特殊指定は一対のものであり、特殊指定の見直しは、その内容によっては、再販制度を骨抜きにする。その結果、経営体力の劣る新聞販売店は撤退を強いられ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かう」「官民あげて活字文化の振興に取り組む法制度(文字・活字文化振興法)がつくられた矢先に、時代の要請に逆行するような動きには強く抗議せざるを得ない。われわれは、現行規定の維持を強く求める」と主張している。
1 日刊新聞の発行業者が、直接であると間接であるとを問わず、地域または相手方により、異なる定価を付し、または定価を割り引いて新聞を販売すること。ただし、学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであること、その他正当かつ合理的な理由をもってする場合は、この限りでない。
2 新聞を戸別配達の方法により販売する販売業者が、直接であると間接であるとを問わず、地域または相手方により、定価を割り引いて新聞を販売すること。
3 発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。
(1) 販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(新聞社が注文部数以上に販売店に新聞<商品>を押しつける行為)。
(2) 販売業者に発行業者が指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること(新聞社が販売店に指示して注文部数自体を増やすようにさせる行為)。