NSK ニュースブレチン オンライン
2005年12月
-------------------------------------------------------------------
* 法務省は、司法試験合格者の氏名を実名で公表
* 犯罪被害者について「匿名発表の妥当性、個別に判断」――新聞協会反対も犯罪被害者等基本計画策定へ
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
*Topics
-- 日本記者クラブがサイトを開設
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
今月の話題>>>
公正取引委員会が新聞業への特殊な規定について見直し発表――新聞協会は現行規定の維持を強く求める
-------------------------------------------------------------------


法務省は司法試験合格者の氏名を実名で公表

 厚生労働省は今年度から、個人情報保護やプライバシーへの配慮を理由に、医師、歯科医師などの国家試験合格者を実名で発表しないことを決めているが、その一方で、法務省は11月9日、司法試験の合格者を従来通り、省令に基づき実名で公表した。実名で発表する理由について、法務省は「法曹は公益性が高い」としている。

 司法試験合格者の氏名は、試験の受験手続きと運用を定めた法務省令で、官報への公告が定められている。司法試験に関する事項を審議する司法試験委員会でも、発表時の実名・匿名をめぐって意見はなかった。

 法務省は「法曹は国民の権利・義務を取り扱う公益性の高い職業だ。その資格試験合格者については、プライバシーに公益性が勝る」と説明している。


関連記事はこちら


犯罪被害者について「匿名発表の妥当性、個別に判断」――新聞協会反対も犯罪被害者等基本計画策定へ

 政府の犯罪被害者等基本計画検討会は11月21日、犯罪被害者等基本計画案を取りまとめた。新聞協会などが削除等を求めた警察による被害者の実名、匿名発表に関する項目は、「個別具体的な案件ごとに適切な発表となるよう配慮していく」となり、ほぼ骨子案通りとなった。今後は、全省庁に意見照会を行った上で、12月に正式に計画案を決定、年内に閣議決定される見通しだ。

 新聞協会は10月21日、政府がまとめた「犯罪被害者等基本計画案骨子」について、「被害者は実名で発表されなければならない」などとして、当該項目の削除を求める意見書を、内閣府あてに提出していた。

 意見書では、実名発表の必要性について「事件や事故を正確に、客観的に取材、検証し、報道するために実名は欠かせない」「事件・事故報道は、広く社会全体でその悲しみや怒りを共有し、社会が一体となって背景にある原因を考え、再発防止、根絶に向け取り組むために必要だ」などと主張。

 その上で、「発表された実名をそのまま報道するかは全く別の問題だ」として、実名・匿名の判断を報道機関の自主・自律的な対応に任せるよう求めるとともに、報道に起因する諸問題を、結果の責任を含め、報道機関は今後も真正面から引き受けると決意表明している。

 また、「事件・事故の発表は、一方にマスコミという当事者があり、行政だけでは完結しない。被害者対策と国民の知る権利という異なる公益にまたがる問題でもある」と指摘。行政の犯罪被害者対策として一方的に取り上げるのではなく、これまで議論を重ねてきた警察との協議の場などに議論を委ねるよう求めた。
 さらに新聞協会は11月21日、検討会の審議終了を受け、同施策推進会議あてにあらためて同項目の削除を求める意見書を提出していた。

意見書では、実名発表の必要性を再度強調。実名は、広く社会全体で悲しみや怒りを共有し、社会が一体となって背景を探り、再発防止に取り組むための報道の核をなす情報であり、「正確で客観的な取材、検証、報道に欠かせない」と指摘した。その上で、「実名、匿名発表について『個別案件ごとに適切な発表内容となるよう(警察が)配慮していく』との表現では、警察の恣(し)意的運用を招き、国民の知る権利を脅かすことになりかねない」と表明していた。

 検討会の議論で、被害者側から近年のメディア・スクラムなどについて厳しい指摘があったことに関連しては、「被害者やその関係者への配慮がなされるべきは言うまでもない」とし、「それは必ずしも民主主義の根幹をなす自由な取材、報道と対立しない。われわれはそう信じて、被害者らへの取材や実名報道について配慮してきたし、今後も最大限の努力をしたい」などと表明していた。


Topics.......Topics.......Topics........

日本記者クラブがサイトを開設

 日本記者クラブは11月1日、新たにウェブサイトを立ち上げた(http://www.jnpc.or.jp)。クラブの組織と活動を詳しく紹介するとともに、「資料室」のコーナーで、過去の重要な記者会見、研究会の記録を公開。今後も順次、「研究会の文字アーカイブ」を充実させていく。

 会員だけでなく、加盟社の一線記者、フリーのジャーナリスト、一般の人たちにも、クラブの財産を有効に活用してもらいたいと期待する。

 「談話室」のコーナーでは、会員の会報への寄稿、エッセーを紹介している。「各社の社内報などで、若手記者の人たちに紹介いただけるとありがたい」という。

英文の紹介セクションはこちらから→http://www.jnpc.or.jp/section4/outline.html

<< back


今月の話題>>>

公正取引委員会が新聞業への特殊な規定について見直し発表――新聞協会は現行規定の維持を強く求める
 公正取引委員会は11月2日、新聞業をはじめ5種類の特殊指定について、廃止を含めた見直し作業に入る方針を発表した。それぞれの特殊指定に「現在でも必要性があるか、一般指定では対応できないか」などの観点から検討を加え、関係業界の意見等を聞きながら、今年度内をめどに結論を出すとの意向を表明した。

 ただし、卸・小売業者などに対し、その新聞や著作物の再販売価格を維持させることができる著作物再販制度については「現時点で見直す考えはない」としている。新聞協会は同日、「新聞の再販制度と特殊指定は一対のものだ」との立場から、公取委の見直しの動きに強く抗議し、「現行規定の維持を強く求める」とする声明を発表した。

 特殊指定とは、不公正な取引方法を禁じる独占禁止法の規定に基づき、公取委が特定の業種における具体的な禁止事項を告示したもの。新聞業に関する特殊指定を含めて7種類ある。公取委は、このうち新聞業、教科書業、海運業、食品かん詰め・びん詰め業、オープン懸賞の5種類の特殊指定を見直したい考えだ。

 新聞業の特殊指定について、公取委は1998年にも見直しを行うと表明。新聞協会は公取委と交渉を重ねた。

 その結果、公取委は99年に特殊指定を改正したものの、従来の特殊指定の趣旨は継続し、新聞社および新聞販売店による「差別定価」「定価割引」と、新聞社が販売店に注文部数より多く新聞を供給する「押し紙」行為は不公正な取引方法として残った。また、新聞社による異なる定価の設定は、ただし書きで「学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであること、その他正当かつ合理的な理由をもってする」場合に限り認めることとした。一方、再販制度そのものの存続は、その2年後の2001年に決定した。

 今回、公取委は、新聞業の特殊指定に関して「前回の見直しは再販制度の議論と並行して進めており、その結論が出ていないなか、できる範囲のことを行った。今回は、そもそもの特殊指定が必要かどうかから議論する」と表明している。

 新聞協会は同日の声明で、「新聞業の特殊指定は、差別定価や定価割引などを禁止することにより、その流通システムを守り、維持するために定められたものだ。新聞の再販制度と特殊指定は一対のものであり、特殊指定の見直しは、その内容によっては、再販制度を骨抜きにする。その結果、経営体力の劣る新聞販売店は撤退を強いられ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かう」「官民あげて活字文化の振興に取り組む法制度(文字・活字文化振興法)がつくられた矢先に、時代の要請に逆行するような動きには強く抗議せざるを得ない。われわれは、現行規定の維持を強く求める」と主張している。

新聞業における特定の不公正な取引方法=禁止行為(1999年7月21日)

1 日刊新聞の発行業者が、直接であると間接であるとを問わず、地域または相手方により、異なる定価を付し、または定価を割り引いて新聞を販売すること。ただし、学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであること、その他正当かつ合理的な理由をもってする場合は、この限りでない。

2 新聞を戸別配達の方法により販売する販売業者が、直接であると間接であるとを問わず、地域または相手方により、定価を割り引いて新聞を販売すること。

3 発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。

(1) 販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(新聞社が注文部数以上に販売店に新聞<商品>を押しつける行為)。

(2) 販売業者に発行業者が指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること(新聞社が販売店に指示して注文部数自体を増やすようにさせる行為)。

<< back

Nihon Shinbun Kyokai
The Japan Newspaper Publishers & Editors Association
Nippon Press Center Bldg., 2-2-1 Uchisaiwai-cho, Chiyoda-ku,
Tokyo100-8543, Japan

bulletin@pressnet.or.jp

Copyright 2005 Nihon Shinbun Kyokai
All right reserved