2013年度 新聞広告クリエーティブコンテスト

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2013年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」結果発表

 日本新聞協会広告委員会が今年度「しあわせ」をテーマに実施した「新聞広告クリエーティブコンテスト」には、全国から1,069作品の応募がありました。たくさんのご応募をいただきありがとうございました。本コンテストは、若いクリエーターの皆さんに、新聞広告の可能性を広げるような独創的で斬新な作品を作っていただくために実施しています。クリエーターの副田高行、一倉宏、児島令子、佐野研二郎、服部一成、前田知巳の各氏と新聞協会広告委員会の正副委員長の10人による審査会を経て、最優秀賞をはじめとする5賞5作品を決定しました。桃太郎に父親を殺されたという鬼の子どもを描いた最優秀賞の「めでたし、めでたし?」は、審査委員から「鬼の子どもにとってはそうなんだ、と読み手の心に小石を投げるような作品だ」「“逆からの視点”で幸せとは何かを考えさせる発想が抜きんでている」「新聞協会が選ぶ広告コンテストのグランプリにふさわしい、エッジの効いた作品だ」と高く評価されました。

 入賞作品は11月から日本新聞博物館(横浜市中区)で展示します。

 また審査会では、「入選から漏れた作品もぜひ多くの人に見てもらいたい」との提案があり、今年も最終審査に残った12作品を入賞作品とともに「新聞広告の日」に合わせてプレスセンタービル1階(千代田区内幸町)で展示するとともに、本サイト上で紹介することとしました(→こちらからご覧いただけます)。

入賞作品 テーマ:「しあわせ」

※画像をクリックすると拡大されます。
[略号凡例]
CD:クリエーティブディレクション AD:アートディレクション 
C:コピー D:デザイン Ph:フォト I:イラスト
最優秀賞
受賞者「めでたし、めでたし?」
山﨑博司さん(博報堂)
C=

山﨑博司さん(写真左)

AD・D・I= 小畑茜さん(博報堂/写真右)


○コメント
ある人にとってしあわせと感じることでも、別の人からみればそう思えないことがあります。反対の立場に立ってみたら。ちょっと長いスパンで考えてみたら。別の時代だったら。どの視点でその対象を捉えるかによって、しあわせは変わるものだと考えました。そこで、みんなが知っている有名な物語を元に、当たり前に使われる「めでたし、めでたし。」が、異なる視点から見ればそう言えないのでは?ということを表現しました。広告を見た人が一度立ち止まり、自分の中にさまざまな視点を持つことの大切さを考えるきっかけになればと思っています。
「しあわせってなんだろう?」と二人で考えた経験が、次に生かされるよう頑張っていきたいと思います。


○プロフィル
1983年生まれ。岐阜県出身。早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻修了。博報堂入社。 
コピーライター。

優秀賞
受賞者「いつも通り」
田中龍一さん(読売広告社)

○コメント
いつも通りって本当は、奇跡です。

病気をしたり、ケガをしたり、
何か不幸なことがあると、
何気なく過ごしている毎日が
いかに幸せなことかに気づかされます。

幸せって、探しに行かなくても、
すでに持っているもんなんですね。

そんないつも通りを、
「いつも通り」で表現してみました。

アドバイスをくださった方々、
ありがとうございました。


○プロフィル
1982年生まれ。東京都出身。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。読売広告社クリエイティブ局所属。アートディレクター。

コピー賞
受賞者「冷蔵庫にプリンをいれよう」

遠藤誠之さん(アルファ・シリウス)

CD・C= 遠藤誠之さん(写真左)
AD・D= 長濱孝太さん(アルファ・シリウス/写真右)

 

○コメント
「しあわせ」を感じるものごとは人それぞれ。誰もが幸せを感じるメッセージなんてなかなかないな、と悩んでいたところ、経理さんが近寄ってきて「冷蔵庫にアイス入ってるから、あとで食べて」とひとこと。
その時、「できた」と思いました。

「冷蔵庫にアイスが入ってる」という事実は、幸せをあげる側、幸せをもらう側、双方向の幸せを象徴的に表現している。家に帰るのが楽しみになり、家で待つのが楽しみになる。そんな気がしました。

だから、今回の受賞は、経理さんのおかげです。僕は「アイス」を「プリン」に変えただけです。本当にありがとうございました。


○プロフィル
1979年生まれ。北海道函館市出身。コピーライター。

デザイン賞
受賞者「しあわせはワンサイズです。」
松下由希子さん(東京芸術大学)

 

○コメント
「しあわせ」と思う瞬間は、生きててよかったと思える最高の瞬間だと思います。かたちは人それぞれたくさんあるけど、比べるものではないと思ったことが、この作品をつくるきっかけになりました。
「みんな大きさは同じ。だから比べなくても大丈夫」という安心感を与えられるような広告にしたいと思い、2匹のくまちゃんにその思いを託しました。
何ものにも代え難い自分のしあわせを見つめ直すきっかけになれば幸いです。
このような素晴らしい賞をいただき、ありがとうございました。


○プロフィル
1992年生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科在学中。

学生賞
受賞者「21位」
三宅宏明さん(山口大学大学院/写真左)
  共同制作者=油井美奈子さん(山口大学大学院/写真右)

 

○コメント
経済協力開発機構(OECD)が発表している、日本の幸福度ランキングは36か国中21位です。
オリンピックやワールドカップは、連日メディアに取り上げられ、1位を目指し、国をあげて応援します。また日本では日常生活において、血液型や星座、都道府県などさまざまなものに順位をつけて比較をすることが多くあります。
それなのに、日本の「しあわせ」について関心が低いというのは、とても寂しいことなのではないでしょうか。この広告を見て「21位」という順位を改めて認識していただき、日本のしあわせについて考え、みんなで1位を目指して盛り上がることができれば素敵だなと思います。
この度は素晴らしい賞に選んでいただき、ありがとうございました。

○プロフィル

1989年生まれ。山口大学大学院理工学研究科在学中。

【審査の最終段階まで残った12作品(順不同)】

「手をつなごう」代表=大岩千夏さん▽「それぞれのしあわせ」代表=岡優一さん▽「幸せになるために不幸を作ってはいけない」木村友美さん▽「シアワセは大きさではないのです。」代表=黒岩美桜さん▽「80年の私小説」代表=笹尾進さん▽「家族の柱」代表=鈴木亜美さん▽「HAPPY END」田極弘規さん▽「日本人のコーフク度」=田中秀吾さん▽「ほめよう」佐藤智明さん▽「世界一幸せな国」代表=永野広志さん▽「選択肢」代表=藤田ヒロさん▽「しあわせな人生」代表=山倉研志さん
(→作品はこちらからご覧いただけます

2013年度新聞広告クリエーティブコンテスト審査会風景

審査講評
副田 高行 審査委員長

何が「しあわせ」かは個々人で違い、言葉や形にするのが難しいテーマだったと思います。桃太郎に父親を殺された鬼の子どもを描いた最優秀賞の作品は、目にした誰しもがふと立ち止まって考えるという点で、新聞協会の広告コンテストのグランプリにふさわしい、エッジの効いた作品でした。昨今、問題提起ができている広告が少ないように感じています。読者に新聞広告の価値を再認識してもらう意味でも、このコンテストには既存の価値観に一石を投じる役割を期待したいです。

一倉 宏 審査委員

形だけの幸せを考えた作品が多かった中、選考のふるいにかけてみればこれだけの優れた作品が残りました。最優秀賞は、ただ面白いとか、ただ上手にまとまっているというのではなく、とがっているところがよいですね。優秀賞の「いつも通り」は、見上げる青空と街の構図に福島を連想せざるを得ず、強烈なメッセージ性を感じます。コピー賞は、幸せが日常の中にあることを言い換えたコピーワークがなかなかのものでした。

児島 令子 審査委員

今の若い人たちは、生まれた時から低成長経済の中で生きていますが、日常の身近なことに幸せを見つけていると感じました。それを新聞広告に仕立てる際に、表現の仕方や視点のもち方を工夫した、シンプルながら強い作品を選びました。最優秀賞は読み手の心に小石を投げるような作品でした。「いつも通り」の道路標識のバックにある青空は、3.11前の日本に戻りたい想いと戻ることの難しさへの暗示とも読める点がジャーナリスティックで評価しました。

佐野 研二郎 審査委員

今回初めて審査に加わりましたが、「しあわせ」からすぐに思いつくもの、例えば四つ葉のクローバーとか赤ちゃんといったステレオタイプのイメージではなく、どう見るか、という“視点の発見”が重要だったのではないかと感じています。逆説的な立ち位置から見えるものとして、最優秀賞の「鬼の子ども」が象徴的でした。選外ですが、作者本人の病から見える風景をドキュメンタリー的に仕上げている作品があり、新聞ならではの表現として深く印象に残りました。

服部 一成 審査委員

幸せという言葉を発するのは、どこか気恥ずかしさを伴うものです。この気恥ずかしい「幸せ」をどう捉え、どう表現すれば読者に共感してもらえるのか、敏感に考えて作ったものが最後に残ったと思います。等身大の幸せをテーマにしたものがほとんどの中、選外の作品で、社会的視野の広さを感じさせるものや、幸せの捉え方がユニークなものがいくつかありましたが、コピーやデザインが未熟で訴える力が弱く、入選に至らなかったのが残念でした。

前田 知巳 審査委員

昔、「しあわせって何だっけ?」というヒットCMがあった。「しあわせ」という自分よがりな概念ほど、人と共有するのが難しいものはないかもしれない。最優秀賞は、そういう「しあわせ」そのもの矛盾感、勝ち負け感を観(み)る者の喉(のど)もとに突きつけるような作品だった。「広告制作者は、ある意味でジャーナリストであるべき」という見本だと思う。優秀賞の「いつも通り」と見比べてみると、より味わいが深くなる。「しあわせ」という状況は、常に「怖さ」と同居しているのだ。