新聞広告クリエーティブコンテスト

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2016年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」結果発表

「ことば」をテーマに実施した2016年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」は、全国から1,165作品の応募がありました。たくさんのご応募をいただきありがとうございました。

クリエーターの副田高行、一倉宏、児島令子、佐野研二郎、照井晶博、服部一成の6氏と新聞協会広告委員会の正副委員長4人の10人による審査を経て、計6作品が入賞しました。
本コンテストは、若いクリエーターの皆さんに新聞広告を制作する機会を提供し、新聞広告の可能性を広げてもらうために実施しています。
入賞作品と最終審査に残った作品は、日曜日を除く10月11日(火)から21日(金)まで日本プレスセンタービル1階(東京・内幸町)で展示します。 また、日本新聞博物館(横浜市)では、11月1日(火)から17年3月31日(金)まで入賞作品を展示します。

入賞作品 テーマ:「ことば」

※画像をクリックすると拡大されます。
[略号凡例]
CD=クリエーティブディレクション、AD=アートディレクション、C=コピー、D=デザイン
最優秀賞
受賞者

「犯行に使用された言葉」
村橋満さん(フリーランス)

○講評
言葉を鋭く切り取り、審査の早い段階から支持を集めました。「選考する側の覚悟を問うような作者の気迫を感じた」(一倉宏委員)、「言葉が凶器になることをジャーナリスティックな視点で見せている」(児島令子委員)、「言葉が人を傷つけるおそれがあることを訴える作品が数多くあった中で、完成度が高かった」(服部一成委員)。デザインについては「言葉の負の面がテーマだが、紙面をめくっていって間違いなく目に留まる」(照井晶博委員)、「内容とデザインがマッチし、余白の意味を考えさせられる」(佐野研二郎委員)、「新聞記事風の作りというのはよくある手法だが、これは狙いがはっきりしていて強い」(服部委員)との評価を受け最優秀賞に選ばれました。
副田高行審査委員長は、「新聞に掲載されたときのインパクトを考えての評価。紙面を広げてこれを見た読者が、家族や友達とこの作品を通して、言葉を介したコミュニケーションの大切さを考えてくれたらいいなと思う」と語りました。

○制作意図
言葉に人は傷つき、言葉が思いもよらない行動を引き起こします。多くの場合、凶器ともなった言葉は、当事者だけにしか分かりません。新聞に載ることもないでしょう。だからこそ、表面的な情報だけで意地悪に決め付け合うのではなく、言葉があふれる新聞紙上にも表出しないようなことを優しく想像し合う、世の中になってほしいと思います(村橋)。

○プロフィル
1980年長崎県生まれ。大広、すき あいたい ヤバい を経て、2016年9月独立。

優秀賞
受賞者

「言葉がつく嘘」
宇崎弘美さん(電通)

AD=

宇崎弘美さん(写真左)

C= 青木美菜代さん(電通/写真右)

○講評
「ネットを使うことが前提になっている今の時代をうまく切り取っている」(児島委員)と高い評価を得ました。審査会では、「世論形成に大きな影響力を持つ新聞を含め、みんなが言っていたというような雰囲気づくりにメディアも荷担していないだろうか。メディアの自己批判の意味も込めてこの作品を選んだ」(照井委員)と作品の問いかけがメディアのあり方にも及びました。背景にたくさんある小さな点のうち、三つだけ色が違う表現が「『みんな』は3人だったかもしれない。」というコピーを引き立てています。

○制作意図
子供のころから、「みんなが言ってたよ」という言葉に怖さを感じていました。「みんな」って本当に「みんな」なのでしょうか。言葉がたまにつく嘘に、おびえないでほしいと思い作りました(宇崎)。

○制作代表者プロフィル
1986年東京都生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業。2014年電通入社。アートディレクター。

優秀賞

©Maskot/amanaimages
受賞者

「まだ、誰も言ったことのないところ。」
水野 佑亮さん(日本経済広告社)

CD・AD= 水野佑亮さん(写真中央)、
六本木将嘉さん(日本経済広告社/写真左)
C・D= 田村俊大さん(アデックスデザインセンター/写真右)

○講評
言葉をネガティブにとらえる作品が多い中で、「言葉の無限に広がる可能性や自由な力を肯定的に表している。コピーライターとして言葉を肯定的にとらえたいと考えているので、この作品は印象に残った」との児島委員の一言で注目が集まりました。「月並みになりがちな言葉について意識させられ、心に刺さった」(一倉委員)など、言葉を肯定的に表現した作品の視点に賛同する意見が相次ぎました。副田委員長は、「審査の過程で、それまで気づかなかった作品の魅力を再発見することもあり、この作品を選んだのはまさにその例だ。話し合いながら審査を進めるこのコンテストのよさを感じる」と語りました。

○制作意図
この世界には、言葉にできるものよりも、できないものの方がはるかに多く存在しています。未知のものごとを理解していく過程は、さながら冒険のようであり、言葉は私たちにとって道しるべのような存在です。毎日、何気なく使っている言葉に、広い可能性を感じてもらえるような作品を目指しました(水野)。

○制作代表者プロフィル
1989年神奈川県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。日本経済広告社入社後、ソリューションデザイン本部に配属。ストラテジープランナー。

コピー賞
受賞者

【恋】
加藤千尋さん(電通)

CD・C= 加藤千尋さん(写真左)
AD・D= 宗像悠里さん(電通/写真右)

○講評
LGBTを題材にした作品には良作が多く、この作品は「話し言葉」を取り上げた作品が多い中で「書き言葉」を取り上げています。「言葉を上手に掛け合わせることでLGBTの問題を訴え、表現のレベルが高い」(一倉委員)、「『言葉はときどき、誰かの世界を狭めてる』という視点に発見があり優れている」(児島委員)、「近い将来、『恋』の説明文は変わってくるだろう。最初に変更した辞書が、大きなニュースになりそうだ」(照井委員)と評価されました。特にコピーライターの審査委員はこの作品を強く推しました。

○制作意図
「好き」という気持ちに性差はないのに、なぜ「恋」にはあるのでしょうか。
性同一性障害に対する理解が広まった世の中でも、まだ言葉が追いついていない。
その悔しさ、もどかしさを表現しました。
ペンの殴り書きに言葉のしがらみを、消えかけの文字に変わることへの希望をこめて(加藤)。

○制作代表者プロフィル
1993年京都府生まれ。同志社大学経済学部卒業後、電通に入社。コピーライター、プランナーのたまご。

デザイン賞
受賞者

「ヤバい」
渡辺康太さん(大阪宣伝研究所)

○講評
「ヤバい」シリーズと呼ばれるほど、この言葉を素材に、その賛否を問う作品が多く寄せられました。そのなかでこの作品は「『ヤバい』を否定も肯定もせず、今の若者の気分や時代の空気をそのまま表現している。『私の生きる道』が表れていて、新しい感じがした」(児島委員)、「スマートフォンで打ったようなドライなコピーが魅力的で、つい見入ってしまう」(佐野委員)、「デザインがうまく気分を表現している」(服部委員)、「コピー、デザインともに完成度が高い」(副田委員長)と評価されました。

○制作意図
日本語の変容について、肯定するか否定するかを受け手に委ねることによって、暗に「肯定的に見た方が、社会は『ヤバく』なるのではないか」と問いかけています。新聞広告を出すこと自体に非常に強いメッセージ性があるので、押しつけがましくないようコピーやデザインから力を抜くことを意識しました(渡辺)。

○プロフィル
1994年大阪府生まれ。京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業。大阪宣伝研究所所属。プランニングプロデューサー。

学生賞
受賞者

「過渡期」
宇賀勇太さん(大阪経済大学)

○講評
今年は元気のいい学生の作品が少なく、学生賞の選考は難航しました。そのなかで、受賞作は「自分がいつ『俺』に変わったかを思わず振り返った。日本語ならではの葛藤を切り取った視点が新しい」(照井委員)、「言葉が独特の存在感を持つ場面をうまくすくい上げた視点が好き」(服部委員)、「自分の成長を一人称の変化で表現していて、言葉はアイデンティティーなんだと感じさせる」(児島委員)と、言葉の切り取り方に注目が集まりました。また、「不思議なレイアウトで、見れば見るほど味が出てくる印象を受けた」(佐野委員)とデザインも高評価でした。

○制作意図
幼い頃、「僕」と呼ぶように教わってきたのに気付けば周りは「俺」という呼び方に変わっていた小学校時代。焦りをおぼえたことが今でも鮮明に思い浮かびます。子ども時代を経て、学生、大人、社会人、母親、父親……。一生のうちに私たちは様々な役割を担っていきますが、それぞれの役割を担うことで一人称も変化していく気がしました。「僕」から「俺」のように一人称が変化することは、大人へ近づこうとする少年の成長の証しかなと思います(宇賀)。

○プロフィル
1995年大阪府生まれ。大阪経済大学人間科学部在学中。