2014年度 新聞広告クリエーティブコンテスト

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2014年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」結果発表

 「食」をテーマに実施した2014年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」は、全国から1,254作品の応募がありました。たくさんのご応募をいただきありがとうございました。
 クリエーターの副田高行、一倉宏、児島令子、佐野研二郎、照井晶博、服部一成の6氏と新聞協会広告委員会の正副委員長4人の10人による審査を経て、入賞6作品を決定しました。最優秀賞「命の交換」は、「人が『命を食べて生きている』ことを、食べられる側から表現したアプローチが素晴らしい」「絵本のようなトーンが秀逸で、写真、デザイン、コピーの総合点で他の作品を上回り、完成度が高い」と高く評価されました。

 本コンテストは、若いクリエーターの皆さんに、独創的で斬新な、新聞広告の可能性を広げてもらうために実施しています。
 入賞作品と最終審査に残った作品は(→こちらからご覧いただけます) 、日曜日を除く10月10日(金)から23日(木)まで日本プレスセンタービル1階(東京・内幸町)で展示します。
 また、入賞作品は11月から日本新聞博物館(横浜市)で展示します。

入賞作品 テーマ:「食」

※画像をクリックすると拡大されます。
[略号凡例]
CD=クリエーティブディレクション、AD=アートディレクション、C=コピー、D=デザイン、Ph=フォト、I=イラスト、Pl=プランニング
最優秀賞
受賞者「命の交換」
石井啓之さん(日本経済広告社)
Pl・C= 石井啓之さん(写真左)
AD=

西戸朱美さん(アデックスデザインセンター/写真右)

Ph=

佐野伸広さん(佐野事務所)


○コメント
すべての食物には命があり、
人は、その命を食すことで、生きていく。

毎日3食、多くの命が失われているにも関わらず、
食の時間はこの上なく楽しい。

「食べられる側が悲しみに満ちていたら、
食の時間はこんなに楽しくならないのではないか?」

そんな逆説的希望も込め、
食べられる側の前向きな気持ちを、
日々食卓に並ぶ卵の意志で表現しました。

この視点を通し、改めて「食の大切さ」や、
「無数の命で形成された自分の体のこと」を想うきっかけになれば幸いです。

制作にあたり、私たちの意志を支え、アドバイスいただいた皆様へ、
そして栄えある賞に選出いただいたこと、心より感謝いたします。
ありがとうございました。


○プロフィル
1979年生まれ。東京都立大学応用化学科卒業。日本経済広告社入社後、情報システム部を経てソリューション局に所属。コミュニケーション・プランナー。

優秀賞
受賞者「食べ物で好きになった国がある。」
志賀章人さん(博報堂プロダクツ)
CD= 志賀章人さん(写真左)
慶本俊輔さん(ケニーデザイン室/写真右)
AD=

慶本俊輔さん

C=

志賀章人さん


○コメント
新聞やウェブで飛び交う世界各国のニュース。事件に意見を持つことは大切だけど、たったひとつの視点や感情論で、行ったこともない国や、会ったこともない人たちのことを嫌いになるのはちょっと違う。そこで、誰もが経験のある「食べ物から国を好きになった記憶」を思い出してもらい、「ニュースで国を嫌いにならないでください。」と、新聞自身がメッセージすることに意味があると考えました。バックパッカーをしていたころ、作中にないシリアやイランを含む、世界中の人たちが日本を好きでいてくれて、親切にしてくれました。日本に来てくれた外国の人たちにも、そう感じてもらえるよう、偏見のない目でニュースを見ていきたいです。


○プロフィル
1984年生まれ。横浜国立大学卒業。博報堂プロダクツ企画制作事業本部。コピーライター。

優秀賞
受賞者「動物図鑑」
山﨑博司さん(TBWA\HAKUHODO)
CD=

山﨑博司さん(写真左)
小畑茜さん(博報堂/写真右)

AD・D=

小畑茜さん

C=

山﨑博司さん

I=

山下基揮さん(M/Y/D/S)


○コメント
僕たちは動物の命をもらって生きています。 おいしいと思う食材や珍味として扱われる部位も、別の人から見ればそう思えないことがあります。そもそも食べ物として見ていないかもしれません。それが原因で対立や衝突もおきています。それは、ペットとして飼っているから?知能の高い動物だから?見た目がグロテスクだから?戒律で禁止されているから?どの立場で、どの国で、どの時代で、捉えるかによって食というものは変わると考えました。
そこで、僕たちが小さな頃から親しんできた動物図鑑をフックに、見る人にとって、動物にも食材にも捉えることができる、食のあいまいな境目について考えるきっかけになればと思い表現しました。

○プロフィル
1983年生まれ。岐阜県出身。早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻修了。博報堂入社。現在、TBWA\HAKUHODOへ出向。コピーライター。

コピー賞
受賞者「苦手な人とこそ、ご飯を食べよう。」

宮崎悠さん(フリーランス)

CD= 宮崎悠さん(写真左)
秋葉隆由さん(たき工房/写真右)
AD・D=

宮崎悠さん

C=

秋葉隆由さん

 

○コメント
中学の同窓生である二人で、何かをしでかそうと地元の居酒屋で策謀しました。
残念ながら僕らのイチ押しは、恐らくちょっとしでかしすぎて賞に漏れましたが、代わりにこいつが入ってくれてよかったです。

食事の場は、ただ栄養を摂取するだけでなく、コミュニケーションの場でもあります。
「同じ釜の飯を食う」という言葉があるように、人の心を通じ合わせる力があります。
親しい人と食事をするのは素晴らしく楽しいことですが、その食のもつ「人と通じ合う力」はむしろ、普段苦手だと感じている人に向けて使ってみてはいかがでしょうか。きっと、打ち解ける場になると思います。

苦手どころか旧知の二人からの、食事をしながらの提案です。


○プロフィル
1984年生まれ。東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。グラフィックデザイナー。
C.C. LES MAINSを経て、2014年4月独立。フリーランスとして個人活動をする傍ら、同年9月、301 Inc.の立ち上げに参加。CCO兼デザイナーとしても、活動中。公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員。

デザイン賞
受賞者「おにぎり」
細目永さん(HAKUHODO THE DAY)
AD・C=

細目永さん(写真左)

Ph=

纐纈哲広さん(日本コマーシャルフォト/写真右)


○コメント

物の見え方は物の捉えかたによって変わってくるように感じます。日頃身近にあるものでも、先祖代々の工夫や知恵の結晶だったりします。新しい物もいいですが、今あるものの価値を見直してスマートに物を選ぶ生活ができれば素敵だと思います。物の価値を見極めたり、発見できるよう精進したいです。

この度は素晴らしい賞をいただきましてありがとうございます。


○プロフィル
1989年生まれ。岩手県出身。岩手県立産業技術短期大学校産業デザイン科卒業。GROUND、たき工房を経て現在HAKUHODO THE DAY所属。デザイナー。

学生賞
受賞者「くま介の絵日記」
井出名穂子さん(岡学園トータルデザインアカデミー)

○コメント
私たちが普段食べているものにも命があり、家族があります。
なので、「食べる」ということは単に命を頂くということだけではないと思います。
今の時代、私たちは食べたいものを食べたい時に、お腹が空けばおいしいご飯が食べることができます。しかし、自然界は命がけで食事をとらなければなりません。たくさん食べられる日もあれば、食べられない日もあります。そんな世界で生きているくま介は、きっとお父さんのように強く生きていくと思います。
これを見て少しでも「食」について考えてもらえたら嬉しいです。
この度はこのような素晴らしい賞に選んでいただき、ありがとうございました。

○プロフィル

1994年生まれ。長野県出身。岡学園トータルデザインアカデミーデザインビジネス科在学中。

【審査の最終段階まで残った作品(順不同)】

「TPP」河野正人さん▽「ふーど」代表=初崎舞さん▽「誰よりも」代表=鈴木純平さん▽「本日の夕飯」代表=向井まどかさん▽「作るも愛。食べるも愛。」代表=宮浦恵奈さん▽「おにぎりは二回握られる。」代表=藤原祐太さん▽「私の好物」代表=山形孝将さん▽「日本のお祝い事には、かならず食がある。」中野佑美さん▽「伝えたいこと」代表=中島健登さん
(→作品はこちらからご覧いただけます

2014年度新聞広告クリエーティブコンテスト審査講評

副田 高行 審査委員長

今年はレベルが高い作品が多かったですね。その分、飛び抜けて秀でたものもなかった気がします。このコンテストでは、問題提起の力強さを重視したい、作品の完成度で選んでいいのだろうか――という思いがありました。最優秀賞の「命の交換」は完成度が高く素晴らしい作品ですが、完成されている分だけ、物足りなさも感じます。昨年の最優秀賞「めでたし、めでたし?」のような話題作が現れることを期待します。

一倉 宏 審査委員

最優秀賞は、「人間の体は食べたものでつくられる」という事実を逆発想のコピーで伝えており、ビジュアルを含め広告表現としての総合点が高い作品です。優秀賞の「動物図鑑」は、かわいい顔をしながら、社会的に鋭い問いかけを発しているところがうまいですね。学生賞の「くま介の絵日記」は4コマ漫画の仕立てが楽しい。おにぎりを「グッドデザインだと思う。」と表現した作品がデザイン賞に選ばれたのは、決して「安直」ではなく、達人のアートディレクターたちが強く推した結果です。

児島 令子 審査委員

食品偽装などのネガティブなものばかりが来るのでは…と心配しましたが、多彩な作品が集まりほっとしました。最優秀賞は、食べられる命の側からのアプローチが素晴らしい。卵がヒヨコになるのではなく、食べられて人間になる、という転換が広告としてチャーミングでした。コピー賞の「苦手な人とこそ、ご飯を食べよう。」は、ポジティブで面白い提言ですね。学生部門は温かい作品が多く印象的でした。その気持ちを大切に技術を磨いてほしいです。

佐野 研二郎 審査委員

最優秀賞は、絵本のような優しいトーンが素晴らしく、写真、デザイン、コピーの総合点で他の作品を上回りました。優秀賞の2作品はいずれも、新聞広告として読み手に考えさせる内容。デザインもシャープです。学生賞の「くま介の絵日記」も深いメッセージが込められており、秀逸です。食にまつわるニュースが色々ありますが、温かみを感じる作品が多かったですね。

照井 晶博 審査委員

最優秀賞は、人間から見て都合のいい言い方に思えたのですが、それがかえって「命を食べること」を都合よく正当化する人間の業さえも感じさせて深い気がします。優秀賞の「食べ物で好きになった国がある。」は、最後のコピーに賛否両論あるかもしれませんが、読者の手を止める力があります。もう1つの優秀賞「動物図鑑」は、視点に発見がある。国、民族、文化の違いに寛容なまなざしを持つきっかけにもなる作品です。

服部 一成 審査委員

最優秀賞作品には、食品として生まれてきた卵が自身の運命を受け入れようとする切なさがあって、その文学的な視点がユニークでした。薄いピンク色の容器を選んだアートディレクションが効いています。優秀賞の「食べ物で好きになった国がある。」は、食文化による国際交流の話と政治による国際関係の話を並べて扱っていて、新聞紙面に合った発想だと思います。