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クリエーターの眼
2025.01.01(再録)

視点が、すべてを生み出す。

アートディレクター/クリエーティブディレクター
池澤 樹(いけざわ・たつき)氏

私はどんなアイデアやデザインを考える時も「視点」を非常に大事にしています。

企業とそのブランドや製品、またその広告が生まれる時には「どう見るのか?」という視点が大切で、その視点の違いが企業やブランドまたは、我々クリエーターの差をつくると思っています。

多様化したメディアも本来、そのメディアの存在価値というのは、そのメディアが「どう世の中を見て、どうメッセージするのか?」というまさに「視点」の差によってそのメディアの独自の存在価値がつくられてきたと思います。

メディアはただの媒体でもなく、手段でもなく、枠でもないのです。

今現在、新聞社は本来の「メディアの視点」というものを保っている数少ないメディアの一つだと思います。新聞には各専門分野を扱う記者がいて取材を行いその記者の数だけの視点と、どう編集し、発信するのかという視点が多く入っています。

多くの新聞社が紙媒体としての新聞だけでなく、デジタルメディアも持っていますが、その大きな構造は変わっていないように思います。

昔は世の中の人や我々のようなデザイナーも含めて、自ら主体的に「よく見よう」という意識が強かったと思います。

デジタルが発達し、自分が強く「見よう」と意識しなくてもさまざまな情報やメッセージが勝手に入ってくる時代になってしまい、人間の大切な能力の一つである「観察し思考する」という能力が低下しているように思います。その悪習はつくり手である我々のようなクリエーターやメディアも同じです。すぐ検索し、出てきた流行(はや)りのイメージや言葉を良しとし、なんならすでに編集されたものまで多く、それを集めアレンジするだけでものごとが出来上がってしまうクリエーティブとは真逆の世の中になっているように感じます。

コロナが落ち着き、海外に行く機会も増え日本だけかと思っていましたが、今まで面白いと感じていた国でも、似たように「視点の多様性」を感じにくくなり、「物事の均一化」がもの凄(すご)いスピードで進んでいることに危機感を感じます。

逆を言えば、やはり自分の「視点」を大切することには価値があると確信できることでもあります。

私はまさにコロナがはじまった2020年に博報堂から独立し、STUDEOというクリエーティブスタジオを立ち上げました。言わば自分自身が企業を立ち上げ、自分というブランドを持ったわけです。そうなるとどう存在価値をつくるか?ということはもはや他人事ではなく、一番の課題になってきます。その時にやはり「視点」が全てのクリエーティビティーの根源でその差で存在価値を生み出されることを実感します。新聞や新聞社のメディアを通してさまざまな企業経営者やつくり手などのリアルな声を読み、答えが明確になったという実体験があります。

自分もブランドやプロダクト、さらには広告をつくる仕事をする際には、その企業やブランドの視点を、私なりの視点をもって世の中にわかりやすく可視化できるように努めたいと思っています。「企業やブランドのビジョンを、明確にビジュアルに。」ということが私の最大の強みだと思っています。またその領域を大きくしていきたいということが私のビジョンです。

新聞広告報783号(2025年1月発行)掲載

池澤 樹(いけざわ・たつき)氏
アートディレクター/クリエーティブディレクター
東京都町田市出身。博報堂を経て、2020年クリエーティブスタジオ「STUDEO」設立。
トヨタ自動車、レクサス、サントリー、テレビ朝日、クラシエなどの仕事を手がける。
PKGデザインやロゴデザインからCM・グラフィック広告・ウェブまたは展示会などの空間デザインまで一貫した世界観でブランド構築を行っている。東京ADC会員。

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