※2025年11月19日取材
――就職活動での意思決定における保護者や祖父母の影響は
内定受諾の際に学生が相談する相手に関する調査では、例年「親・保護者」がトップで26年卒の学生では65.1%と、保護者が最も身近な社会人であるという印象を受けます。「保護者に就職活動について相談するか」という質問では「よくある」「時々ある」の合計比率が伸びている傾向があり、昔よりも保護者に相談する学生の割合が増えています。
子供の就活に対する親の関心度合いは決して高まっているわけではないですが、「自己分析を手助けするために話を聞いたことがある」と答えた保護者は増加傾向にあります。親子関係がカジュアルになっているという指摘もあり、その距離感が相談のしやすさにつながっていると見られ、保護者は意思決定において一定の存在感があると考えられます。
マイナビ 2026年卒内定者意識調査
企業が内定を出した学生の親に対し入社の意思を確認する「オヤカク(親確)」という言葉があるように、最近では企業から親への働き掛けも話題になっています。調査では、保護者の思いとして「子供には経営が安定した就職先を希望する」が一番多いものの、「本人の意思に沿っている」「本人の希望に合っていればよい」など本人の主体性に委ねている保護者がほとんどで、親が子供の意思決定に反対したと回答したのは約5%にとどまりました。保護者は一定の距離感をもって子供の意志を尊重していると思います。
保護者にはバブル期に就活した人もいれば就職氷河期を経験した人もいるので、就活当時の経済環境によっては、子供の就活に対する保護者の見方にはギャップが生まれていると思います。そのことを踏まえ、子供から意見を求められた際は、人生の先輩・理解者としてアドバイスや手助けをすることが、子供のキャリアをサポートすることになると思います。
――学生と保護者世代での労働をめぐる認識の違いは
学生と保護者世代での最も大きな違いは、ワークライフバランスに対する意識ではないかと思います。保護者が就活していた当時は長時間労働や休日出勤が当たり前で寿退職も多かったという回答が多いのですが、18年に働き方改革関連法が成立したことを受け社会の風潮も変わり、今の学生は保護者世代の働き方をシビアに捉えています。「休日出勤や残業が多い父親の働き方はありえない」と話す学生もいることから、認識の差は大きいと感じます。
また今の学生は多感な時期に震災や新型コロナウイルス禍を経験しており、不確実性が高く予測困難な現代を指す「VUCA(ブーカ)の時代」を生きる世代でもあります。終身雇用が当たり前でなくなってきていることも意識の根底にあるのかもしれませんが、人生100年時代と言われる中で自身のキャリアを中長期的な視点で捉え、健康にも留意しながら仕事と私生活のバランスを考えることが持続可能的なキャリアであるという見方をしているのではないでしょうか。経済が右肩上がりの時代は働いた分だけ給料も上がったかもしれません。現在も賃上げの機運がある一方で、物価の上昇や社会保障に関連した負担の問題もあり、学生は楽観的な見通しを持てないのが現状で、そのためワークライフバランスに関心が集まるのかもしれません。
また、昨今転職が一般的になりつつある中で、保護者と学生では働き方への認識に差が出ているとも言えます。かつての総合職採用は、さまざまな仕事を経験するゼネラリスト的なキャリアを一つの会社で形成するのが一般的でした。インターンシップを通じて職種への見方の解像度が上がっているため、一つの仕事を軸にスキルを広げていきたいという考えが広まり、保護者の頃と比べ同じ会社で働くことの意味合いが大きく変わっています。
かつて就職は安定を意味し、キャリア形成を会社に任せることができた時代でした。もちろん就職氷河期世代は特有の苦労があったと思いますが、不確実性の時代だからこそ今の学生は不測の事態に対応できるためのスキルが必要だという意識があり、成長への意欲は高いです。就職したら安泰と捉えるのではなく、自分のスキルを伸ばしてキャリアを築くための環境を希望する傾向が見られます。
インターンシップを経験して知りたかったことを学生に聞くと、意外にも仕事の厳しさや大変さを挙げる声がありました。入社後のミスマッチは避けたいところなので、企業も良い面だけではなく、社会人として働く上での大変さというリアルな情報も発信するのが良いのではないかと思います。それは求人広告では伝わりづらいので、職場体験が鍵となるでしょう。

――地方都市の企業にとっての情報発信の意義は
地元(Uターン含む)就職を希望する学生は約6割であるにも関わらず、地元企業の就職のためにインターンシップに参加した学生は3割にとどまったという調査結果があります。これを踏まえると、地方都市においては、企業側が学生に情報を十分に届けられていない可能性もあるかもしれません。地元就職を希望しない理由に「志望する企業がない」の回答がありますが、それは学生の持つ先入観に過ぎないかもしれないので、企業が積極的に情報発信することが重要だと考えます。
当社は18年から経済産業省、厚生労働省、文部科学省、日本経済新聞社とともに、インターンシップやキャリア形成支援に係る取り組みを表彰する「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」を後援しています。表彰される取り組みの中には、建設関係の中小企業が複数社で行う共同プログラムもありました。地元の企業が働く面白さや厳しさを伝えるのは大変かもしれませんが、その地域の現状に合った形でインターンシップを実施するのは、その地域で働くイメージを学生に持ってもらい、就職先として検討してもらうためのアピールとして有効だと思います。
インターンシップ・仕事体験を実施する企業は6割程度という調査結果もありますが、特に従業員規模の小さい企業では実施率が低くなっています。これには「学生を受け入れるマンパワーが足りない」「ノウハウがない」「社員に協力してもらうのが大変だ」などのさまざまな理由が考えられます。これを解決するために地域の企業が複数社で共同開催する方法も考えられます。自社だけで取り組むのが難しい理由を検証した上で、クリアするには何が必要かを考えてみるのも、対策を検討する上で第一歩だと思います。
――情報発信における新聞社などとの連携について
地元企業の情報発信にあたって共同で実施する方法を挙げましたが、地方自治体や大学などとの連携も鍵になると思います。地方自治体が地元を離れて進学した学生に向け、アプリなどを使い地元の情報を定期的に発信する例もあります。大学にとっても、地元の企業と連携してキャリア教育を行うことで内容が充実できるでしょうし、連携がうまくいくと企業側も大学側もメリットがあると思います。
また、地元を離れた学生からすると、実家で読んでいた新聞からの情報発信は親しみやすいかと考えます。地方自治体や大学、新聞社などのメディアと地元一丸になって取り組むのも良いと思います。
情報発信においては職種の魅力だけでなく、その場所に住んで働くイメージを持たせることも重要です。その両方のイメージが湧くとUターン就職への心理的なハードルも下がるのではないでしょうか。出身地でない場所に移住するIターン就職は他の地域から呼び込むため、特に両輪で発信する取り組みが重要になると思います。
※マイナビの各種調査データはこちらからご覧いただけます
2026年卒 大学生キャリア意向調査10月中旬<就職活動・進路決定>
2026年卒 大学生広報活動開始前の活動調査
2026年卒企業新卒内定状況調査
企業人材ニーズ調査2024年版
中途採用実態調査2025年版
2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
マイナビ 2026年卒内定者意識調査
就職活動時期の親子に生まれる3つのズレとは?就活生と保護者の理想の関係性を考える~2026年卒新卒採用・就職活動の展望~