新聞大会会長あいさつ

第70回新聞大会 新聞協会長あいさつ

2017年10月17日 広島市
一般社団法人日本新聞協会 会長 白石 興二郞

 第70回新聞大会をここ、広島市で開催することになりました。広島での新聞大会は、1998年以来19年ぶり4回目となります。開催にあたり、地元・中国新聞社の山本治朗会長、岡谷義則社長はじめ皆様に大変なお力添えをいただきましたことを心から御礼申し上げます。

 昨年の米大統領選以降、「フェイクニュース」の存在が世界的に問題になっています。情報流通の構造変化や既存メディアへの不信感が、フェイクニュース拡散の大きな要因になっていると指摘されています。各社がこれまで積み重ねてきた正確で多様な報道によって新聞の信頼度が維持されている日本でも、ネット上には真偽不明の情報が現れ、拡散され続けています。今年の新聞週間の代表標語には、「新聞で見分けるフェイク知るファクト」が選ばれました。確かな取材で真実を見極めて国民に提示するのは報道本来の役割にほかなりませんが、これまでにも増して報道の力を発揮し、読者からさらに厚い信頼を得ていかなければなりません。

 5月30日には、改正個人情報保護法が全面施行されました。法の制定時から報道機関への情報提供は適用が除外されていますが、過剰反応や制度の誤解、インターネットの普及に伴うプライバシー意識の高まりで、行政や捜査機関だけでなく、民間事業者や個人にいたるまで、個人情報保護を名目に情報提供を拒む傾向が広がっています。最近では、災害時に被災者や行方不明者の氏名を公表しない傾向が広まっています。本来、公共的なものであるべき情報が隠されれば、社会が機能不全を起こすだけでなく、民主主義の基本である国民の知る権利が脅かされます。新聞協会は、改正法の施行に合わせ、報道機関としての立場と考え方を一般読者に理解してもらうため声明を発表しましたが、引き続き報道の意義が社会的、制度的に浸透するよう求めてまいります。

 消費税率が10%に引き上げられると同時に、定期購読される新聞に8%の軽減税率を適用することは、既に法律で定められています。2019年10月に予定されている税率引き上げ時に、確実に軽減税率が実施されるよう注視するとともに、内容に何ら変わりのない一部売りや電子新聞にも適用されるように求めていきます。知識課税の強化に反対する立場から、書籍・雑誌にも適用すべきだとの主張にも変わりはありません。

 新聞の価値、公共的な役割を理解してもらうためには、新聞に触れる機会が少ない人たちに、まず新聞を手にとってもらい、新聞が身近な存在であることを知ってもらう必要があります。新聞協会は各委員会の活動を中心に、時には委員会が連携してNIE(教育に新聞を)やPR活動を展開してきました。ここ数年はNIB(ビジネスに新聞を)活動にも力を入れています。今後も各社の知恵を集め、無購読者対策に一丸となって取り組み、活動をより効果的に進めていく考えです。

 まず、子どもや若年層向けには、NIEの充実に力を注ぎます。今年3月に告示された小・中学校の新学習指導要領には「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)が掲げられ、総則に初めて「新聞」の記述が盛り込まれました。メディア多様化の時代を生き抜くために、情報の真偽を見分ける力を育てる教育は不可欠です。社会の今を知り、読み解く力をつけるために新聞が最適な教材であることをNIE教育の効果とともにアピールしていきます。

 また、無読層は40代にも広がりつつあります。人々が新聞に触れる環境を整備するために、各社が取り組むNIB活動の周知やPR冊子の製作などを通じ、新聞の有用性を大学の教員養成課程、企業や自治体の採用・研修担当者にアピールしていきます。

 PRを推進するためにはニュースパーク(日本新聞博物館)の活用も欠かせません。昨年夏のリニューアル後、小中学生の来館は25%増えました。新学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」が掲げられており、博物館の教育連携には学校側からも関心が高まっています。新聞界の貴重な財産である収蔵資料を生かしながら、新聞の価値や役割を発信していきます。

 日本で新聞の信頼度が高く、フェイクニュースが広がりにくいのは、全国各地に戸別配達網が行き届いていることと無縁ではありません。発信源があいまいで経路も不明なネットの情報と異なり、人の手で届けられる新聞は読者にとって安心で信頼できる媒体です。販売部数の減少に加え、販売所の労務難や折込広告の減少という極めて厳しい経営環境にありますが、戸別配達は何としても維持していかなければなりません。そのために、発行本社がルールとマナーの順守を指導徹底し、活力ある新聞販売を維持していく必要があります。そのことが、国レベルだけでなく各地で広がろうとしている訪問販売などの事業者規制を回避することにつながります。

 新聞広告を取り巻く環境は年々厳しくなっていますが、メディアが多様化する時代にあっても新聞広告の信頼性や社会性、地域密着性は高く評価されています。新聞広告を起点にして、さまざまなコンテンツや販売所ネットワーク、スポーツ・文化事業などを組み合わせた「新聞社の総合力」により、広告主の課題解決に向けた新たなビジネスの提案に取り組むことが重要です。

新聞界は、目前に多くの課題を抱えていますが、これまで新聞が担ってきた実績を踏まえ、英知を集めてそれらを克服していく必要があります。この大会を通じ、皆さまとともに新聞人同士の率直で、幅広い意見交換ができ、有意義な時間が持てることを期待し、開会のあいさつとします。

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