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コロナ報道 次の流行に備え《新聞協会と民放連が一般向けシンポ》

集団感染の一因強調が差別助長 医療専門家

 新聞協会と民放連は10月20日、新型コロナウイルスの報道を巡り医療の専門家を招きオンラインシンポジウムを開いた。報道側は感染者の特定につながる報道を控え、真偽不明な情報の事実確認に努めるなど、感染者や医療従事者らへの差別や偏見を防ぐ取り組みを紹介。専門家からは、集団感染の発生要因の一つを強調する報道が差別や偏見につながっているとの指摘が出された。新たな感染症流行に備え、適切な報道の在り方を議論するべきだとの意見も出た。

 新型ウイルス感染を巡っては、感染者が出た病院に通っていた人が別の病院で消毒液をかけられたり、集団感染した学生の所属大学に1週間で数百件の抗議や中傷が届いたりした例が報じられている。

 国立病院機構名古屋医療センターの長谷川好規院長は、感染リスクを下げることだけが「正義」になれば、感染者やウイルスと対峙する医療従事者を排除しようとする力が強まると指摘。押谷仁東北大院教授は、感染経路の特定は難しいのに、メディアが一つの要因を切り取り「これが悪かった」などとする伝え方が差別や偏見を助長しているとの見方を示した。

 新聞協会と民放連は5月、差別や偏見を生まないために「扇情的な報道にならないよう節度を持った取材と報道に努める」との共同声明を出した。新聞協会編集委員会の砂間裕之代表幹事(毎日東京)は各社が差別の実態を批判的に伝え、デマを打ち消す報道に努めてきたとしつつ、冷静な報道を求める声に対しては「自戒するところだ」と述べた。

 編集委の今野俊宏副代表幹事(河北)は「コミュニティーの匿名性が低い地方ほど差別や同調圧力が強い傾向がある」とし、報道による二次被害を防ぐため独自取材で感染者や勤務先が判明しても報道は控えていると説明した。しかし、疑心暗鬼にかられる読者もおり、報道しないことへの批判も寄せられるという。

 また東北では、感染者の居住地を市町村名まで発表する県と、より広範な保健所の管轄区域にとどまる県に分かれているとし、詳しい情報が明かされない理由の追及も必要だと述べた。

 民放連報道問題特別部会の小林暢慎幹事(日本テレビ)は、感染者が確認された店舗が入る雑居ビルの看板を映す際は他の店名をぼかすなど、映像で不安をあおらないための工夫を紹介した。感染者数を報じる際は感染者を責めるかのような印象を与えかねない「過去最高」などの表現を極力控えているとも述べた。

 ウイルスの実態が分かりつつある中「『普通の病気』というイメージに近付けたい一方、人々に一定の緊張感も持ってほしい」。東京都の新型コロナ対策審議会委員を務める国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は情報提供の在り方は難しいとし、今後もメディアと相談しつつ進めたいと語った。

 長谷川氏は「今後も新たな感染症流行は必ず起こる」とみる。初動段階での適切な情報の伝え方について「多くの報道関係者が新型コロナで得た知識を共有し、次につなげてほしい」と要望した。

 一般の読者・視聴者、医療や報道関係者ら約270人が視聴した。

(2020年10月20日)

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