無断利用拒否 意思尊重を コンテンツ保護制度が急務 生成AI巡り新聞協会声明
新聞協会は6月4日、「生成AI(人工知能)における報道コンテンツの保護に関する声明」を発表しました。報道機関が生成AIに対するコンテンツの無断利用を拒否している場合、事業者にその意思表示を尊重するよう求めるとともに、政府はコンテンツの適正な保護に向けた制度整備を急ぐべきだと主張しました。
AI事業者は「クローラー」と呼ばれるプログラムを使いウェブサイトを巡回してサイト上のコンテンツを収集し、AIの学習などに使用しています。ウェブサイト側は「robots.txt」と呼ばれるファイルを設定して収集の可否について意思表示することで、学習や利用を一定程度防ぐことができます。新聞協会会員社の主要なニュースサイトや国内の主なポータルサイトはすでに設定しています。
声明はこの技術的措置について、報道コンテンツの無断利用を拒否する「極めて有効性の高い手段」と評価しました。その上で、設定を無視してデータを収集する事業者が存在し、実際に記事がAIサービスで表示されるケースが確認されていると指摘。「看過できない事態」と主張し、事業者に技術的措置の順守を求めました。
これに関しては、文化庁が2024年3月に示した考え方で、事業者がAI学習のために技術的措置を無視するなどしてデータを収集すれば著作権侵害に当たる可能性があると整理していることを併せて示しました。
また声明は、技術的措置の設定にはクローラーの名称が必要となるにもかかわらず、名称を開示せずにデータを収集するAI事業者が存在することを指摘。こうした行為を放置すれば権利者が対策を取ることが困難になるとして、クローラー名の公表を事業者に義務付けるよう求めました。さらに、生成AI向けと検索サービス用のクローラーを分けていない事業者も存在していると指摘しました。その場合、生成AI向けのクローラーのみを拒否することができない問題があると説明。権利者の意思を適切に表示できる仕組みの標準化が欠かせないとしました。
これらの点から声明は、文化庁の「考え方」によって著作権とAIに関する問題は一定程度整理されてきたと評価する一方、いまだ「報道コンテンツの保護は極めて心もとない」と主張。報道機関のコンテンツにフリーライド(ただ乗り)する新しいサービスや機能が日常的に展開されており、このままではコンテンツ再生産のサイクルが損なわれかねないと述べました。報道機関の機能が低下すれば「国民の『知る権利』を阻害しかねない」とし、民主主義の在り方にも関わる極めて重要な問題だと指摘。「著作権法や競争法といった従来の枠組みにとどまらない総合的な対応が求められる」と述べました。
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(2025年6月4日)