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2008年 1月1日
九つの蔵元 それぞれの挑戦

長野日報「復権 日本酒」

寒い冬には熱燗(あつかん)で。日本酒党には至福のひと時だろう。その日本酒の消費量が低迷している。十二月三日から七回、復権を目指す取り組みを諏訪地方九つの蔵元に見た。

諏訪市の麗人、舞姫両酒造は古酒(長期熟成酒)に夢を託す。時間をかけて熟成させることで味がまろやかになり、独特の香りを放つ。「時がはぐくむ酒の良さをもっと多くの人に知ってほしい」。岡谷市の豊島屋は「数量、流通とも限定した特別な酒」という位置付けで新ブランド「豊香」を世に出した。諏訪市の伊東酒造は「女性が清酒に親しむきっかけになれば」と、梅酒を焼酎の代わりに日本酒で仕込む。同市の本金酒造は純米吟醸の酒かすを使い、市内の食品会社と共同で洋菓子「酒粕サブレ」を開発した。

〝こだわり〟は酒造りの哲学か。茅野市のダイヤ菊酒造、下諏訪町の菱友醸造は地産地消を実践する。米は、かつて諏訪の主力品種として作付けされていた飯米「ヨネシロ」だ。菱友はさらに、諏訪と東信を結ぶ峠の天然水で仕込むこだわりよう。「地元でしか出せない味を、地元の人たちで楽しんでほしい」。蔵元が一様にこだわる品質では、岡谷市の高天酒造が酒造りの主役、酵母の自家培養を本格化している。

輸出に力を入れ、そこから学ぶという蔵元もある。「真澄」で知られる諏訪市の宮坂醸造。海外市場を開拓するには、日本酒の良さをどう伝えるか、工夫が欠かせない。「そこには国内市場を改めて掘り起こすヒントがある」というわけだ。

そんな九社が共同で十月、諏訪市で「日本酒祭」を初めて開催、地域連携の機運が生まれつつあるという。連載は報道部の小林弘記者が担当。宮坂康弘部長は「復権への動きが思った以上に、さまざまな形で出てきている。地場産業のバックアップにもつながればと思い、紹介した」と話している。(審査室)

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