2008年 2月5日
食卓の安心、田畑の土から

常陽「食の安全 いばらき2008」

昨年、日本各地で相次いだ食品偽装問題は食の安全に対する消費者の信頼を大きく揺るがした。しかし一方で、農産地などでは安全な食品づくりに向けた努力が地道に続けられている。連載は一月三日にスタート。全国有数の農業県である茨城県内での取り組みを十三回にわたり報告した。

二〇〇六年末に有機農業推進法が施行され、県内でも農薬や化学肥料を使わない有機農業を普及させようという動きが活発だ。石岡市の有機農業者は現在、六百羽のニワトリを育てながら年間八十種類の野菜を栽培。畑の肥料には鶏糞(けいふん)にコメぬかを混ぜて発酵させた自家製堆肥(たいひ)を使用し、ニワトリの飼料も遺伝子組み換え品を避けるため輸入飼料は用いず、自家製を与えている。

また取手市のハーブ農園経営者は安全性追求のため土づくりにこだわり独自に有機腐食肥料を開発。栽培したハーブなどの成分分析も欠かさない。龍ケ崎市の農場で生産される「有機栽培コシヒカリ」では、除草剤を使わずに済む「紙マルチ」農法が採られている。ダンボールの古紙をロール状に再生した紙マルチを専用の田植え機で敷きながら苗を植える。土に日光が当たるのを防ぎ、雑草の発生を抑えるための工夫だ。紙は約四十日で分解され、土になる。

一方、ネギやレタス生産で知られるJA岩井(坂東市)は〇五年からのインターネットでの栽培履歴公開などに続いて今春から新たな生産工程管理システムを運用する。農薬散布や収穫時の衛生管理などで地域独自の基準を設け、安全管理を徹底していく試みだ。小貫新一編集制作局長は「県の基幹産業である農業の現場では多くの人が食の安全問題と真剣に向き合っている。その姿が伝わってくれれば」と話す。報道部の鈴木宏子、齊藤聡記者ら十二人が執筆。(審査室)

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