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2008年 6月3日
空港と地域との共生・共栄探る

千葉日報「ナリタ30年 地域と空港 新たな関係へ」

日本の空の表玄関である成田国際空港(千葉県成田市)がこの五月に開港三十周年を迎えた。三部構成の連載(四・五月に計二十三回)は、地元の視点から空港の軌跡を振り返り、地域との関係にスポットを当て、未来に向けた姿を探った。

成田空港は一九六六年の建設決定時から激しい反対運動にさらされる多難な歴史を歩んできた。一九七八年三月の開港目前に起きた過激派による管制塔襲撃・占拠事件。二か月遅れた開港日の式典参加者はわずか六十人。華やかなセレモニーもなく「空の表玄関の門出は、あまりにも質素だった」と連載は記す。

その後、曲折を経ながら対立から話し合いへと潮目は変わり、空港と地域との共生が模索されていく。しかし「市税のうち百三億円が空港関連の固定資産税。四世帯に一人が空港関係で働く」成田市などのように空港の恩恵を受ける地域がある一方、騒音のためにこれまで二百一戸が移転した芝山町など空港の負の側面に悩まされている地域も少なくない。

年間の国際旅客数は世界六位、国際貨物量は同三位の成田空港だが、「遠い。狭い。着陸料が高い」上に内陸空港ゆえの騒音問題などが足かせとなり、利便性や競争力の面で「限界」を指摘する声も出ている。連載は羽田空港の国際化を進める動きが加速し、アジアのライバル空港が能力を増強する中で、地元経済人らが発着枠拡大などを求めて決議や緊急提言をするなど危機感を強めている様子も報告した。一方、平行滑走路の延伸に伴う増便や都心につながる新高速鉄道開通(いずれも二〇一〇年)など明るい材料もある。萩原博編集局次長は「成田空港の発展には住民の理解と協力が欠かせない。空港と地域が共生し共栄していくことが大事」と話す。坂巻洋一、石井敏之、篠塚紀子、田村理の四記者が担当した。(審査室)

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