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2008年 9月23日
「安心」に挑む農家 励ましたい

市民タイムス「食を支える」

「食」は今、二つの不安にさらされている。一つは相次ぐ食品偽装事件で高まった「安心・安全」。もう一つは、高齢化や後継者不足で農業が弱体化することによる「供給」への不安だ。連載は一月から一年間、長野県の松本・木曽地域で食を支える現場を見つめ続ける。

第一部『「日本の味」大豆新事情』(一月、六回)、第二部『「安心づくり」への道』(四月、五回)は「安心」をキーワードに進む。安曇野市では休耕田の有効活用策として、黒大豆の生産に励む農家が増えた。バイオエタノールの原料となるトウモロコシ増産がもたらした外国産大豆の価格上昇で、遺伝子組み換えをしていない国産大豆には「追い風が吹いている」。松本地域では「作った人の顔が見える」生産者直売所が増え、地元野菜を持ち込む農家と消費者との間で食談義がはずむ。塩尻市では大半の小中学校が自校に調理施設を持つ。子どもたちが献立づくりや調理に参加することも。「自分の感覚で食べ物を選び取る能力を育てたい」。

第三部は『切り開け、米のあした』(八月、五回)。兼業農家が勤めの給料で生計を立て、休日返上で米を作る、この構図は信州も変わらない。頼りは「田地を守っていきたい」という農家の気概だ。安曇野地方では小規模農家による集落営農組織設立が進む。安曇野市の米農家は畜産農家と連携、協議会を立ち上げて飼料米作りの定着化を図る。麻績(おみ)村では農家の有志が愛農組合を作り、荒廃田の復元を目指す。

報道部を中心に松本、木曽地域の支社の記者で取材班を編成。同部の藤村隆雄次長は「地盤沈下がいわれる中で挑戦し続ける人たちがいる。農業を元気づけたい」と語る。今後、農業の担い手として輝き始めた女性の姿を追い、木曽に残る食文化を探るとともに、「安心」に向けて、消費者も自衛策をとるよう提言していきたいという。(審査室)

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