1. トップページ
  2. 刊行物
  3. 新聞協会報・スポットライト
  4. 街を変える「自治」の芽生え

2009年 5月19日
街を変える「自治」の芽生え

沖タイ「自発力 地方分権の課題を見る」

加速する「地方分権」の流れ。分権改革は沖縄に何をもたらすのか。課題は――と、一月十日から十九回にわたり探った。

日本最西端に位置する与那国島。海の向こうの台湾まではわずか百十キロだ。二月末から航空チャーター便による相互交流が行われ、辺境の地といわれた与那国町はいま、「アジアの玄関口」を目指している。

町は二〇〇四年、住民投票を経て石垣市などとの合併を拒否した。翌年「与那国・自立へのビジョン」を策定し、台湾との交流で島を活性化し「自立」する道を選んだ。町の国境交流推進協議会メンバーは「交通ができると、それに乗って人が動き、物や情報、知恵が動く」と、定期船就航に熱い期待を寄せた。

だが課題は多い。台湾からの観光団の受け入れ一つとっても、宿泊施設の整備や中国語通訳の確保、観光プログラムの企画が必要となる。でも、島の未来が広がることへの期待感が原動力になって、住民たちの意識は着実に変わってきた。自分のできることをやり抜こうという決意がにじむ。

分権への後押しとなるのは「自治」の芽生えだ。南城市では三十―四十代の有志職員が「南城市のこれからを考える勉強会」を組織。国や県が移譲を推進する事務だけでなく、街づくりに必要な事務の移譲を積極的に求めるよう市長に提案するなど、職員の分権への意識が高まっている。

那覇市でも、市長と市民だけでなく市職員も参加したフォーラムを通じ、街づくりを模索している。率直な意見交換で市職員と住民の信頼関係を強め、「本物の自治」につなげる取り組みだ。

「県内に芽生えている自治の意識や息吹をこれからも伝えていきたい」と語る武富和彦政経部長。同部「自発力取材班」の浜元克年、金城珠代、長浜真吾、銘苅一哲記者が担当した。(審査室)

ページの先頭へ