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2009年 6月16日
橋に頼り過ぎず、着実に発展

愛媛「次代に架ける夢 しまなみ開通10年」

愛媛県今治市と広島県尾道市を10本の橋で結んだ海道が誕生して10年。本四連絡橋3ルートの中で離島振興の意味合いが最も強かった架橋には、大きな夢と期待が込められてきた。4月から5月にかけての1面連載12回は、厳しかった現実を率直に指摘しているが、軸になっているのは橋を活用しての「これから」だ。次の10年を見据えた地域の取り組みへの応援歌とも言える。

救急でも防災でも、海道の時間短縮効果は予想以上で、安心感が広がった。一方で、観光面などで思い描いた地域振興の夢は実現していないし、島の人口・世帯減は止まらない。橋に頼り過ぎ、テーマパークなどの箱物に依存したのは失敗だった。

反省を踏まえ、動き出した沿線の町づくり関係者の共通キーワードは「無理なく」「身の丈で」。一過性ではない取り組みに力点がおかれている。

能島村上水軍などに着目した特定非営利活動法人(NPO法人)は、歴史を通じ島内外の人とのネットワークを広げつつある。伯方島では斜面にミカンが根を張る自然を生かし、長期滞在で各種体験をするグリーンツーリズム客を増やしている。自転車でゆっくり回り、西瀬戸の生活そのものに触れてもらう観光商品売り込みのためのNPO法人も1月に設立された。

海道を渡って魚価が高い市場に島の魚を売り込む人たち。今治市と尾道市の職員交流は、沿線を一つの地域ととらえる視野を植えつけつつある。地域を見つめ直し、魅力を高めようとする人々の姿に、華やかではないが着実な力を記者は見る。今治支社・多和史人、岩田太、白川亜子、伯方支局・小椋哲郎の4記者とともに担当した鈴木孝裕同支社編集部長。「橋をどうやって使い、町おこし策はどうあるべきか、読者とともに考えたかった」と語る。(審査室)

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