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2009年 7月28日
「医療崩壊」の現場に切り込む

長崎「長崎の医療は今」

「医療崩壊」が叫ばれている。住民の健康にかかわる長崎県内の医療現場では何が起きているのか。年間企画で医療機関の実態に切り込んだ。

元日紙面の1面で開始した第1部「揺れる公立病院」(7回)では、経営危機の背景が浮き彫りになる。人口当たりの医師数が県内で最も少ない上五島地域の奈良尾病院。院長と常勤医師の2人で入院、外来のすべての患者を診察する。総ベッド数は60だが、健診など疾病予防に力を入れ、住民が入院しなくていいように対応している。だが入院患者の減少は、病院経営にはマイナスになる矛盾も。新上五島町は同病院の有床診療所(19床以下)化を検討しているが、住民は遠くの病院への受診に不安を抱く。

大村市が直営していた大村市民病院は昨年、「公設民営化」による再生への道を歩み破たんは避けられたが、バラ色の未来が開けたわけではない。「24時間365日、市民が求める医療を愚直に提供する」という、自治体病院としての将来像を導き出さなければ、危機はきっとまた訪れる。

6月からの第2部は「救急の現場」(5回)。佐世保市では11病院が「輪番病院」として救急患者に対応しているが、輪番日でない日の呼び出しが増えて疲労を訴える医師の声が相次ぐ。医師不足が深刻な救急現場は「いつ破たんするか分からない」状況にある。

「救急の最後の砦(とりで)」となる長崎大学病院は第3次救急医療施設だが、救急部が診察した重症患者は2割以下。軽症なのに「どうしても大学病院が......」と来院する患者もいる。救急医療の実態に医師は焦りを募らせるが、即効性のある解決策は見当たらない。

「医療体制の実態から住民医療を考えてみた」と森永玲報道部長。「医療問題取材班」を部際で編成。第3部では離島医療の問題点を探る。(審査室)

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