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2009年 8月25日
熊野の価値どう守り伝えるか

紀伊民報「世界遺産を語る」

「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界遺産に登録されて7月で5周年を迎えた。熊野の価値とは何か、どう保全・継承すればいいのか、関係者の思いや取り組みを紹介し、今後の課題も明らかにしようとする企画である。

第1回は熊野本宮大社の宮司、九鬼家隆さん(52)が登場。熊野は「遺産」ではなく、人々が何かを求めて足を運ぶ「時代時代の羅針盤の役割を果たしている」と言う。世界遺産センター長の辻林浩さん(64)は「(熊野は)心のある文化財。道が文化を運び、文化が景観をつくり上げている」。

古道沿いの「とがの木茶屋」の女将、玉置こまゑさん(84)はこう言う。「古くから、野望を遂げたい人、以前の悪事を悔いる人、立身出世を願う人など、それぞれが思いを胸に歩いた祈り道ですよ」。

伊勢路は険しい峠道だが、苦労して登るからこそ、峠から眺める海の絶景に心を奪われる。今も峠ごとに住民の保存会があり、17団体が草を刈り、道を整備するという。

地元の三里小、三里中は「熊野古道学習」に取り組む。中学生は「語り部」として小学生の団体客を案内し、古道の魅力や見どころを紹介している。土を運んで古道のへこみを直す「道普請」もする。道の標識やパンフレットの英語表記に取り組んだのは、熊野ツーリズムビューローのブラッド・トウルさん(34)。外国人には、言葉が地名なのか人名なのかさえ分からない。ストレスを感じないで済むような表記を、考え続けてきた。

取材は報道部の蛭子(えびす)みどり、芹沢悠、横出祥子の3記者。川本敦史デスクは「もっと知りたいと、繰り返し訪れる人が増えている。私たちはどう迎えればいいのか、考える企画にしていきたい」。6月から1面または社会面で15回。秋までさらに十数回掲載する。(審査室)

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