2009年 12月1日
行政の自立 財政難で阻まれ

秋田魁「自治の行方―検証あきた平成大合併」

秋田県で「平成の大合併」が始まって5年。69市町村は25に再編された。減少率63.8%は東北一、全国で9番目だ。10月からの集中連載(1または3面)は、合併の現状と課題を取材網を総動員して検証している。

第1部は「描けない未来」(10回)。道路拡幅や駅前開発など、合併時に盛り込んだインフラ整備が進まない。「財政見通しが甘かった」からだ。周辺地区では住民サービスが低下、良くなったのは中心部のみという状況に、「合併して、いいことは一つもない」との声も。

第2部は「悩める行政」(11回)。地方交付税の削減で、合併前の市町村の台所事情は深刻化していた。「合併せずにいたら行き詰まっていた」と旧町出身の新市幹部。しかし、期待した合併特例債は使えば借金が膨らむだけで安易に活用できないなど、財政の厳しさは合併後も変わらない。

第3部は「単独自立の道」(11回)。合併しなかった上小阿仁村の村長は、財源確保のため高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を表明した。しかし反対運動で断念、小さな村が自立の道を歩む厳しさを浮き彫りにした。

第4部「あの日の決断」(10回)は、寺田典城前知事が「広域行政によるコスト削減」を持論に合併を強力に推進した経緯を振り返る。「『今、合併をやらなきゃ』という国と県の流れに流された」と元村助役。元町長は「合併は活性化の手段なはずなのに、目的になってしまった」と語る。25市町村長へのアンケートでは合併が「成功している」が4人、「どちらとも言えない」が最多の15人だった。

「暗い話になるとの懸念もあったが、それが合併の本当の姿なら記録しておく必要がある」と地方連絡部の佐藤孝男部長代理。「でも元には戻れない。どうすればよいかを第5部(年内予定)で探りたい」という。(審査室)

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