2010年 6月1日
地域医療の苦闘伝える

山陽「安心のゆくえ」

深刻な医師不足、破綻(はたん)する救急医療、公立病院の経営難―地域の医療は崩壊の瀬戸際に立たされている。医療の現場でいま、何が起きているのか。1月からの1面・社会面の連載は、患者や医師らの目線で、地域医療の厳しい実態と課題を丹念に掘り起こす。

第1部「さまよう患者」(11回)は「がん治療の現場」から。昨年亡くなった作曲家の三木たかしさんは東京から岡山市の病院に治療を受けに通った。納得できる治療を求めて病院を転々とする「がん難民」の苦悩を紹介。先端医療の現実とともに医師と患者をつなぐ絆(きずな)のあり方を探った。

第2部「『いのち』と向き合う」(10回)は「終末期の緩和ケア」。積極治療をあきらめた患者が「緩和ケア病棟」や自宅で送る最後の日々に密着。患者や家族の揺れ動く心の行方と医療側の様々な取り組みを深く掘り下げて描く。

第3部「揺らぐとりで」(6回)は「救急医療の最前線」。岡山県北で唯一の救命救急センターがある総合病院の苦闘ぶりを現場医師らの視点でルポ。開業医らとも連携した受け入れ態勢の整備など今後の課題も示した。

第4部は「過疎地を守る」(7回)。中国山地の新見市を舞台に、慢性的な医師不足に悩む実態を浮き彫りに。医師確保に奔走する病院長やへき地の診療所勤務を志願した医師らを描く。第5部は「公立病院の苦悩」(7回)。経営改革による現場の混乱やあつれきを通じて、再建への課題や活路を探った。第6部「命の値段」(6回)は揺らぐ健康保険制度を取り上げた。

担当は中浜隆宏編集委員と社会、政治、経済部の編集局横断チーム7人。「闘病中の患者らの生の声を伝えたい」と統括の藤原健史社会部長。取材では何日も通って信頼関係をつくる。医療不信解消への動きを探る6月の第7部で完結の予定。(審査室)

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