2010年 9月21日
なぜ、医師がいないのか

山陰中央「地域医療のあす」

島根県の地域医療が存亡の岐路に立たされている。ここにきて医師不足が一段と加速、住み慣れた地元で救急などの医療を受けられない事態さえ起こる。7月からの島根面の連載は医療崩壊の実態を丹念に検証しながら、再生への処方せんも探る。

第1部は「なぜ、医師引き揚げ、医師偏在は常態化したのか」(7月、6回)。2004年の臨床研修医制度導入以来、大学医局による病院からの医師引き揚げが続く。県東部の中核、松江赤十字病院では循環器内科常勤医7人のうち部長ら3人が今春、広島大に引き揚げた。

従来は地元への医師供給を一手に引き受けていた島根大など中国地方の国立大。だが、大学医局も新人研修医の大都市流出で背に腹は代えられない。あおりを受けて県内の主要15病院の約3割が診療機能の縮小や病棟閉鎖などに追い込まれた。

第2部は「なぜ、医療圏は崩壊の危機にあるのか」(8月、6回)。県西部の中核の一つ、大田市立病院では6人いた外科、整形外科の常勤医が今春ごっそり引き揚げ、救急告知病院の看板を下ろした。市の救急車は40キロ離れた県東部の出雲市にある県立中央病院などへ急患を運ばざるを得ない。一方、中央病院など受け入れ先も他地域からの患者流入で負担が増大、病床が満杯になる事態も。このままでは共倒れで崩壊が県全域に広がりかねない。

「地域医療をどう守るか。ここでしっかり考えなければ」と山根行雄・報道部社会グループ長。島根はがん患者サロンが県内各地に広がる医療情報共有の先進地でもある。こんな取り組みも含めて今後は住民や患者らの視点を交え、10部までの長期連載を予定する。支局も含めた編集局横断チーム6人で始めたが、メンバーは固定しない。「なぜ、島根には医師が定着しないのか」を考える第3部は9月末からの予定。(審査室)

ページの先頭へ